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〜自分戦略研究所 転職者インタビュー〜

転職。決断のとき

第5回 転職は市場価値を上げる手段だった

風工舎 川月現大
2003/6/18

 スキルを上げるため、キャリアを磨くため、給料を上げるため――。エンジニアはさまざまな理由で転職し、新しい舞台で活躍する。では、転職の決断をするのはいつなのか? そしてその決断に至った理由とは何だろうか? その決断のときを、今回は@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに尋ねた。

今回の転職者:古木敏男氏(仮名・26歳)
プロフィール大学の工学部電子情報工学科を卒業後、某メーカー系のシステム子会社に就職。さまざまなシステム構築に携わり、2002年10月に大手SIerに転職。

 古木敏男氏(仮名)は現在26歳。3年ほど勤めた会社を辞め、2002年10月に大手SIerに転職した。大学卒業後、入った会社は大手メーカー関連のシステム会社。しかし、入ってすぐに後悔することになる。自社開発を行わない丸投げ体質、大した勉強もせず、最新のテクノロジに見向きもしない社員。入社後、何カ月もたたないうちに転職を真剣に考えるようになった。

■入社後すぐに退職したくなった……

 大学では、工学部電子情報工学科に席を置き、授業などの中でC言語を学んだ。もともと数学が得意で、大学ではプログラミングも難なく習得できた。古木氏が所属した研究室でのテーマは、「オブジェクト指向」。就職先として、IT関連の会社を志向したのは、ごく当然のことだった。特に彼が考えていたのが、「品質の高いシステムを作りたい」ということ。何社か大手国内ベンダなどに応募、複数のベンダから内定を受けた。その中で、大手メーカー系のシステム子会社への就職を決めた。

 しかし、入社してすぐ、退職したくなった。その理由を次のように述懐する。

 「もともと良いシステムを作りたいと思って入社したのですが、そう考える社員が少なかったのです。また、仕事のやり方もおかしいと感じました。その会社は親会社のシステム開発を一手に引き受けていて、営業活動をせずに仕事がくるのです。つまり、システムのできが良くても悪くても仕事があるのです」

■開発は外部ベンダに丸投げ

 彼がこうした疑問を持つに至った理由は、学生時代からやってきたサッカーにあった。

 「プロのサッカー選手などは、努力するのは当たり前と語っています。それはどんな仕事でも同じなのではないでしょうか。世の中は、そういうものだと考えていたのです」

 だが、実際に入社した会社は、古木氏の目から見て社内のエンジニアが努力しているとは思えなかった。

 「入社後最初の仕事は、販売物流システムの開発でしたが、外部に一括発注しました。つまり、丸投げだったのです」

 そうした“生ぬるい環境”にいるせいか、技術を積極的に勉強しようとしない社員が目に付く。それでも、仕事には何ら支障がなかった。「開発は原則として外部のベンダに丸投げ。不思議なことに、中途採用で入社した人も、そうした水にいつの間にかなじんでしまうのです」。この会社にいても、自分のスキルを伸ばせないと思い、入社してすぐに転職を考えたという。

 しかし、実際に転職したのは3年後。すぐに行動しなかったのには理由があったのだろうか。

 「転職するに当たって情報収集するのはもちろんのこと、自分の市場価値を上げなければならないと考えたからです。そしてSEに必要なのは、外部ベンダへの発注といった“手配師”的な仕事を円滑に行うことではなく、もっと一般に通用する能力が必要だと思いました」

このリーダーの下なら能力を磨けると思い、転職の時期をずらした

 もう1つ、古木氏が会社を辞めなかった理由がある。中途入社の直属の上司だ。彼は自分のチームでは「丸投げはしない」と宣言し、自分が担当する部分は社内で開発できる体制をつくり、いくつかの開発を古木氏に任せてくれた。

 「それですぐに転職することをやめました。会社のシステムはおかしいが、いま辞める必要はない。このリーダーの下であれば、自分の能力を磨くことができると……」

 しかし、そのリーダーは手取り足取り仕事を教えるというタイプではなかった。覚えたいこと、学びたいことは自分で勉強しろというタイプだったため、本を読み始め、自分で勉強するようになった。開発で利用していたのは、C言語やCGI(C言語、Pro*C)が中心で、ほかにOracleデ−タベースを利用していた。

■プロジェクトリーダーでプロセス改善

 入社3年目にプロジェクトリーダーを任された。プロジェクトリーダーになったら、古木氏にはチャレンジしたいことがあった。

 「開発プロセスの改善です。外注先のプログラマはそれほどスキルが高いわけではないので、基本的なコーディングしか任せられません。そのため、外注にそれほどプログラミングをさせず、またいかにバグを出させないようにするのかが課題でした。そこで、JavaのようにC言語版のフレームワークを作りました。例えばこの画面パターンだったらこのモジュールを使え、というふうに指示することにしたのです」と、得意気に語る古木氏。

 しかし、その表情にはわずかばかりだが陰りが感じられた。本当はJavaを学習し、そのスキルを身に付けたかったのではないだろうかということが彼の表情に見て取れたからだ。Javaを利用できないのであれば、せめてエッセンスだけは利用しよう、考え方をまねてみようという、新しい技術や潮流に対する情熱も感じられる。

