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エンジニアのキャリアアップに役立つ!
連載:最新の人材サービス活用法 第1回
キャリア志向かスキル志向かで異なる人事制度

辻俊彦(@ITジョブエージェント担当
2001/12/14

 人材会社での勤務経験がある筆者(@ITジョブエージェント担当)が、現在最も注目しているもの。それはキャリアコンサルティングなどの人材会社による人材サービスだという。そんな人材サービスの最新動向を紹介するとともに、エンジニアがキャリアアップを実現するために、どのようにサービスを利用していけばいいのかを解説する。

 人材会社(人材紹介会社と人材派遣会社)が行っているサービスのうち、キャリアコンサルティングは、利用の仕方によっては“自分戦略”探しの心強い味方になります。今回はキャリアコンサルティングのあり方にヒントを与えてくれそうな、ある会社のユニークな人事制度を紹介しましょう。

あるシステム開発会社の新人事制度

 ある受託系システム開発会社(社員数28名)は、今月から新しい人事制度をスタートしました。この会社は今年から、システム開発の受託とともに、エンジニアに絞った派遣事業を開始したばかりです。そこでというわけではないのでしょうが、今回、ビジネス(キャリア)志向のエンジニアは正社員、スキルアップ志向のエンジニアは派遣スタッフと位置付けたのです。とはいえ、一般的な正社員・派遣スタッフという概念ではありません。単純化して分かりやすくいえば、正社員は企業戦略に沿った目標にコミットしてもらうため、売り上げ目標を背負い、転勤もある半面、業績に応じた賞与や昇進があります。それに対して、派遣スタッフは仕事を選ぶことができて、スキルに応じた報酬が得られる(同スキルであれば、派遣スタッフの方が正社員より高収入)半面、昇進や業績賞与はありません。

 この会社の社長は“現役エンジニア”時代、他社への常駐社員(60万円/月)となった経験があるそうです。その常駐社員時代、その会社の売り上げを年間1億円まで増大させた“営業もできるエンジニア”だったそうです。そのため、会社を設立した後も、その成功体験から、自社の従業員に同じ志向を求め、ビジネス志向のキャリアプランしか用意しませんでした。しかし、スキルのあるエンジニアが年間数名程度退社してしまうということがあったようです。そこで、今年から派遣事業を始めたのを契機に、スキルアップ志向のエンジニアも自己実現できる制度を作ったのです。さらに、正社員と派遣スタッフ間の流動化も制度に内包している点が、極めてユニークなものになっています。

 新人事制度の骨格を図示すると、下記のとおりになります。

新人事制度の骨格図

ビジネス志向コース

  企業カルチャーを重視する観点から、入社と同時に正社員になれるのは新卒に限っています(入社時にビジネス志向かどうかを確認)。新卒で入社した社員(エンジニア)は、2年(目標は1年)でリーダーになることを求められており、その資格要件がFormula A(ベンダー資格などもその内容となる)として定められています。このFormula Aの資格要件を充足してリーダー(PL)になると、2〜3名のチームでタスク管理の責任を負うとともに、チームメンバーの教育を行い、さらに取引先との交渉も行います。

 リーダーの経験を積み、外注先も含め5〜6名のチームでプロジェクト管理もできるようになると、マネージャ(PM)になります。マネージャの最大のミッションは、(受託)売り上げの達成となります。マネージャとして成長し、年商1億円を超える規模にビジネスを拡大できると、次はビジネスマネージャ(BM)になり、報酬に関しても業績賞与の比重がかなり高くなります。仮に入社後2年でリーダーの資格要件を満たさなかった場合は、ビジネス志向への適性が薄いと評価されます。その後は、派遣スタッフになり、スキルアップの道を提供することになります(派遣スタッフになった段階で固定給は上がる)。

スキルアップ志向コース

 スキルアップコースは、自社で運営している教育機関(Professional School)の卒業生か、他社で業務経験を積んだエンジニア(いわゆる中途採用のエンジニア)が対象で、派遣スタッフからスタートします。派遣スタッフとして6カ月〜1年就業すると、シルバースタッフになります。この資格要件は、Formula Bと呼ばれ、実質よりは形式的な要件(就業期間など)になっています。シルバースタッフになると、前述のFormula Aの基準で正社員への道も開かれています。固定給は下がるかもしれませんし、メンバー管理や売り上げを上げる責任が生じますが、業績賞与や昇進の道は開かれます。

 ここでお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、正社員から2年でリーダーになれなかったエンジニアも、シルバースタッフ(正社員2年勤続の場合、自動的にシルバースタッフからスタート)になり、正社員への復活の道も開かれています。タスク管理や売り上げの増大に関心がなく、スキルアップ志向のエンジニアは、そのままゴールドスタッフ、プラチナスタッフを目指すことになります。プラチナスタッフの月収は100万円(それに見合うだけのスキル)を目安にしています。念のために付け加えておくと、派遣スタッフはスキルアップ志向コースのため、研修援助や資格取得奨励金などは正社員よりも手厚くなっています。

自分自身が求めていること

 エンジニアの生き方は各人各様です。しかし、強いて大別するとこの2つのコースに集約されるのかもしれません。いま勤めている会社に不満を抱いているエンジニアは、仕事内容に対する不満よりも人事制度の制約などにより、自分の目指す方向が見えないことへの不満だったり、エンジニアとしての評価(およびそれに基づく報酬)に対する不満であったりすることが圧倒的に多いように思われます。“自分戦略”を真剣に考え、自己実現へ向けて行動を取っていくには、出発点として、自分がビジネス(キャリア)志向なのかスキルアップ志向なのかを見極めることが重要です。そういう見極めを一緒にしていくのがキャリアコンサルティングであり、人材サービスが今後強化していくべきポイントだと思います。例えば弊社の@ITジョブエージェントでは、キャリアコンサルティングに秀でた企業をパートナーとし、読者の“自分戦略”探しに資するよう努めているのです。まずは、自分がどちらの志向を持っているのかを見極めて、幸せなキャリアプランを歩んでほしいものです。

筆者紹介
辻俊彦 ●2001年3月まで、エンジニア派遣大手企業で事業企画に携わり、 企業のニーズに合わせた育成プロジェクトを立ち上げる。エンジニアの自己実現をサポートするというポリシーの下に、@ITジョブエージェントのサー ビス企画にも関与。

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