第5回 社員の積極的な活動が、働きやすい環境をつくる
長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2008/3/26
■フォーラムから発生したコミュニティが環境をつくる
マイクロソフトの職場環境を形づくる大きな特徴の1つには、こうした社員の積極性、問題を共有しようという意識の高さがあるのかもしれない。
2006年実施のダイバーシティフォーラム(当時はWomen's Conference)では、ネットワーキングのセッションからいくつかのコミュニティが立ち上がったという。中でも最も盛んに活動しているのが「ワーキングペアレンツ」。「働きながら子育てをし、自分の時間も大切にする」ことをテーマとしたコミュニティだ。そのほかにも、部門間の壁を壊すことでより効率の良い働き方を目指す「ブレイクセクショナリズム」、マイクロソフトのアプリケーションを活用することで仕事の生産性向上を図る「プロダクティビティブレイクスルー」などが発生し、現在も活動を続けている。
「コミュニティの中でも、特にワーキングペアレンツはとても積極的です」と波頭氏は語る。先に述べたように、在宅勤務制度と有給の看護休暇はmyMicrosoft Japanの取り組みによって新設されたが、同時にワーキングペアレンツからも「正式に制度化してほしい」という非常に強い要望が出ていたという。こういった社員の声を背景に、2つの新制度は2007年初めに導入に至った。そのほかにも、さらなる社内でのネットワーキングの機会、情報共有の社内サイト立ち上げのサポートなど、直接人事部にリクエストが来るそうだ。
こうした状況を指して、波頭氏は「本当にコミュニティが生きていると思います」という。「社員個々人が、日々厳しい課題と向き合って仕事をしています。会社としては、それでも社員が自分のプライベートな生活をきちんと保てるよう配慮したいというメッセージを打ち出しています。それが響いて、社員も盛んに活動し、『こういう休暇制度があったらいい』『福利厚生を見直してほしい』と具体的に声を上げてくれるのだと思います。
自分の働く環境についての意識がとても高い社員が多く、人事として大変助けられています。率直にいえる弊社の魅力ですね」
■在宅勤務の拡大、そしてより生き生きと働ける環境に
予定している今後の取り組みで最も大きいものは、在宅勤務の拡大だ。現在の在宅勤務は育児・介護にかかわる、もしくは障害のある社員に限られている。しかしITエンジニアの部署では仕事の効率を考え、チームごとに話し合って在宅勤務を取り入れているところもある。これらの正式な制度化を目指し、プロジェクトが進行中だということだ。「早ければ2008年中にと考えています。とはいえ、まだ拡大のために取り組むべき課題があり、具体的にどのように拡大するか最終決定はしていません。社員の期待に応えることを念頭に置きつつビジネスニーズをとらえ、総合的に良い効果が出せるようにしたいと思います」
波頭氏は、「悩みを抱えたままだといい仕事はできない」という。「その解決の手立てとしての選択肢を増やし、社員を手助けできる基盤を整えたい。例えば子育てをしながら働き続ける社員は多いですが、必要とされるだけの十分な育児支援ができているとは思っておらず、まだまだこれからの課題として認識しています。その中でもここ2年くらいで制度を増やしていますので、環境は整いつつあると思います。こういった会社の姿勢が、本人や上司の意識をさらに高めることにもつながります」
とはしつつも、「やはり個人の力は大きい」と感じているという。「会社の制度はすべてを満たすわけではないし、個人のすべての期待に応えるものでもありません。社員各自が努力し、仕事にも成果を反映させれば、周囲の理解も自然と得られる。会社が『この人の働き方を理解してください』ということより、個人個人の努力の賜物なのではと思います」。制度を活用しつつもそれに寄りかからず、責任感を持って自らの課題に取り組む姿勢が必要だということだろう。
最後に波頭氏は、「テーマは、マイクロソフトに勤める人が生き生きしているということ」と語ってくれた。「本人のために、そして本人を取り巻く人やお客さまのためにもそれが一番です。生き生きと働けるような環境をつくっていきたい」
企業側は社員が生き生きと働ける環境を整えることを目標とし、さまざまな課題に取り組む。社員側は積極的にその環境を活用し、かつ環境に甘えずに成果を挙げようとする。マイクロソフトとその社員の姿勢は、ITエンジニアが今後の働き方を考えるときの大きなヒントになるかもしれない。
今回のインデックス |
「生き生きと働ける会社」を目指し、環境を整えるマイクロソフト(1ページ) |
その環境を活用し、成果を挙げるマイクロソフト社員(2ページ) |
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。