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最新データで見る「エンジニアのキャリア事情」

第36回 一般人とここまでズレてる「エンジニア時間」

Tech総研
2006/12/14

ケース7 エンジニアの「もうすぐ」は、単なるアピール!?

Q7:仕事上の会話で「もうすぐやります・片付けます」の「もうすぐ」って、具体的にどのくらいの時間?
エンジニア
一般
順位
回答内容
順位
回答内容
1
30分〜1時間未満
35.0
1
10分〜30分未満
35.5
2
10分〜30分未満
26.5
2
30分〜1時間未満
23.0
3
1時間〜2時間未満
12.5
3
10分未満
22.5
4
2時間〜半日以内
11.5
4
2時間〜半日以内
8.5
5
10分未満
9.5
5
1時間〜2時間未満
7.5
6
丸一日
4.0
6
丸一日
3.0
7
そのほか
1.0

結果の特徴・傾向分析

 仕事を催促された際に、つい「もうすぐできます」といってしまう人は多いだろう。この「もうすぐ」とは、「具体的にどのくらいの時間を指す?」という設問に対しての回答。 まずは表を見てもらいたい。それぞれいちばん多かった回答は、エンジニア「30分〜1時間未満」35%、一般「10分〜30分」35.5%。すでにここで30分のズレが見受けられる。また「1時間〜2時間未満」という回答の占める割合を比較してみると、エンジニアが12.5%なのに対し、一般はわずか7.5%。つまり全体的に、エンジニア感覚の「もうすぐ」のほうが一般よりも長めなのだ。中でも、システム開発(マイコン・ファームウェア・制御系)、品質管理、専門職系が長めの傾向にある。

元エンジニア2人のコメント

Hさん
「エンジニアが出さねばならない成果には、そもそも5分や10分でできるたぐいのものが少ない。それがこの結果の原因だと思います。成果を出すには時間がかかって当たり前という気持ちがあるため、エンジニアのいう『もうすぐ』は、『ちゃんとやってますよ』というアピールにすぎないことも多々あるでしょう」
Sさん
「同感ですね。エンジニアの『もうすぐ』って、むしろ『やりません』という意味に近いかも。自分の気持ち的には『もうすぐできる』と思いたい。しかし、実際にどのくらいの時間がかかるとか、他人がその『もうすぐ』を遅いと感じるかとか、まるで考えてませんから。エンジニアって、そもそも納期よりも質を重視する人が多くて、納期に合わせて納得のいかないものをつくるよりも、納得のいくものができたときが納期だ、みたいな感覚がありますよね。他人のことをあまり考えようとしない傾向があると思います」

ケース8 スケジュールを組む時間単位は「ざっくり」が基本

Q8:仕事のスケジュールを組む際の時間単位は?
エンジニア
一般
順位
回答内容
順位
回答内容
1
日にち単位
50.5
1
時間単位
42.5
2
時間単位
31.0
2
日にち単位
31.5
3
週単位
12.0
3
分単位
11.5
4
分単位
4.0
4
週単位
11.0
5
月単位
2.0
5
月単位
3.0
6
そのほか
0.5
6
そのほか
0.5

結果の特徴・傾向分析

 スケジュールを組む際の時間単位について。エンジニア側は、「日にち単位」でスケジュールを組む人が50.5%と半数以上。一方、一般で一番多い回答は「時間単位」で42.5%。エンジニアの方が、一般より比較的ざっくりと日々のスケジュールを管理する傾向にあるようだ。ただし、設計、社内情報システム、MIS、素材系、営業、事務、企画系などのエンジニアは、一般と同じ時間単位でスケジュールを組むことが多い。その一方で、SEなどの中には月単位でスケジュールを組むケースも見受けられる。

元エンジニア2人のコメント

Hさん
「工数、工程に変化がないと、そもそも日報すら書けませんよね。ある程度のスパン、同じことの繰り返しですから。エンジニアの仕事はこういったタイプのものが比較的多いため、日にち単位や週単位、月単位でのスケジュール管理で十分事足りるのでしょう」
Sさん
「いまの仕事では、一日やって何か成果が出て当たり前なのですが、エンジニア時代は違いました。例えば、成果物ができあがるまでに5営業日かかったりします。そうなると、おのずとスケジュール管理は日ごと、週ごとになるわけです」

