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〜自分戦略研究所 転職者インタビュー〜

転職。決断のとき

第8回 “孫請けエンジニア”の仕事に限界を感じた

横山渉
2003/9/17

 スキルを上げるため、キャリアを磨くため、給料を上げるため――。エンジニアはさまざまな理由で転職し、新しい舞台で活躍する。では、転職の決断をするのはいつなのか? そしてその決断に至った理由とは何だろうか? その決断のときを、今回は@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに尋ねた。

今回の転職者:武田博氏(25歳)
プロフィール高等専門学校を卒業後、情報システム会社を経て、ソニーグローバルソリューションズに転職。ソニーならではの自由闊達(かったつ)な社風にすっかりなじみ、エンジニアとしてのスキルアップに励む毎日。

■特定分野でコアな技術力を身に付けたかった

 現在の仕事にはやりがいを感じているし、職場の人間関係もいい。だけど、いまのままでは限界があるし、少しでも理想に近づけるなら転職もいいかも――。エンジニアにはこうした“転職希望潜在層”が多いといわれるが、そんなとき、取りあえずWebサイトで人材紹介会社に登録してチャンスを待つのは、賢い身の振り方だ。武田博氏(25歳)もそうして転職を成功させた1人である。

 パソコンとの出合いは中学時代にさかのぼる。コンピュータに興味を持っていた武田氏は、BASICを使ってゲームソフトを作っていた。

 「中学校では学校の授業に飽き飽きしていたので、普通制の高校に通うつもりはありませんでした」。こう話す武田氏は、高等専門学校の情報工学科に進む。高専は5年間のカリキュラムで“手に職をつける”工業専門の高校だが、電気・機械関係の授業がメインのところも多い。コンピュータソフトに関心があった武田氏は、工作機械などの制御に使われているコンピュータに接することで、自分の興味分野を習熟させていった。

 高校卒業後はソフトウェアの会社を希望して、東京の情報システム会社に入社する。「単にコンピュータのソフトウェアを作っているだけではなく、何か専門領域において特別な技術力を持っている会社に就職したくて、前の会社を選びました」

 その会社は通信が専門で、武田氏は開発言語C++を使って通信関連機器の組み込みソフトウェアの開発を担当する。2年ほどそうした業務に携わり、仕事にもすっかり慣れてきたころ、ほかの最新技術への興味もわいてきた。

 「いろいろなWebサイトを見ていると、Web系アプリケーションの開発などに関する記事が多くて、自分もそうした仕事をしてみたいと思うようになったのです」

■やりたい仕事を積極的に引き寄せる

 インターネットの爆発的な普及で、Javaを駆使したWeb系の技術が最先端分野として脚光を浴びてきたときに、若いエンジニアがそうした新しい仕事に挑戦したいと考えても不思議ではない。会社の上司に自分がやってみたい仕事に対する希望を少しずつ話し始めたのもこのころだ。

要件定義から設計、実装や導入まで担当できる仕事がやりたかった

 その結果、すぐに継続中のプロジェクトを離れるわけにはいかなかったが、希望していた仕事に近いものも回ってくるようになった。

 「デバッグ用のアプリケーションをWeb上に作り、Windows上から通信機器をデバッグできるようなツールを作りました。もともと組み込みのシステム上で動くツールもあったのですが、もっと簡単に使えるものがいいだろうと仲間数人で提案して、会社から開発を認められました。そんなふうにしてビジネスアプリケーション系の仕事にも手を伸ばしていきました」

 こうして希望の仕事に近いこともできるように環境を作り始めた武田氏だが、決して組み込み系のソフトウェア開発がイヤになったわけではないという。

 「組み込みに限らず下請けの仕事だと、どうしても規模の大きなプロジェクトになり、自分の役割は一部分の限定的なものになってしまいます。また、上流の工程にかかわることはできません。それに対してWeb系アプリケーションの開発案件などの仕事であれば、要件定義の段階から自分でできるし、設計も実装も試験も導入も全部自分ですることができます。そうしたプロジェクトの流れ全体を自分で確認できる仕事がしたかったのです」 

■“孫請け企業”の仕事に失望する……

  ビジネス系アプリケーションの開発など比較的小さなプロジェクトに携わるエンジニアの中には、もっと大きなプロジェクトに挑戦したいと話す人も多い。武田氏の場合、一見そうした人たちと対照的だが、実は本当にこだわっていたことはプロジェクトの大小よりも、プロジェクト工程へのかかわり方、スタンスの問題だったようだ。あるいはそのプロジェクトをどこまでハンドリングできるかといい換えてもいい。

 実際、転職するまでの2年間は組み込みソフトウェアを離れて、Web上の金融系アプリケーションの開発などもいくつか担当した。これは当初希望していた仕事だ。それでも転職を決意した理由を次のように語る。

 「前の会社が受注していたプロジェクトというのは、1次受注ではなく2次受注でした。つまり孫請けです。金融系企業のプロジェクトは、ドキュメントの作成など設計や開発には関係のない業務に多くの時間を取られました。また、非効率と思われる業務があっても、2次受注の立場では改善提案をすることは難しく、仮に提案したとしても通る可能性はほとんどありません」

