第10回 1つの出会いで世界が変わる
千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2006/12/19
■追い付くことに一生懸命だった
谷口氏はエッジに入社して1年間、他社のWebサイトのシステム開発を担当していた。もともとポータルサイトの制作をしたいと思っていたが、すぐに希望どおりとはいかなかった。それまでは小さい自社のWebサイトしか開発してこなかったが、この1年間は有名企業のWebサイトのシステム開発をほとんど1人で行っていたという。「サービスの中で絡む機能やシステムがあると、全部自分で作らなければならなくて、いろんな部分に気を使って開発していました。本当に勉強になりました」
エッジに入社した谷口氏だが、入社する前と後でエッジに対する印象は「大きく変わった」という。「入る前は『これくらいだろうな』とタカをくくっていた部分がありましたが、入ってすぐに『自分がここでやっていけるのだろうか』という不安でいっぱいになりました」と谷口氏は話す。谷口氏が思い描くよりもはるかに技術力が高かったという。
「みんなの後ろ姿しか見えないくらいで、自分は最後尾から追っかけるような形で仕事をしていました」
他社システムの開発を1年間行った後、谷口氏はかねてより希望していたポータルサイトの制作に携わるようになった。キャンペーンの企画から始まり、「livedoor Blog」のリニューアルなど、ライブドアのさまざまなサービスにかかわるようになっていった。「おそらく20くらいのサービスに何らかの形でかかわっていると思います。一から立ち上げたものはそれほど数はありませんが、「livedoor フレパ」は最初から現在も1人で担当しています」
現在は開発よりも部下のフォローなど、マネジメントの業務の方が多いかもしれないという。「もともと、マネジメントを経験していなかったので最初は何をやっていいのか分からない部分もありましたが、いまは大分慣れてきました。部下それぞれの能力や個性を把握するまでが大変でした」
■普段の工夫の積み重ね
「オープンソースへの貢献がこれからの目標」と谷口氏 |
谷口氏がこれまでの仕事の中でやりがいを感じる瞬間はどこにあるのだろうか。「1番は作ったものをたくさんのユーザーの方に触れていただけることです。サービスをオープンしたときのアクセスログが流れる瞬間にやりがいを感じます。また、ユーザーの声がダイレクトに自分の元に届いてくることにもやりがいを感じますね」としながらも、「試行錯誤して考えたサービスに対して厳しいお言葉をいただくこともありますが、そういうときは少しつらいなと思うこともあります」と苦笑いを浮かべる。
家に帰れないこともまれにあるが「最終的に良かったと思えるようになるための準備」と話す。
そんな谷口氏だが、サービスを提供するうえで「いかにユーザーの方にストレスなくサービスを使ってもらえるか」を心掛けているという。2006年1月の事件の影響で、ライブドアは連日メディアで取り上げられ、ポータルサイトにアクセスが集中した。しかし、その渦中でもライブドアのサービスは止まることなく動いていた。「あの事件のときだけではなく、2年くらい前から半年に1回くらいはアクセスが集まるようなイベントがありましたが、その都度工夫はしてきました。そういう経験があったからこそ、大量のアクセスをさばけたのだと思います」
また、「アクセス集中の原因はどうであれ、アクセスが集中することは、広告を出していただいている企業にも貢献できるタイミングだと思います。広告もしっかり表示して、なおかつユーザーにも不満なく使ってもらえるように普段から工夫を積み重ねています」と話した。
■テクノロジに強い企業だと感じてもらいたい
谷口氏に今後の目標を聞いてみた。「斬新なサービスや新しい取り組み」と「オープンソースへの貢献」という答えが返ってきた。「新しいサービスを考えて、なおかつユーザーに使ってもらい、ライブドアはテクノロジに強い企業だということをサービスを使っていく中で感じてもらいたいです」と谷口氏は話す。
また「オープンソースへの貢献」については、「個人的にも大事」と前置きしたうえで「会社としてみても重要だと思います。ライブドアの根底にあるのはオープンソースです。オープンソースがあったから、ライブドアはここまで発展したといえます。ここしばらくは、オープンソースを使う側でしたが、今後はライブドアから派生するような新しい何かを出していきたいと思います」
もともとライブドアはWebアプリケーションフレームワーク「Sledge」を公開している。「いまではほかの企業でも使ってもらっていて、そのITエンジニアの方が積極的に新しい機能を作ってくれています。そういったものを還元して次のものを出したいです」
■若い世代には自分たちを脅かすくらいの勢いで
谷口氏が20代の若手ITエンジニアにメッセージを伝えるとしたら、どんなことを伝えたいだろうか。「情報の得やすさからいっても、われわれの世代のエンジニアよりも新しいことを取り入れていける世代だと思います。新しい技術を生み出してもらいたいし、面白いものをもってIT業界に名をとどろかせてほしいですね」
谷口氏は若手の世代との格差はそれほど感じていないという。「声の大きい人の絶対数はわれわれの世代と若い世代で変わらないと感じています。でも情報が得やすい分、若い世代に声の大きい人がもっと増えてもいいのではないかと。自分はまだ現役でやれると思っていますが、われわれの世代を脅かすくらいの勢いがあってもいいと思います」
現在のライブドアのITエンジニアの中には、谷口氏が声を掛けて入社を決めたという人もいる。「次の自分を見つけるために飛び出していくことは悪いことではなくて、いま自分のいる場所とやりたいことがかみ合わない場合は、やりたいことがある場所にいけばいいじゃないかといつも思っていますね」と谷口氏。かつての谷口氏があこがれたように、今度は谷口氏があこがれられる立場としてこれからの世代の「次の自分」を見つけるための目標となっていくことだろう。
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