ケース9 しっかり休暇を取るエンジニア多し

Q9:1カ月あたりの平均休暇取得日数は?
エンジニア
一般
順位
回答内容
順位
回答内容
1
8日
69.0
1
8日
61.5
2
1日
7.0
2
6日
8.5
3
6日
7.0
3
1日
5.5
4
7日
5.0
4
2日
5.5
5
2日
3.5
5
7日
5.5
6
4日
3.0
6
4日
5.0
7
そのほか
3.0
7
3日
4.0
8
5日
2.0
8
5日
2.5
9
3日
0.5
9
そのほか
2.0

結果の特徴・傾向分析

 比較表で、一番多かった回答を見てほしい。月の平均取得休暇数は、エンジニア「8日」69%、一般「8日」61.5%。エンジニアは、一般同様しっかり休暇を取っている傾向にある。エンジニアは忙しくて、あまり休みを取ることができないと思われがちかもしれないが、意外にもきっちり週に2日はきちんと休みを取っているのだろうか? ただし、サービス、販売系は例外で、他職種に比べて休みを取りづらいようだ。

元エンジニア2人のコメント

Hさん
「月に8日休みを取れているからといって、週に2日休んでいるとは限りません。プロジェクトが暇になったときなど、スポット的に休みをまとめて取るケースも多いと思います。まとまった休みがこの時期にとれると事前に分かるため、さまざまな予定を入れやすいのがエンジニアのころの魅力でした」
Sさん
「エンジニアの仕事って、特殊な開発環境が必要だったりするため、家に持ち帰ってできないことが多いのがいいんですよ。いまは家に持ち帰ることができる仕事もあるため、休日をつぶして仕事をすることもあります。そのため、エンジニア時代の方が、きちんと規則的に休みを取れていましたね」

ケース10 エンジニアは約束の時間に遅刻しがち?

Q10:会議開始時間などの“決められた時間”を「厳守」or「早め」or「遅れる」?
エンジニア
一般
順位
回答内容
順位
回答内容
1
予定された時間ぴったり
38.5
1
予定された時間ぴったり
36.5
2
5分遅れ
22.5
2
5分前倒し
27.5
3
10分遅れ
15.0
3
5分遅れ
12.5
4
5分前倒し
13.5
4
10分遅れ
11.5
5
10分前倒し
7.5
5
10分前倒し
9.5
6
そのほか
3.0
6
そのほか
2.5

結果の特徴・傾向分析

 最後に、会議や待ち合わせなど「決められた時間」に対する行動に注目してみた。一般、エンジニアともいちばん多かった回答、「時間どおり」は、エンジニアが38.5%、一般が36.5%。わずかながらエンジニアの方が、一般よりも時間どおりに行動する傾向にあることがうかがえる。しかし次に多かった回答を比較してみると、エンジニアは「5分遅れ」22.5%、一般は、「5分前倒し」27.5%。また「10分遅れ」と答えた割合はエンジニアの方がやや多く、「10分前倒し」は一般の方がやや多い。このことから、エンジニアにはややルーズな人が多いということが見てとれる。職種では、開発、設計、クリエイティブ系がルーズな傾向にあった。

元エンジニア2人のコメント

Hさん
「エンジニアの方が、おそらく一般より時間の幅に余裕があるんだと思います。だから、時間の認識も緩く、結果それがルーズと取られてしまうのかもしれません」
Sさん
「私も、エンジニア時代のほうがルーズでしたね。なんせ、客先に遅れてくるエンジニアも普通にいましたし」


 

まとめ
互いの時間感覚のズレを知ることこそ大事

 以上、さまざまなシーン別にエンジニアと一般人の時間感覚を比較してきたが、やはり両者の時間感覚にはかなりのズレが認められた。これでは摩擦が起きても当然といわざるを得ない。

 また、その感覚の違いは、仕事内容の違い、環境の違いなどから生じることも分かった。

 それを矯正することは至難の業。ならば、一般人とエンジニアの間には時間感覚のズレがあるという事実を素直に受け止め、まずは相手のスタンダードについて理解を深めてはいかがだろう。

 きっと両者間の摩擦は少なくなっていくに違いない。

 

コラム
多忙なエンジニアに贈る、時間を延ばすテクニック

 エンジニアは多忙だ。あっという間に1年が過ぎていくと感じる人も多いことだろう。そんなエンジニアにこそ贈りたい、時間を延ばすテクニックがある。 時間心理学研究における第一人者、松田文子教授に教えていただいた。

