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第37回 世渡り上手なエンジニアの「自己PR術」

Tech総研
2006/12/20


 

Part3
達人に聞く、スマート自己PR術

 ここで、エンジニアの大先輩でもあり人事業務の経験もある識者に登場を願うことにしよう。さまざまな視点を経験して導き出された自己PR術の話を伺うと、意外な回答が返ってきた。さっそくインタビューを見ていただきたい。

自己PRの基本的な考え

ボーディアック 代表取締役
弓場秀樹氏


NECにてデータベースおよび実用システムなどの研究開発に携わる。退職後、ボーディアックを設立、代表取締役就任。『カンチガイしている人のための気づきの技術―よくわかる44の場面集』(ソシム)、『データベース村へ,ようこそ』(翔泳社)など、著書多数。

 自分を認めてもらうということについて考える前に、いっておきたいことがあります。それは評価や報酬の制度についてです。会社の給与や報酬には予算で決められた枠があり、それを評価に応じて分配するわけです。特に日本の場合、古くからそういう傾向が強く、頑張ったからといって給与がすぐに跳ね上がることはないんですね。だからといって評価が無意味かというとそうではありません。評価は成績の順位付けに使われます。従って、適切な「評価」を得るための努力はすべきです。この評価は自分の業績記録として残り、将来昇格の時期になって価値を持ってきます。

 このことから考えてほしいのは、「給与」の額面だけで自分の評価に不満を持たないことです。営業マンであれば売り上げや利益目標を達成することを目標とし、エンジニアであれば自分が関係しているプロジェクトを確実に遂行することを目標として日々活動し、最終的に自分の部署および会社全体に貢献するように努めることです。PRすべきことは自分が何をしたかではなく、それが部署や会社にどんな貢献をしているかを分かってもらうように報告や説明などを駆使することです。

企業風土を考慮してPR方法を考えよう

 評価というものは、直属の上司に限らずその上位の上司に対しても正確には伝わりにくいものです。従って、自分自身がタイミングよく適切な情報提供をしなければなりません。アンケートを拝見すると、上司を「気難しいタイプ」「親方タイプ」「気弱なタイプ」などに分類していますが、タイプによって自分の評価が変わると考えるのはやめた方がいいでしょう。

 上司は単なる採点者ではなく、その部署の責任者です。自分の部署の業績目標を達成させる義務を負っていて、その目標を部下とともに実現するわけですから、部下に期待すべき内容はおおむね把握しているはずです。部下であるあなたは、自分の任務以上の成果を出すことが評価の第一条件で、それを上司が把握できるようにうまく状況を伝えることが第二条件だということです。つまり、上司に状況を分かってもらうための積極的な行動が評価につながるわけです。企業が部門の長と認めた人ですから、無能なわけではないはずです。もし評価が低いと感じるのであれば、あなたの貢献度が低いか報告方法が悪いかのどちらかでしょう。

 仮に不適切な上司の配下にいるとしても、上司をもカバーするような広い視点で見てみるとよいかと思います。例えば自分が抱えている業務だけでなく、担当しているプロジェクトが自分の会社にとってどんな位置にあり、クライアントはどのようなものを欲しがっているのかなどの部分まで見るようにすると、どんな成果を出せばよいのかが分かってくると思います。その結果、必要ならプロジェクトを総括している管理職や他部門のメンバーや客先との交流が必要な場合もあるでしょう。将来を考えて、会社の内外での人脈の構築は、自分にとってプラスになる確率は高くなるはずです。

将来を見据えた行動とPRを目指そう

 冒頭でもお話ししましたが、日本では評価がそのまま給与に直結するわけではありません。もし評価に直結した給与を求めるのであれば、外資系の企業への転職や独立の道を選んだ方がよいのではないかと思います。

