第1回 起業を夢見る学生時代から独立前夜まで
ナレッジエックス 中越智哉
2006/8/11
■そして独立前夜
独立を決意したということは、自分なりに独立に必要な力が備わったと判断したことになります。しかし実際のところ、独立を決意したとき、十分に力が備わっていたかといえば、そんなことはありませんでした。
独立したら、会社組織が自分の代わりにやってくれていたことを自分自身でやらなければいけません。しかし私は営業職も経験したことがないですし、経理のこともさっぱり分かりません。
ですが、私はこうも思ったのです。そうやってすべての職域に精通するまで待っていたら、たぶんいつまでたっても独立などできないでしょう。「コアとなるスキルはある程度身に付き、未経験分野は自分の頑張りでカバーできる」、そう思えるようになったとき、独立を強く意識するようになりました。
「独立しよう」。その思いが自分の中で決定的になったとき、後戻りはできなくなりました。しばらく鈍っていると思っていた自分の頭が、すごい勢いで回転し始めるのが分かりました。同時に、自分が周りからどう見えているのかを、それまで以上に意識するようになりました。独立するからには自分自身がある程度のブランドでなければなりません。組織の威光にあずかることはできないわけですから。
前職は私服OKの職場でしたので、よくTシャツにジーンズというスタイルで通勤していました。が、独立を決意してからは、ジーンズも襟のないシャツもやめました。それまでほとんど着たことのなかったジャケットも着るようになりました。
もちろん見た目がすべてではありません。ですが、見た目の印象も重要な要素の1つと考えるようになりました。
■さて周囲の反応は?
独立するということはすなわち、サラリーマンではなくなり、定収を保証されなくなることを意味します。
転職したり独立したりするとき、周囲の反対に遭うことは多いと聞きます。私などはその年の春に結婚したので、
「よく奥さんがOKしてくれたね」
「どうやって奥さんを説得したの」
と聞かれたものです。
幸いにも私は周囲からの反対にはほとんど遭いませんでした。環境に恵まれていたということもあるかもしれません。
まず自分の両親です。どう思っているのかを直接尋ねたわけではないのですが、学生時代に「起業する」と騒いでいたのを知っているので、「いつかそんなことをいい出すに違いない」と常々思っていたのではないかと推測しています。なので実際にそういう話になったとき、さほど強く反対しなかったのだと思います。
そして妻の両親です。これも直接聞いたわけではないので推測の域を出ませんが、妻の親ごさんの兄弟は皆さん自営業を営んでおり、妻のお父さんも若いころに自営業の経験があったため、独立して仕事をするということに非常に理解があったのではないかと思います。普通ならば、結婚して数カ月で会社を辞める、しかも独立するなどといわれたら、賛成や反対以前に強く不安を感じるはずです。
妻自身もやはり最初は不安を感じていたようです。何も事情を話さず、ただ「辞める」「独立する」というだけであったら、やはり反対されていたかもしれません。私は独立に懸ける思いや、独立してどんなことをしたいかを妻に話しました。生活に困るような状態にはしない、もし1年間やってみてまともな給料にならなければ独立はやめるという約束もしました。
私は結構頑固なところがあって、一度「やる」と決めたら、相当のことがない限りその決断を撤回しません。(自分なりにですが)大丈夫という目算があって決意しているので、なおさらです。ですから妻にも自分の決意を理解してもらえるよう一生懸命に話しました。妻もそんな私の熱意を信じてくれたのではないかと思います。
私は理解ある周囲の人たちのおかげで、独立に向けて準備を進めることができたのです。
今回のインデックス |
ITエンジニア、その独立の軌跡(1) (1ページ) |
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筆者プロフィール |
中越智哉●北海道出身。北海道大学大学院電子情報工学専攻修士課程修了。在学中はJavaとLinuxに熱中。卒業後、Javaの仕事にあこがれ、1999年にテンアートニに入社。Java の受託開発案件や教育事業、コンサルティングなどを幅広く担当した後、2006年2月に同社を退社。同年3月にナレッジエックスを設立。 JavaをはじめとするIT開発技術の教育に奔走する。趣味は自転車と草野球、そして毎日欠かさない耳かき。 |
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