物理的時間と心理的時間

福山大学教授
松田文子氏

教育心理学、発達心理学、時間心理学研究における第一人者。現在、福山大学人間文化学部 心理学科で講義を行っている。著書に『心理的時間』『時間を作る、時間を生きる―心理的時間入門』(北大路出版)などがある。

 時間を延ばすことは不可能だと思っていらっしゃる方が多いと思います。しかし、それは可能です。その方法をお教えするためには、まず時間の定義について簡単にご説明する必要があります。

 私たちがいつも使っている「時間」という言葉ですが、実はこれが2つの時間によって成り立っているということをご存じでしょうか。

 1つは物理的時間に基づく時計時間。いわゆる時計で測ることができる時間のことです。最近はほとんどの方が腕時計などをして、この時計時間に縛られていますが、実はそれって戦後ちょっとくらいのころからなんですよ。いわば人が便宜上つくりだしたもので、意外に思われるかもしれませんが、その歴史はまだ浅いといっていいでしょう。

 もう1つは、自分の内外で起こる出来事を心理的にどう受け止めるかに基づく出来事時間。こちらはそのときの状況や、人によって感じ方が違う心理的時間です。

 例えば、楽しいことはあっという間に過ぎるように感じ、退屈な時間は長く感じますよね。また子どものころは、1日や1年がもっともっと長かったように思うのに、大人になったらあっという間に年月が過ぎていくように感じられる方も多いでしょう。

 このように、場合によって早く感じたり遅く感じたりする時間のことを、心理的な出来事時間というのです。

時間を延ばすための7カ条とは?

 もうお気づきの方もいらっしゃると思います。物理的時間を延ばすことはできませんが、心理的時間はちょっとしたコツで延ばすことが可能なのです。これが時間を延ばすカラクリです。

 では、心理的に時間の流れを緩やかにするにはどうすればよいのでしょうか。一番手っ取り早いのは、「待つ」「不安感をもつ」という状態に身を置くことです。心理的時間は基本的に、早く過ぎ去ってほしいと時計時間を気にすればするほど、なかなか過ぎていかないでゆっくり流れていくという、皮肉な性質を持っています。時計時間にとらわれていると、楽しいときには時計時間を気にしない分、あっという間に時間は走り去ります。このような皮肉な心理的時間の性質から逃れるには、時計時間の次元から出来事時間の次元へ、日常生活の中でちょっと移行することです。子どもだったときのように、あるいはちょっと昔の人々のように。日常生活上の時間的スパイスですね。

 以下にその具体的な方法を個条書きにしたいと思います。

時間を延ばすための7カ条

1.時間に意識を向けず、自分の活動に注意を向けること
2.仕事の合い間のコーヒータイムは、たとえ10分でもゆったりした気分で過ごすこと
3.休日などに、時間を気にせず遊ぶこと
4.新鮮な経験を味わうときを持つこと(海外に行くなど)
5.通勤時にわざと回り道をして、散歩して自然観察すること
6.遅刻しそう、締め切りに遅れそうなど、時間的切迫感を感じないよう工夫すること
7.時間に縛られないこと(休日は時計を見ずに生活するなど)

 などなどですが、できることからで結構なので、ぜひお試しください。忙しい方でも、より豊かな毎日を送ることができるようになると思います。


☆PCが体調に影響しているのでは

 今回のテーマは、エンジニアと一般人が持つ時間感覚の違いである。この結果は業界の一側面のようなものではあるが、軽く流さずにちょっと立ち止まって考えたい。特に、この違いが起きる原因を健康面で考えてもいいのではないだろうか。これはエンジニアという職業の健康を考える1つの事実の提示のように思える。

 この時間感覚の違いは、単に業界内の風潮や業界人の性格というよりは、長時間のPC操作が原因の1つにあるような気がする。エンジニアであれば、仕事中はほとんどPC漬けだ。そうなると、数十センチ四方のディスプレイを何時間も継続して見続けていることになる。頭脳は緊張したままだ。あまりに日常的な光景で気付かないかもしれないが、これはかなり過酷な重労働である。

 こうした生活を続けると、身体のリズムに不調をきたすことがある。自律神経とか体内時計といういい方もあるだろう。「もうすぐ」や「朝イチ」の感覚が長めや遅めというのは、体内時計がおかしくなっているためとは考えられないか。本文末尾の心理学教授からのアドバイスでは休憩や自然観察が勧められているが、これらは自律神経を正常に戻すのに役立つ。時間感覚がずれていると感じたら、体調に注意してもらいたい。

(加山恵美)


この記事は、Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載しています


 

今回のインデックス
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