 皆さんにぜひお伝えしたいのは、日々の業務の評価に気を取られるのではなく、もっと長期的な視点で、将来自分がどんなことをしたいのかを意識してほしいということです。将来やりたい、あるいはなりたい目標が明確になっていれば、現在の業務がどのように役立つのか、ほかにどんな経験が必要なのかなど、これから取り組むべき仕事や経験が見えてきて、行動がより具体的なものに変わってくるでしょう。例えば、トラブルに陥ったプロジェクトの火消し役など、誰もが嫌がる仕事ですが、進んで買って出るのもいいかもしれません。自分の経験にプラスになると思った仕事には、積極的に取り組む努力が必要でしょう。

 最後に、「評価」は本質的に他人の満足度のことですから、そんなものを気にして他人のために仕事をするより、自分の満足のために楽しく仕事をした方がいいのではないでしょうか。それが自分の力になっていき、結果的に良い評価につながるものだと思います。


 

まとめ
上司のタイプ別オススメ自己PR術

 では最後に、アンケート結果から導き出された直属の上司像との付き合い方を、弓場秀樹氏にアドバイスしていただいたので紹介しておこう。これを参考に実際の仕事場に応用してほしい。

上司のタイプ 対策
好き嫌いが比較的激しく、人によって態度が違う。自分は好かれている方だと思うが、嫌われたら大変そう。 人物の好き嫌いの判断基準が問題ですが、どちらにしてもこういう上司では長続きしないと思います。客先や1つ上の管理職と良好な関係を築いておきましょう。
見てないようで細かなところまで見ていて、困った顔をしていると何げなく声を掛けてくれる。技術の知識も豊富で、とても信頼できる。 自分のミッション遂行のために部下の行動をすべて把握しているタイプですね。自らの経験から部下の動きを見ているので、やればやるだけ評価してくれるはずです。
優柔不断で、決断がタイムリーにできない。部下を引っ張っていくタイプではない。 評価したくとも情報不足に陥っている可能性があります。見えない仕事もきっちりアピールしたうえで、代わりに自分で判断してやる気構えが必要でしょう。
よく話を聞くタイプだが、その裏返しに周囲の意見に影響されやすいところがある。 評価を報酬の順位に直接反映してくれる上司だと思っておくとよいでしょう。長期の仕事の場合、きっちりとした計画やスケジュールを報告することも必要です。
八方美人のため、決断が下せない。管理・判断すべきことをごまかし、結局物事は前に進んでいない。 仕事の割り振りに忙しく、現状把握ができていない可能性があります。報告したという事実も併せてアピールしてみるとよいと思います。
頼りがいはあるが、人に強くいえないタイプで、はっきりいわれるとどうしていいか分からなくなってしまう。特に上には強くいえていない。 能力はあるが、会社組織に対して自分の部署をアピールできていない可能性がありますね。上司だけを見ないで会社全体の中で目立つ工夫をしてみましょう。


☆自己PRは対象ごとに戦略を変えて

 自己PRが不得手なのはエンジニアに限った話ではないだろう。誰しも多少戸惑いを抱えているというのが正直なところではないだろうか。下手に出しゃばれば逆効果だし、どこか引け目を感じてしまう。「出るくいは打たれる」ことを恐れるためなのか、おやつを兄弟で奪い合うことなどない恵まれた若い世代の遠慮なのか。

 背景はともあれ、上司が努力に気付いていない、または正当に評価していないなら、黙って耐えるのは悲しい。当人にとっても組織にとっても、不健全で良くないだろう。

 本文によると、自己PRをまったく行わず、かつ査定に満足していないエンジニアは全体の約半数。査定に満足しているならともかく、不満足なら何らかの対策を取ることを考えてみたい。誰かを押しつぶすわけではなく、上司に必要なことを気付かせるための自己PRなら、心理的な抵抗は少ないのではないだろうか。

 では、効果的な自己PRとはどのようなものか。本記事ではこの重要な問いに有効な視点を提供している。対象により戦略を変えるということだ。これはPRの本質かもしれない。相手に効果的な方法で伝えたいことを伝える。上司はどのタイプに当てはまるか、分析してみるだけでも面白いだろう。

(加山恵美)


この記事は、Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載しています


 

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