第3回 在宅勤務は、会社に通えない人だけのもの?
長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2007/9/27
■全社員が利用できるフレックスワークプレイス(在宅勤務)制度
HPは2007年11月、「フレックスワークプレイス制度」を正式導入する考えだ。これは全社員が対象の在宅勤務制度で、週に半日や1日からでも利用できる。「育児中の社員だけでなく、まさに全社員のワークライフバランスを実現に近づけるための施策」と松村氏は表現する。2006年11月から管理部門の社員を中心に試験運用を開始。2007年の3月からはITエンジニアを中心に試験運用を拡大し、300人強が利用したという。
在宅勤務というと、育児や病気など何らかの理由で通勤ができない人が使うものというイメージが強い。実際そういうケースが多いように思われる。HPもそういった在宅勤務の制度はすでに導入している。「今度はそういう理由なしに、全社員が利用できるような制度を展開していきます」
現状、活用している社員ほど、週に1〜2日と短めに利用していることが多いという。「その方が集中的に仕様書などを作成しやすいようです。週に1日でも在宅勤務ができることによって、社員に非常にプラスの効果が出ています。通勤時間が1日ないだけで、体力的にも精神的にも楽らしいのです。ITエンジニアはお客さまを訪問する機会が多く、さらに出社もするとなると時間のロスが大きかったようで、利用した社員の9割以上が、活用できる、ぜひ今後も利用したいと答えています」という。
具体的な社員の声として、「通勤に片道2時間かかるので、4時間も浮いて、夫と夕飯を食べられた」「子どもが朝、どんな服を着て出かけるのかを見ることができた」などが印象的だったと松村氏は話す。「ちょっとした気付きなんですが、ワークライフバランスの実現に着々と近づいていることを感じさせるコメントが多く見られました」。夜間の大学院に通う社員も多く、通学のための利用例もあるという。
今後の取り組みとしては、ホームヘルパー派遣制度の拡大が予定されているそうだ。この制度は、家事担当の人が傷病によって家事ができなくなった際に利用できる、ホームヘルパー費用の80%を会社が補助する制度である。専業主婦である社員の配偶者が病気になった場合の利用例が多かった。今後は社員の声を基に、子どもが病気になったワーキングマザーも利用できるよう、制度を変更する予定だという。
「加えて、啓発活動は継続的に実行する必要があります」と松村氏は意気込みを語る。「産休・育休利用者のマネージャ専用の冊子の作成を企画していますし、先ほどの説明会も、すでに関西方面の社員から『こちらでも開催してほしい』とリクエストがきているので、今後継続的に開催できるような検討をしていきたい」という。
育児、介護目的での短縮勤務制度だけでなく、フレックスタイム、フレックスワークプレイス制度と、いろいろな選択肢が用意されているといえるだろう。「仕事とプライベートの両立に関しては、個々人によってまったく状況が異なる。会社としてもいろいろな選択肢を用意して、使いやすいものを利用してほしい」と松村氏は語る。今後も会社側、社員側それぞれがHP Wayに基づき、働きやすい環境とそれに伴う会社の成長を目指していくだろう。
「産休・育休に関する説明会・交流会」は、今回の取材後の2007年9月13日に東京・荻窪事業所で実施された。制度の内容説明だけでなく産休・育休の準備、知っていると役に立つことなどを紹介。主催者側のメッセージとして「まずは『休んだら職場に迷惑をかけるし復帰も難しそう』『男のくせに育休を取るなんて』などの思い込みを捨ててほしい」「育休は権利なのだから休んで当たり前、子どもがいるのだから周囲がサポートしてくれて当たり前と思わず、周囲への感謝を忘れずに休暇に入ってほしい」「妊娠を知らされたマネージャは、まずは『おめでとう』といってあげてほしい」などが、産休・育休にかかわる人へのヒントとして伝えられた。
実際に制度を利用した社員も招かれ、グループに分かれた参加者にアドバイスを行い、質疑応答も活発に行われた。終了後のアンケート結果からは、参加者の9割以上が説明会・交流会への参加をほかの社員に勧めたいと思っていることが分かり、好評であったことがうかがえたという。
HPはこの説明会を通して社員の理解を進め、さらに出産と育児を控えた社員同士、経験者と未経験者のネットワークをつくることによって、制度の活用の促進を目指す。
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