Tech総研
2008/6/6
その2 エンジニアのストレス、昔といまで何が変わった? |
このように、ひと言でストレスといってもさまざまなタイプがあり、個人の受け取り方もさまざまだ。
図3 過去と現在のストレスの違い |
図3は、過去と現在のストレスの違いについて質問した結果である。「若いころのストレスといま抱えているストレスは違う」と回答したエンジニアが多かった。その「違い」を分析すると、周囲からのプレッシャーなど、より「精神的なストレス」への変化を実感する回答が目立った。
「若いころに比べ、顧客の評価が直接自分の耳にまで入るようになり、プレッシャーを感じる」(40歳・システム開発 汎用機系) 「若いころは納期的なプレッシャーがストレスになっていたが、現在は他部署や顧客との交渉などの人間関係がストレスになりつつある」(34歳・通信インフラ設計) 「若いころは自分が抱えていた担当分の開発が終わらなかったり、品質が問題だったりという局所的な話だったが、現在はプロジェクトの成否を左右するような大きなトラブルを担当することが多く、負担そのものが大きくなっている」(41歳・システム開発 マイコンファームウェア系) |
これらのアンケート結果について、ストレスやコミュニケーション心理に詳しいコミュニケーション心理学研究所の高原恵子氏にコメントしてもらった。
高原恵子氏 コミュニケーション心理学研究所代表 臨床心理士 聖マリアンナ医科大学付属東横病院神経科にて、臨床心理士として4年間勤務。その後iBDにてコミュニケーション研修講師、コーチ21取締役を経て、1999年コミュニケーション心理学研究所を設立。研修、講演、EAPカウンセリングを中心に活動中。 主な著書に『ストレスをパワーに変えるセルフコーチング』(実業之日本社刊)などがある。 |
「今回のアンケート結果もそうですが、一般的に社内外を含めた人間関係の精神的ストレスは、あらゆるストレスの中でも非常に大きなウエートを占めます。一見するとさまざまな人とコミュニケーションを図って仕事をしているようで、実は精神的に“孤立”している状況に陥っているケースが多いのです。周りからのサポートを受けられない、親身に相談に乗ってくれる相手がいないという人が、一昔前に比べて増えつつあります」と、高原氏は人間関係の変化を指摘する。
それに加え、「時代的なストレスの質の変化」もあるという。例えばいまから15年くらい前までは、まだインターネットも携帯電話もほとんど一般には普及していなかった。その後の急速なIT化によって、「1人当たりの情報処理量の圧倒的な増加」という現象が生じた。
少ない人員で大きなパフォーマンスを発揮できるようになった一方で、仕事量の増加による肉体的・心理的なプレッシャーが重なり、昔に比べエンジニア個人にかかるストレス負荷が増加した面もある。
その2 エンジニアのストレス、昔といまで何が変わった? |
図3 日々実践しているストレス解消法があるか |
最後に、今回のメインテーマである「エンジニアに効果的なストレス解消法」を紹介したい。
図4を見てほしい。今回の調査対象300人のうち、ストレス解消法を持っているエンジニアはおよそ半数、さらにその中で「解消法に効果あり!」と回答している割合はおよそ7割に上った。
多くのストレスを日々抱えながらも「自分なりのストレス解消法」を持っているエンジニアに、その具体的な内容について聞いてみた。その結果、「スポーツ」「趣味・旅行」の2つにほぼ集約された。
「土・日に疲れるくらいテニスをして、その後ビールを飲まずによく寝ることで、ぐっすり眠れて体がスッキリ」(41歳・システム開発 マイコンファームウェア系) 「自転車で外に出て、同僚と仕事以外の場所で会う機会をつくる。それにより、自分だけがストレスを抱えているという、閉鎖的な気持ちにならない」(26歳・サービスエンジニア) 「休日は仕事のことを考えず、家族サービスや趣味の釣り、パソコンなどに没頭。それにより翌朝の目覚めがよく、仕事もテキパキこなせる」(43歳・機械設計) 「毎朝ヨガをして呼吸とともにその日生きていくだけの気を取り戻す。それで体調が良くなり、自信が付く」(30歳・通信インフラ設計) |
こうした傾向に高原氏は、「ストレス解消に最も効果的なのは、“普段使っていない感覚や筋肉を動かす”こと。特にデスクワーク中心のエンジニアの方の場合、視覚を酷使することが多いと思います。視覚以外の肉体や感覚を使うスポーツ、趣味の活動をすることで、肉体と精神のバランスを取ることが重要になってきます」とコメント。加えて「できれば小学生以前に熱中していた、幼心に“楽しい”と純粋に思えたスポーツや趣味をすることをお勧めします。その純粋な楽しさこそ、最もストレス発散の効果が高いことの証明だからです」とアドバイスする。
ただしこれらのストレス解消法が効果的なのは、あくまで重度のストレスを抱えていない状態に限ってのこと。もし肉体的・精神的にかなり追い詰められた状態にあるならば、まずは医療機関で適切な治療を受けることが必要だ。
最後に ストレスの質を早めに見極め、適切な対応を |
ストレスにはいくつかの段階があると高原氏は解説する。
- 適度なストレス……変化や刺激をもたらし、仕事の生産性をより向上させる
- 過度なストレス(進行1)……イライラ、肩こり、元気なし→自律神経のバランスが乱れる
- 過度なストレス(進行2)……不眠・胃痛→ストレスホルモンの増大
- 過度なストレス(進行3)……胃かいよう・高血圧・うつ病・心筋梗塞
大切なのは、現在の自分のストレス状態がどの段階にあるのかを早めに見極め、もし過度なストレス状態にあれば、それに見合った適切な対応を行うこと。
いまも多くのエンジニアがストレスを抱えている中で、本レポートが何らかのお役に立てることを願ってやまない。
☆一生付き合える趣味を見つけよう | |
エンジニアはストレスを抱えていることが多いので、自分なりのストレス解消法を見いだしておくといいだろう。長時間労働はストレスがたまるもの。一定の間隔で休憩を取り、気分転換するようにしたい。 本文では、ストレス解消に効果的なのは「小学生以前に熱中していたスポーツや趣味を楽しむこと」であると指摘している。筆者の場合、幼稚園のときから続けているバレエがこれに該当する。「下手っぴ」で劣等感さえ持っているが、踊ることは純粋に楽しい。「もっとうまく踊りたい」というじれったさは常に抱えているものの、踊れることによるストレス発散効果の方が高いようだ。 かつて会社の上司から、「おまえはダンスという趣味があるから、きっと強い」といわれたことがある。「夢中になれる趣味があれば、ストレスなど簡単に消えてなくなる」というのだが、当時は釈然としなかった。社会人になって数年目のころであり、自信のなさや仕事への不安を抱えていたので、「何でそんなことを断定できるんだろう。そう簡単にはいかない」と内心で思っていたのだ。いま振り返ると、上司の指摘は当たっていたのかもしれない。 (加山恵美) |
この記事は、Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載しています |
今回のインデックス |
エンジニアの「5大ストレス要因」とは |
過去と現在のストレスの違い、そして解消法 |
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