 「確かにC言語でフレームワークを作ることは無謀でした。が、例えばCの構造体を利用してJavaのクラスに似た動きをさせるなど、さまざまなことに挑戦し、フレームワークに実装しました」と笑顔で振り返る。

■ついに転職を決断するときが……

 直属の上司のおかげで順調に技術を磨いていたが、ついに「転職を決断するとき」がやってきた。前述したように、現在の技術のトレンドはJava。しかし、古木氏の勤めていた会社では、Javaを使う案件はほとんどなかったという。「C言語を使うのがやっと」という会社の状態では、新しい技術や言語などを使ったシステム作りなどに挑戦できない。

 また、会社から「人を育ててくれ」といわれ始めた。しかし、自分の歳で教える側に回っていいのだろうか。まだまだ自分も学びたいことがあるのに、それでは勉強に充てる時間がなくなってしまう。

 そこで、古木氏は行動を開始した。数社の人材紹介会社などのほか、@ITジョブエージェントにも登録した。それは、まさに入社から3年が過ぎたころだった。自らも転職活動を行い、某ゲームソフト会社からの内定をもらったが、辞退した。

 「結婚して子どもがいたので、正社員を望んでいました。しかし、ゲーム会社は契約社員で1年契約というものでした。それで条件が合わずあきらめました」

 最終的に大手SIerへの転職を決断する。その理由は「自分の希望であった上流工程からかかわることができ、オブジェクト指向にも力を入れていることです」と答えてくれた。

■将来は技術だけでないエンジニアに

 「転職する前にいろいろなカンファレンスなどに出ました。例えば豆蔵の羽生田さんや萩本さんの講演を聞きました。その中で印象的だったのは、『技術だけでやっていける時代は終わった。ヒューマンスキルがないと駄目だし、ビジネス寄りの視点を持たなければ生き残れない』という発言でした。もちろん、ベースとしての技術力は必要ですが、品質の高いシステムを開発するには、ビジネスに対する知識が求められることは確かです」

技術だけでやっていける時代は終わった。ビジネス寄りの視点が必要だ

 すでに新しい会社での自分の課題を、技術だけでなく、ビジネス寄りの視点を持つことと決め、その獲得にまい進している。

 古木氏に、転職活動や転職したことで得られたことは何かを聞いてみた。

 「何社かの面接を通じて見えてきたのは、自分のキャリアビジョンをしっかり持てば、それは面接官にも伝わるということ。そのためには、世の中の動きを知ることが大事です。だからこそ情報収集を怠ってはいけない。そこから、自分が何を学べばよいのかが分かり、自分のキャリアビジョンも変更し、修正することができます」

 今後も、自主的に情報収集を続け、技術に対する勉強も継続していく。そこで、自分のキャリアと会社の方向性との間でズレが生じたら、転職も視野に入れているという。

 「現在勉強と思い、自宅のマシンを使ってJavaフレームワークを構築しています。それを使って妻の家計簿を開発しました(笑)。かなり(開発費用として)高くついた家計簿です。また、@ITにEclipseやCVSの記事が掲載されたとき、家計簿システムで利用しようと思い、いろいろと試しています」

 まさに彼のあこがれるサッカー選手が行っているように、プロフェッショナルとして常に努力を怠らない姿勢だ。

■プロマネを経て「アーキテクト」に

 最後に、5年後、10年後のキャリアビジョンを聞いた。

 「最終的な目標は、アーキテクトになることです。その前に、あと5年でプロジェクトマネジメントをきちんとできるようになりたい。アーキテクトは、プロジェクトマネージャに何がリスクとなり、どのような管理をしなければならないかを伝えなければなりません。そのためにはプロジェクトマネジメントのスキルを身に付ける必要があります。プロジェクトマネージャを1度は経験しておきたいですね」と将来の夢を語る古木氏。

 「とにかくいまは、優れたシステムを作りたい。これはサッカーと一緒です。ゴールを決めて、喝采(かっさい)を浴びたい(笑)。そのためには、通勤電車の往復80分もムダにはできません。いつでも本を鞄に忍ばせて、勉強しています」

 古木氏の転職は、キャリア実現のための第一歩であり、その視線は5年、10年先の未来に向けられている。

担当コンサルタントからのひと言
 古木氏をコンサルティングする際に一番重視したのは、将来のキャリアビジョンでした。現状に不満を持ち、「すぐにでも転職を」という意思をお持ちになっていましたが、テクニカルアーキテクトへのキャリアパスをどのように作っていくのかをじっくりと話し合い、転職時期も見直しました。

 
大手SIerを紹介した理由は、同社が上流工程から設計・開発まで一貫して行えるという点に加えて、社内にはオブジェクト指向など、高い技術力を持つエンジニアが多く、技術力やビジネススキルを磨ける会社だからです

 古木氏は非常に技術志向が強く、勉強熱心です。またキャリアビジョンも明確で、現段階で自分には何が足りないか、何を勉強していかねばならないかなどを真剣に考えていました。このような点が高く評価され、転職に成功したのだと思います。

 
テクノブレーン 人材紹介事業部


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