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最新データで見る「エンジニアのキャリア事情」

第40回 約6割が年収UP! エンジニア転職給与事情

Tech総研
2007/3/5

 

ハードウェア系職種で多い
「年収増加」した人の割合

 年収の増減を職種別に見るとどうなるか。回答者の職種を大きく「ソフトウェア・ネットワーク関連」と「ハードウェア関連」に分けると、明らかにハードウェア系の方が「増えた」率が高い。より詳細に見ると、「回路・システム設計」「光学技術」「生産技術・プロセス開発」「研究、特許、テクニカルマーケティング」などの職種での「増えた」率が高くなっている。つまり、これらがいま転職市場で人気の高い職種ということができるのだ。(図4

図4 職種別/転職で年収は上がった?下がった?

 これに比べて「システム開発」はおしなべて「増えた」人の割合が低く、「汎用機系」では59%が「減った」と回答している。「セールスエンジニア、FAE(フィールドアプリケーションエンジニア)」に至っては全員が「減った」と回答している。

 これはたまたまの例ではなく、最近の転職市場における電機・電気・電子・機械系メーカー系の求人の急激な伸びを物語っているといえる。

 

私はこうして転職で年収を増やした――
ソフトウェア系職種3人の例

 とはいえ、IT・ソフトウェア技術者の中にも、転職で大幅な年収アップを果たした人がいる。ここでアンケート回答者の中から、年収増加ベスト10のエンジニアを取り出し、その生の声を聞いてみることにしよう。どういう理由で彼らは何百万円もの年収増加が可能になったのか(表1)。

 転職前の年収が800万円だったAさん(23歳)は、転職後いきなり1400万円に年収がアップした。20代前半で800万円もらっていたということにも驚くが、転職後の増加率1.75倍にもびっくりだ。仕事はパッケージソフトの技術寄りのプリセールスで変わらないが、前職が事業会社だったのに対して、転職先はコンサルタント専門会社だというのが違う。また、国内の少人数ベンチャー企業から外資系企業へと、資本特性の変化も伴っている。一般に給与水準が高い外資系コンサルタント企業への転職が年収増加の大きなファクターになっていることは間違いない。

 「前職では管理職に抜擢され、とても良い待遇で仕事も順調でしたが、あまりの重労働と会社の理不尽な体制に疑問を感じていたので、2年目で転職を決意。今度の企業は役職ではないが、面接では予想以上に良い待遇を提示され、逆に怖くなるほどでした」と、Aさんは2004年の転職を振り返る。「転職は大成功。年収大幅アップと、結果として結婚相手を社内で見つけられたので……」というコメントなど、うらやましい限りだ。

 システム開発エンジニアのBさん(26歳、2006年1月転職)の場合は、前職650万円から現職900万円へと1.38倍に増えた。Aさんとは逆に、外資系企業から国内ベンチャー企業への転職だ。

 転職理由は「業績不振が続き、待遇の悪化が進んだから」。転職先選びでは、転職エージェント企業の担当者と密接に連絡を取り合った。面接では「プロジェクトリーダーとしてシステム開発と運用保守を行っていた」経験を詳しく語った。そのスキルが運用保守部門の総責任者を求めていた転職先企業の条件にぴったり合致したのだ。現在は部長クラスの待遇で「すべてのシステムサービスの最高責任者」を任されている。年収増加とともに、仕事の責任も増大したことは確かだろう。

 もう1人、制御系システム開発のCさん(25歳、2006年4月転職)は、500万円から800万円と1.6倍の伸び。「前職で上司とともに部署異動となったが、その上司が使えないので一緒に仕事する意欲が減退した」というのが転職理由。20代では、上司に当たる人の能力が、エンジニアとしてのスキルや人間力を引き上げるのに大きな影響がある。その上司が頼れないとなると、将来が不安にもなるだろう。

 そこで知り合いのツテをたどって転職。半導体CADツール関連という仕事は変わらないが、以前は保守サポートが中心だったのに対して、今度はそれに開発も加わるようになった。国内大手から外資系への転職である。年収アップという点ではもちろん満足しているが、コメントを読む限り、Cさんの顔は晴々という感じでもなさそうだ。なぜなら、「この人だったら自分を引き上げてくれると頼っていた人が辞めてしまって、新しい上司がやっぱり使えない人だったから」である。単なる偶然か、それともこれが宿命なのか。「おれはつくづく上司に恵まれない」と、転職の喜びも半減のCさんではある。

