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人材紹介会社のコンサルタントが語る
第20回 「社内SE」に向く人、向かない人

イムカ
宮脇啓二
2004/5/26

求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。

社内SEの仕事は企業形態や規模で異なる

(2)社内SEとSIerのSEの比較
 <社内SEの分類>
 社内SE(社内情報システム部門)といいますが、その形態はいくつかのパターンに分類できます。ここで3つの観点から簡単に説明します。

●企業形態別
A 企業内の1部門としての情報システム部
B 情報システム子会社(親会社の情報システムの開発/運用)

 企業形態でいうと、上記の2つに分類できます。Aの形態が肥大化し、Bの形態になるケースが多いようです。また、Bは外販比率(親会社以外のシステム開発)が高いケースもあります。

●社内役割別
A 経営層と近い立場の情報システム部
 企業の情報システムを経営的な視点で企画、設計する(経営企画・事業企画的なポジション)。
B ユーザー調整と外注管理が中心の情報システム部
 「要件定義、設計、開発、導入」など全工程の責任を持ちますが、設計や開発の大半は外注に任せます。主に大規模、中規模の企業にあるパターンです。
C 何でも屋的な情報システム部
 設計、開発、導入はもちろんのこと、システム運用、PCやLANのセットアップなど何でもこなします。主に中小規模の会社のケースです。

●企業規模/系列別
A 大企業:社内調整に多くのパワーが注がれる
B ベンチャー:役割分担は不明瞭で何でも自分でやる
C 外資系:本国との調整に多くのパワーが注がれる

 以上のように、一概に社内SEといってもいくつかに分類できます。それぞれ求められるスキルが異なります。それをよく理解せずに転職すると失敗に至るケースもあります。これらをよく理解することが社内SEへの転身の第一歩です。

両者のメリット、デメリットとは

 <社内SEとSIerのSEを比較>
 続いて社内SEとSIerのSEの仕事内容を比較します。

A 立場の安定性からくるやりがい
 社内SEを志向する理由には、「社員の立場でシステムをじっくりと開発できる」ことを挙げる方が多いです。プロジェクトごとに請け負い、企業を転々とするSIerのSEと異なり、腰を据えて仕事に取り組める点が魅力のようです。確かに社員としての帰属意識からくる、責任感ややりがいがあるといえるでしょう。

B ユーザーとの距離の近さ
 社内SEはユーザーとの距離が近く、頻繁に要件を詰めるなど、現場と多くの接点があります。自分たちのシステムを作り上げていくという意識や一体感が強くなります。また、所属する業界や企業の業務システムに精通できる、事業企画段階やシステム企画など“上流工程”の仕事に携われるチャンスがあります。

 一方、上記のメリットと反対にデメリットもあります。

C 経験の幅
 SIerではいろいろな業界、企業の開発経験に携われます。それらのシステムや顧客と出会うことで、SEとしての経験の幅が広がります。一方、社内SEの経験は固定的になりがちです(特定分野のスペシャリストを目指すならば問題になりませんが……)。

D 業務量の多さ
 これは個々の企業により異なりますので、あくまで一般的な話です。よく納期に追われ、業務量の多いSIerよりも“社内SEはラク”と思われがちですが、実際はそうでないようです。SIerと異なり、システム導入後もそのシステムのメンテナンス(トラブル対応、問い合せへの対応、改修)を継続して行うので、次第に担当するシステムが増えます。さらに新規開発業務を担当すると、「開発もすればメンテナンスもする」ため、業務に集中しにくくなります。

E 便利屋として使われる
 前述したユーザーと距離が近いということはデメリットにもなります。便利屋的な感覚で使われ、やたら細かな改修要件(企業全体から見ればプライオリティが低く、個々の業務担当者のやり方やこだわりに依存したもの)を気軽に頼まれがちです。それらの対応に追われるケースも少なくないようです。

F SEとしてのスキルアップに制約を受ける
 開発自体を外部業者にマル投げのケースがあり、管理業務が増え、テクニカルスキルが身に付きにくい場合もあります。また、プロジェクト管理手法や開発管理手法なども、SIerの方が進んでおり、社内情報システム部門ではそれらが身に付きにくいかもしれません。

 SIerはプロジェクトごとにいろいろな言語/OS/ツールを用いてシステムを構築しますが、社内では同一環境での開発作業が続きます。中には汎用機系しか扱わない企業もあり、SEとしてのスキルが固定され、外部では通用しないというケースもあります。

 ただ、非常に少人数で社内SEを担当し、アプリケーションからネットワーク、サーバといったシステムインフラまでのすべてをこなし、どの分野でも高いレベルを保有する“スーパー社内SE”もいます。こういう人には分業作業が中心のSIerのSEもかないません。全部自分でやらざるを得ないという環境がスーパー社内SEを育てるのですが、これはまれなケースです。

組織人でいれるかどうか

(3)どういう人が社内SEに向いているか
 純粋にコンサルタント/エンジニアとしてスキルを高めたい方は、SIerで働くことを勧めます。社内SEは、システム環境やアプリケーションがある程度固定されていることと、開発外の業務に時間が取られるからです(その企業自体がいろいろなシステムにチャレンジしているケースは別ですが……)。

 一方SIerのSEは、常に最新テクノロジ、開発手法、マネジメント手法などを取り入れるために必死なので、それらのスキルや知識を吸収するチャンスがあります。一方、社内SEでいえば、「そうした役割は外部ベンダの仕事」と割り切っているので、吸収しにくい環境といえます。

 ではどういう人が社内SEに向いているのでしょうか。よくいわれているように、自社システムをじっくり開発したい人に加え、「組織人でいれる人」という点が最重要ポイントです。

 SIerは顧客企業に対してシステム開発のプロである一方、社内SEは組織人として、どう振る舞えるかが問題になります。社内の制約、人間関係、政治環境……などをうまく調整しながら業務を進めていきます。そういったコミュニケーション力(SIerでいう顧客に対するコミュニケーション力とは別のスキル)がなければ業務を遂行できません。

 また、業務の役割分担が厳格に定められているわけではないので、何ごとも積極的に行う姿勢が求められます。組織人である以上、時には社内の理不尽な要求にも我慢しながら仕事をこなさなければなりません。よくSIerのSEが社内SEに転職して失敗するのは、上記のポイントを理解せず、「私の役割はここまで」というスタンスで臨んでしまうケースです。

 さらに、その企業の事業内容に強い興味を持つことも重要です。SEとはいえ、企業に就職するわけですから、その業界や事業内容をよく理解して、こだわりを持つことが重要です(そうでなければ帰属意識が希薄になります)。

 社内SEの採用案件はそう多くありません。しかし、社内SEの希望者は年々増えているような気がします。上記に説明したポイントをよく理解し、「自分の目的は何か」「自分は性格的にどちらのSEが向いているのか」「どんな企業でどんな仕事をしたいのか」をよく見つめて、キャリアプランを見極めてください。

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Index
  ITエンジニアの転職現場から(1)〜SIerへの転職
ITエンジニアの転職現場から(2)〜社内SEへの転職



筆者プロフィール
宮脇 啓二(みやわき・けいじ))●1965年生まれ、広島県出身。大学卒業後、大手流通業と金融業の情報システム部門でSEを9年担当。その後外資系コンサルティングファームで業務・ITコンサルタントを4年経験した後、イムカ株式会社へ転職。プログラマ、SE、コンサルタント、プロマネとIT分野における自身の職務経験をフルに生かし、IT業界を中心としたキャリアコンサルタントとして活躍している。@ITジョブエージェントを通じて@IT読者の転職支援も行っている。





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