第16回 「もっとよいやり方」を追い求めて上流工程へ
千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/7/20
■さまざまなことに挑戦し、満足した日々。
転職した会社は、Javaでの開発をメインに行うベンチャー企業。「いろいろなことができそう」という印象を持ったという。「もともと情報系の大学にいたわけではなく、ITエンジニアとしてのスタートもそれほど早いわけではなかったので、スペシャリストよりはゼネラリストになろうと思っていました」と後藤氏は話す。
転職先ではいろんなことに挑戦できたという。アメリカの会社の動画配信の技術調査や検証、その報告。研修の講師。開発では要件定義から設計、実装まですべての工程を体験することができた。当時は自分が作ったものが動く、そこに新鮮な感動があり楽しかったという。そのベンチャー企業のプロジェクトは多くてもメンバー5人ほどのプロジェクトで、システムの全容が把握しやすかった。自分の作ったシステムが客先で動いている様子を実際に見ることができた。プロジェクトの上から下までを俯瞰(ふかん)できたことに満足感を得ていた。
さまざまな仕事に取り組み、その状況に満足する日々だったが、ある日会社が経営的に厳しい状況に立たされてしまう。後藤氏は職場を移ることを考えなければならなくなった。
■巨大プロジェクトでぶち当たった壁
次に転職した会社は中堅の開発会社。「いきなり資金繰りに困る企業よりは安定している方がいいのかもしれない」という理由からだ。その会社はITエンジニアを客先常駐させていた。後藤氏は派遣元の会社のリーダーとして、コーディングをはじめ、メンバーのマネジメントやサポートも行った。
そこで後藤氏は大きなショックを受けたという。「大きなシステムを大人数で開発するに当たって、やり方や効率が悪いと感じました」
それまで開発工程やシステムを上から下まで見ていた後藤氏にとって、そういった部分が見えにくいことに違和感を持った。「自分たちのやっていることの意味が見えづらいと感じました。設計をする人間と実装をする人間の間に考え方の違いがあり、ありがちですがカットオーバー目前で物理構成が変わってしまうなど、プロジェクトの進め方に起因するトラブルに対して、開発プロセスや業務の標準化によって改善できるのではないかと問題意識を抱くようになりました」
「このままではいけない」。プロジェクトの進め方を変えようと思うと、もっと上の立場になるか、もしくはそういった立場の人に意見できるポジションにならなければいけない。そう思い立ち後藤氏は豆蔵に転職することにした。
■企業の体質が変わっていくこと、それが重要
後藤氏が現在、さまざまな企業のプロセス改善に取り組んでいる。開発現場からは少し離れた仕事になるが、現場から離れてもコードを書くようにしているという。「プロセス改善の話をするとき、相手の担当者は現場のリーダーをやりつつプロセス整備を担当している方がほとんどです。現場で使われている開発環境や社内のシステムを考えつつプロセスを整備する方が効率的なので、最新の技術動向についていけるようにチェックしています」
現在の仕事について最近分かってきたことがあるという。「これがいいやり方だというやり方を考えることは重要ですが、そのやり方を実際に試して、うまくいかなかった部分を修正してまた試す。そういうPCDAのサイクルを回していく。そのこと自体組織をよくする活動なんだと最近腑(ふ)に落ちてきました。『もっといいやり方があるんじゃないか』『もっとこうしてみよう』とプロセス改善に向けてその会社の体質が変わっていくことが素晴らしいと最近分かってきました」
現在、後藤氏の関心事はプロセス改善の勉強に加えて、「品質工学」にあるという。「上司の影響が強いのですが、製造業で考えられている品質の考え方、例えばテストやレビューで品質を上げるのではなく、製造する前段階のプロセスを改善して、後工程の負担を抑えるなどIT業界が後追いしている部分があり、製造業で考えられている品質工学の本を読んで勉強をしています」という。
■自社のブランド化という大きな目標に向かって
後藤氏は「これまで豆蔵はオブジェクト指向の会社として知られてきたが、それとともに豆蔵を業務改善の総本山的なブランドにしたい」と今後の目標を話す。「そういう大きな目標に向けて個人として、どう貢献できるか。いまは上司に頼っている部分が大きいのですが、1人立ちしてさまざまな企業の業務改善をこなせるようになる。それが中期的な目標です」。これからも後藤氏の業務改善の探求は続くだろう。
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