年齢
転職前の職種
転職後の職種
転職前
の年収
(万円)
転職
直後の
年収
(万円)
年収
増減額
(万円)
23歳
ネットワークコンサルタント ネットワークコンサルタント・管理職
600
1200
600
23歳
プリセールスマネージャ(営業寄り) プリセールス(テクニカル寄り)
800
1400
600
24歳
無線LANに関するプリセールスおよび技術サポート 転職前と同じ
1100
1500
400
24歳
システム開発(汎用機系) システム開発(Web・オープン系)
650
1050
400
24歳
研究員 マネージャ
300
660
360
24歳
オペレータ 管理
400
750
350
25歳
現場でのSE・PG作業、夜自社に戻って自社HP構築・コンプライアンスプログラムなどの制定にかかわるもの 現場でのSE・PG作業
230
570
340
25歳
作業一般 管理もできるようになった
300
600
300
25歳
半導体CADツールの保守サポート 半導体CADツールの保守サポートならびに開発
500
800
300
25歳
事務 管理
500
800
300
26歳
電気制御設計・プラント企画 電気制御設計・プラント企画
300
600
300
26歳
ネットワーク構築 ネットワーク構築
420
720
300
26歳
サーバ、ネットワーク管理、社内のITマネジメント サーバ、ネットワーク管理、社内のITマネジメント
250
520
270
26歳
プロジェクトリーダーとしてシステム開発と運用保守を行っていました 運用保守部門の総責任者として入社、すべてのシステムサービスの最高責任者になった
650
900
250
26歳
外資系ITメーカーのカスタマーサポート 外資系ITメーカーのプリセールスSE
850
1100
250
27歳
半導体部品の客先担当エンジニア プラント配管材料設計
350
600
250
27歳
カストデイ営業 社内業務システム構築
850
1100
250
27歳
転職前はソフトウェアのほかに本来業務ではない設計業務を行っていた 転職後はほとんどソフトウエア開発に専念できている
500
750
250

 総じて今回のアンケートでは、「転職前に感じていた不満は転職後に解消された」人が全体の83%となった。その結果、転職に「とても満足している」が14.7%、「やや満足している」が32.3%。それに対して「やや不満」14.3%、「とても不満」9.3%と、満足派が大幅に上回る結果となった。

 年収がすべてではないものの、転職満足の理由に年収増加を挙げる人は多い。とりわけ20代エンジニアの間ではそうだ。年収を上げるためのタクティクスとしての転職。その方法を今後も考えていきたい(図5)。

図5 転職後の年収満足度はどうですか?


☆転職の理由は業務内容以外にもあるようだ

 好景気となり、採用する側が太っ腹となっているのだろうか。もしそうであればいまが年収アップのいいチャンスかもしれない。とはいうものの、エンジニアにとっては年収がすべてではない。エンジニアは転職の際のポイントとして、年収よりも仕事の内容、特にやりがいを重視する傾向が高い(図2)。

 転職の理由(図1)を見ると、ほかにも興味深い背景を見いだすことができる。これは現在の会社を離れる決意であり、現状への不満の表れともいえる。仕事のやりがいを重視する傾向のとおり、業務内容に対する不満に関する理由も多いのだが、それだけではないようだ。評価や待遇、会社や業界自体への不満や反感も高い割合を示している。

 特に上位2つ「会社からの評価が上がらない、下がった」「会社や業界の将来に不安を感じた」がその象徴のように思う。前者はもしかしたら成果主義の実情を表し、後者には合併や再編などで会社の風土が変化していることが影響しているのかもしれない。

 転職による年収の増減を見ると、30代後半を境に年収アップの可能性はほぼなくなる(図3)。これを踏まえると、職種別転職による年収の増減(図4)は30代後半以降が存在する割合を示しており、換言すれば30代後半がどの職種に転職するか・できるかを示しているともいえそうだ。この結果だけでは判断できないことも多いが、「転職で年収アップ」に年齢というタイムリミットがあることは肝に銘じておきたい。

(加山恵美)


この記事は、Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載しています


 

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