 こうした環境の中、徐々に転職が現実的なものとなってくる。

■上流工程の仕事がしたい

  業務改善のアイデアがあるのに提案することも実現する権限もない……。上司に相談しても、「会社の立場上、どうすることもできない」といわれる。このとき初めて仕事上の限界を感じ、転職への動機がリアリティを帯びてきた。こうして2002年の春、@ITジョブエージェントに登録する。 

 「ジョブエージェントを通じて知り合ったコンサルタントの方と話しているうちに、自分では考えていなかったような転職動機に気付かされました。最初はWeb系の開発やオブジェクト指向といったことを優先して職探しをお願いしていたのですが、転職して現在担当しているのは、組み込みのシステム開発に近い仕事ですから(笑)」

 人材コンサルタントとの面接の中で新たに気付かされたことは、上流工程の仕事、すなわち顧客と実際に話し合って仕様や要件定義するといった仕事である。それは、武田氏が本当の意味で顧客のニーズに合った製品作りをしたいと思うからであり、そうするためには上流部分から手掛けていかなければ、思いどおりの仕事にはならないということに気付いたからであった。 

■製品設計にもタッチできる仕事に満足

  転職活動に当たって、エージェントに依頼するのは初めての経験だった。金銭面の負担や仕事紹介上の手続きについて分からないことも多少あったが、特に大きな不安はなかったという。

自分の意見が製品設計に反映しているのを見るとやりがいを感じる。そこが2次受注の仕事と大きく異なるところ

 「切羽詰まった状況での転職活動ではなかったので、気楽な気持ちでとりあえず登録した感じです。自分で企業に応募するとなると、自分の知っている会社しか頭に浮かびませんが、エージェントの方ならいろいろな会社を知ってますから適切な会社を紹介してくれると思いました」

 こうしていくつかの会社を紹介されて面接にも足を運んだが、最終的にソニーグローバルソリューションズを選び、今年2月に入社した。現在の仕事は、情報家電製品の組み込みシステムの開発である。

 「組み込み系とWebアプリケーションの両方の仕事に携わってきた経験が買われたのかもしれません(笑)」

  最初にコンサルタントに相談した希望の仕事とは結果的に違うものではあるが、いまの仕事にはとても満足しているようだ。

 「直接の担当ではありませんが、ユーザーの使い勝手やシステム上の問題まで、製品設計にかかわることにも提案できるのがうれしいですね。そして、自分の意見が製品設計に反映しているのを見るとやりがいを感じます。そうした点が2次受注で仕事を請け負うこととはかなり違います」

■技術は手段、何を作るかが大切!

  武田氏が転職し、最も驚いたのは“社内カルチャー”だという。

 「現在、ソニー本社の方たちと一緒のプロジェクトで仕事をしていますが、社風は自由な感じでモチベーションは上がります。中途入社の方が多いので違和感はありません。また、無駄なドキュメントの作成などもなく、効率的に仕事を回すことができます。無駄なことはしないという文化でしょうか。あと、以前と大きく変わったのは、レビューが多くなったことです。レビューで丁々発止やり合いながら意識の統一を図ったり、技術的にも練り上げる作業をします。みんなの前で意見を発表するプレゼン力もここでは必要なスキルですね」

 今後は技術的なスキルを伸ばしつつ、技術の分かるプロとして製品企画の部分にもタッチしていけたらと話す武田氏。技術はあくまで手段にすぎず、ツールとして考えるタイプだという。

 「日に日に技術が進化しても、基本は変わりません。新しい技術は前の技術の応用であることが多いし、結局、どんな技術を使うかではなく、その技術を用いて何を作るのかが大切だと思います」

 最後に転職を希望するエンジニアに向けてのメッセージを尋ねた。

 「転職の動機としてJavaがやりたい、C++を使う開発の仕事がやりたいと話すエンジニアがいますが、勉強は個人でするものだと思います。私が会社に求めるのは仕事環境であり、製品です。会社というレベルでしか実現できない要求があったときにだけ転職を勧めます」

 そう語る武田氏が、現在個人的に勉強しているのは、次世代のインターネットプロトコルといわれるIPv6。エンジニアとしての出発点ともいえる通信分野の技術を、今後もフォローしていきたいようだ。

担当コンサルタントからのひと言
 武田氏は、前職で社内勉強会の講師を任されるほど高い技術力をお持ちでしたが、受託開発企業の限界があり、顧客の顔が見える上流工程の経験がありませんでした。そこで、上流工程で顧客対応のスキルを構築できる元請企業の紹介にコンサルティングの重点を置きました。

 結果的にソニーグローバルソリューションズを紹介した理由は、同社が世界を舞台にしたソニーのIT戦略を担う中核企業であるため、最先端の技術力とともに上流工程における自由で大胆な企画提案能力を養うことが可能だからです。

 転職できた理由は、高い技術力を背景にした武田氏の若さとポテンシャルが次世代のソニーを担うエンジニアの1人として歓迎されたからだと思います。


 テクノブレーン 人材紹介事業部 コンサルタント 村井 知光氏


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