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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.19<2003年7月版
エンジニアの求人が回復、注目の業界は?

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2003/7/30

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

IT業界は回復基調に

 先日ガートナージャパンは、2003年第2四半期(4〜6月)の世界パソコン市場(PCサーバ含む)における出荷台数調査の結果(暫定値)を発表した。それによると対前年成長率は10.0%と、2000年第3四半期以来、約3年ぶりの2けた成長となったという。

 成長の主な要因は個人需要の回復のようだが、同社ではビジネス市場における需要回復の可能性を示すものとして、IBMの出荷台数が増加したことを挙げている。日刊紙や雑誌などに掲載される大手IT企業首脳の談話を読むと、企業のIT投資も徐々にではあるが回復の兆しがあるようだ。

求人トレンド、ついに上昇

 IT業界の動向と呼応するかのように、ITエンジニアの求人動向も回復(上昇)に転じたようだ。今回ヒアリングした人材紹介会社はどこも一様に「求人数が増えた」と回答している。人材紹介会社によっては、「ベンチャー企業からの求人が増えている」や「中小から大手まで一様に求人数が増えた」「採用できる企業とできない企業の差がより明確になっているが、採用できる企業は確実に数を増やしている」など、まちまちな回答ではあるが、求人数が増えていることは間違いないようだ。

 ある人材紹介会社の代表は「昨年11月ごろが底で、それ以降は微増か横ばい。6、7月から増加が鮮明になってきました」と、ここ半年間の動向を振り返った。6月は来年度新卒採用活動が一段落し、人事部が中途採用にリソースを振り替える時期で、毎年中途採用数は増えるという。従って8月以降も求人数が増えるかどうかは現在の段階では断定できない。

 某求人広告代理店は「企業によっては、上半期中途採用実績の総括と、下半期に向けた採用計画の見直しに入っているところがあります」という。8、9月の求人動向を引き続き注視したい。

若手採用も増加

 いま採用が多いのは、と問うと「プロジェクトマネージャ」と判で押したような回答ばかりだったのが、ここ数カ月の動きだったが、採用数の増加に伴い、採用される層も広がっているようだ。「第二新卒クラスの採用を活発に行っている企業も一部にはあります。新卒を採用するよりも、社会人研修をしない分、コストが軽減できるという考えもあるようです」(某人材紹介会社)

 また、別の人材紹介会社では「プロジェクトマネージャ予備軍として、プロジェクトリーダークラスの採用が増えているようです。年齢的には27〜30歳くらいで、10名程度を率いたチームリーダー経験者といった層です」と教えてくれた。

上昇するも慎重姿勢は変わらず

 このように求人数も求人層も拡大傾向にあり、いいことずくめのようだが、なお企業の姿勢は慎重だという。某人材紹介会社幹部は「以前は、年間中途採用数を達成しなければ採用担当者の人事評価が下がるということで、とにかく数を確保しようという動きがあったのですが、いまは数の達成よりも、質の重視となっています」と、採用側の慎重姿勢は今後も変わらないと指摘する。

 以上のトレンドは、いずれも国内企業のITエンジニア求人動向で、外資系企業は依然として振るわないようだ。昨年来大規模なリストラが続いたが、今後もいくつかの企業でリストラが予定されているとうわさされている。ただし、リストラをしつつも採用を行っている企業もあるが、いずれも欠員募集程度のようだ。

今後注目の業種は?

 ITエンジニアの求人トレンドは、システムインテグレータ(SI)、受託開発など情報サービス業の好不況による。さらに情報サービス業の好不況は、発注者であるユーザー企業のIT投資動向に左右されるのはいうまでもない。そこで今回は、今後IT投資が拡大すると思われるユーザー企業の業種について、調査した結果をレポートしよう。

製造業
 世界市場で生き残りをかける製造業のIT投資は引き続き堅調のようだ。ある製造業の企業では、現在数名規模の情報システム部門を数百名体制に拡充するという話を聞いた。勝ち組製造業にとってSCMやBOMなどはもはや生命線となっており、従来外部に委託していたシステム開発を内部で行い、ノウハウの蓄積をさらに図ろうとしている。

 先日開催された「第12回 ソフトウェア開発環境展」に出展したあるSIのマーケティング担当者によると、「体感値ですが、今年の特徴はユーザー企業の情報システム担当者の来場が多かったことだと思います」との傾向を教えてくれた。1つにはコスト削減で多少のシステム改修を外部発注できなくなっていることもあるだろうが、前述のような情報システム部門でのノウハウの蓄積が進んでいることの証左だと思われる。

医療
 1999年に診療録保存に関する規制が緩和されて以来、大規模病院を中心に電子カルテの導入が進んでいるようだ。厚生労働省が2001年12月に発表した「保健医療分野における情報化にむけてのグランドデザイン」では、2006年度までに全国約850の大病院と診療所の6割以上に電子カルテシステムを普及させることを目指している。

 市場拡大を見込んで、大手電機メーカーをはじめ各社による市場参入が相次いでいるという。求人という観点からも「病院情報システム経験者」の募集が出始めている。この動きを推進すべく、日本医療情報学会では、「医療情報技師」という認定資格制度を設立し、医療知識+情報処理技術に長けた人材の育成をスタートした。詳しくは同学会のWebサイトを参照いただきたい。

証券
 先日、東京証券取引所が10億円前後をかけて「相場報道システム」のリプレースを5年ぶりに行うと新聞報道された。これは昨今の株式市場の活況、個人投資家の増加、それに証券会社や個人を問わず、ITを駆使して売買注文を繰り返す手法による注文件数の増加などが背景にあるようだ。この動きは証券各社にも波及して、証券業界のシステム投資が拡大する可能性がある。そうなれば証券業界に強いSIの求人にも影響するかもしれない。

 しかし、某人材紹介会社では「一時期の相場の盛り上がりからそうした期待感があるだけで、実際にシステムリプレースに着手したという話は聞きませんし、証券業界に強いSIの求人が増加するまでには至っていません」とのことだ。ただし今後の市況によっては、要注目の業界になりそうだ。

流通
 日本経済新聞で「動き出すICタグ」という特集記事が掲載された(日本経済新聞 7月22日、23日朝刊)。ご存じのようにICタグは従来のバーコードに代わって商品に添付することによって、在庫管理や販売管理の効率を飛躍的に向上させると期待されている。

 流通業界で、ICタグ導入をきっかけとした既存の在庫管理システムや販売管理システムのリプレースが進むと、IT業界への影響は大きい。同特集によると、「関連機器を含めたICタグの国内市場規模は2003年に500億円、2005年には3000億円」という。流通業に強いハードベンダ、SIにとってはまさにチャンスとなるかもしれない。

 ただし、日米2規格の統一問題、読み取り精度、個人情報保護の観点、流通業のシステム投資体力など、普及に向けた課題は多いようだ。

 以上、直近に拡大が見込まれる業界や、数年後に有望な業界などをレポートした。特定業界での業務知識や経験をこれからの強みとする、という観点で自分戦略を立案するのも1つの方向だと思われる。

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