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〜自分戦略研究所 転職者インタビュー〜

転職。決断のとき

第10回 技術スキルへの強い不安から3度目の転職に

横山渉
2003/12/5

 スキルを上げるため、キャリアを磨くため、給料を上げるため――。エンジニアはさまざまな理由で転職し、新しい舞台で活躍する。では、転職の決断をするのはいつなのか? そしてその決断に至った理由とは何だろうか? その決断のときを、今回は@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに尋ねた。

今回の転職者:青山忠紀 氏(仮名・34歳)
プロフィール情報処理系の専門学校を卒業後、SEの道に進むがその時々の“やりたい仕事”と出合い、3回転職する。4社目の勤務先は通信のキャリア。希望をだいたいかなえてきたという。いまはプロジェクトの管理手法に興味を持っている。

 現在の仕事にはやりがいを感じているし、十分満足もしている。でも、いまの自分に不足していることって何だろう……。一見、ぜいたくともいえる悩みが転職の動機につながることはよくあることだ。それは技術者としての飽くなき向上心の表れでもあるのだが、今回登場する青山忠紀氏(仮名・34歳)もその1人。

■ちょっとした“誤解”からSEになった
 「もともと設計士になりたかったのですよ」。そう話す青山氏が高校卒業後に情報処理系の専門学校に進んだのも実は勝手な思い込みからで“建築の設計”とコンピュータソフトなどの“設計”を同じようなものと考えたからだった。

 「建築もコンピュータも同じ設計という言葉なので、SEという仕事もいいかな、なんて高校生が勝手に思ったわけです。いま思えば、全然違うのですけどね(笑)」。それまで、コンピュータを触ったことすらなかったという青山氏。ちょっとした誤解で、このときからエンジニアへの道を進み始めた。

 専門学校を卒業する間近、学校の教務課で紹介された情報システム会社に就職を決めた。

 「実は、大学進学を考えて受験したのですが、結局合格できませんでした。そこで慌てて教務課に駆け込んだのです。学校で学んだことが実際の社会ではどうなっているのか、それを見ることができればいいと思っていたので、会社選びにこだわりはありませんでした。また“設計”という仕事に少しでも携わりたいと思っていました」

 最初の3年間はオペレータとして客先に常駐。汎用機系システムのバッチ処理や各部署の端末の運用監視をしていた。そうした地道な作業を経験した後、プログラマとしてほかの顧客先にも常駐し、COBOL・VB・dbMagicを用いて念願の開発・設計業務に携わる。最終的には詳細設計を担当するまでになった。

上流の仕事がしたい。伸び盛りの通信業界へ

 2件目の客先常駐で約3年のプログラマ経験を務めた後、青山氏は初めて転職する。

 「顧客の情報システムではなく、自分の会社のシステムを一から作ってみたいと考えるようになりました。客先にいるとき、『自分ならこんな設計をしたい』と思うことが多かったからです。もう1つは、詳細設計ではなく、要件定義、基本設計など直接ユーザーと交渉できる立場になりたいと思いました。ただ、会社としては、上流工程まで事業領域を広げようと考えていなかったので、転職するしか方法がありませんでした」

 転職先選びの条件は「自社の情報システムの構築ができること」。特に業界にこだわりはなく、転職情報誌で目が留まった通信キャリア系企業に応募し、採用された。当時携帯電話やPHSの利用者が増え始めた時期で、活気あふれる業界の1つだった。

 仕事内容は社内の基幹システムである料金・課金に関するシステムの開発設計。コーディングをしていた前職の経験がここでは大いに役立ったという。バグが発生しても、開発現場を経験しているとおおよその原因は想像がついたので、外部ベンダにもその都度的確に指示できた。

■業務知識とロジカルシンキング

 通信会社のシステムは、加入者増加やサービスの拡大、そして各種割引制度の導入などで年々複雑化してきた。それに加え、新規加入者の登録、料金請求、入金確認、未払い督促などシステム要件は多岐にわたる。

 青山氏は大幅な加入者の増加に対応するため、システムをすべて根本からリプレースする大規模なプロジェクトに1年半ほど携わった。システムの拡張だけでは対応できなくなったからだ。そうした経験や新規サービスのシステム化検討も含め、この会社に5年間在籍中に得たスキルについて、次のように語る。

 「まず、通信業界に関する業務知識。次に、仕事の進め方や開発手法などをロジカルに考える力。それから実際に運用する工程、すなわち最初(システム化の要件定義)から最後(運用フォロー)まで全工程にかかわることができたというのはいい経験でした」

 結局、プロジェクトのサブリーダーを務める立場になったものの、次の転職を考え始めたという。

ネット関連の業務も経験し、大きな自信に

 エンジニアとして順風満帆な様子に見えるが、なぜ転職を考え始めたのか。「ちょうどネットバブルの時代で、インターネットのスキルを高めないと、エンジニアとして今後生き残れない時代がやってくることを自覚したからです」

 UNIX やTCP/IPのような最低限の知識を前職で身に付け、当時インターネットに特化する戦略を打ち出していた通信会社へ直接応募し、採用された。職種はネットワークエンジニア。利用者側の回線と自社の回線をつなぐ開通業務という作業を担当した。

 「機器の接続やルータの設定、コーディングのような基本的な構築作業まですべてやりました。現場に戻った感じでしたね」。1年後、利用者ごとのソリューション提供やサービス提案を行うセールスサポートに異動した。いわゆるセールスエンジニアだ。

 「最近の利用者には技術知識の豊富な人が多く、そのニーズも多様化しています。そうした声に応えるのは大変でしたけど、楽しかったですね」。結局、この会社の在籍期間は約2年半。その間で最もやりがいを感じたのは、インターネットのバックボーンに関する知識と経験が身に付いたことだという。

 また、ネットワーク回線の提供だけでなく、ホスティングサービスやコンテンツデリバリーの仕組みを手掛けたことは大きな自信になったようだ。

自分の得意な技術力が通用するか不安に

 青山氏はインターネットの新しいサービスなどにも携わりながらも、3社目の会社を辞めようと決意。その理由は、事業内容が変化したことだという。

 「インターネット関連の通信会社はどこでもそうですが、その主力事業を絶えず変化させています。当時在籍していた通信会社も同様で、自分が得意としていたバックボーンに関する知識や技術がこの先に役立つのか、不安になり始めました」

 よくいわれることだが、新しい技術を常にキャッチアップしていくのは、エンジニアにとって大変なことだ。その時々の新しい技術を身に付けてもすぐに陳腐化して古くなってしまうのは仕方のないこととはいえ、絶えず、その不安感と闘いながら技術の研さんにまい進する。それほどまでに技術の進歩は速い。

 そんなとき、自分のキャリアを振り返って“キャリアの棚卸し”をすることは有意義な作業だ。青山氏の場合は、自社の情報システムを作りたいという初心に立ち返った。それまで2回の転職では、いずれも直接応募で転職していたが、3回目の転職活動では初めて人材紹介会社を利用しようと思い立ち、@ITジョブエージェントに登録した。

3度目の転職は人材紹介会社を活用

 「それまでインターネットで転職活動できることすら知りませんでした。いろいろ調べた結果、人材紹介会社を利用した方が効率のいい転職活動ができると思ったのです。ITエキスパートに特化している@ITジョブエージェントを選びました」と青山氏はいう。

 人材紹介会社に出した条件は、通信業界で自社のシステム構築に携われること。転職活動はスムーズに進行し、携帯電話の通信キャリアに決まった。この4社目の会社が現在の職場である。仕事内容は、これまでの経験を生かし、複数のプロジェクト全体を円滑に動かすポジションだという。

 「今度は、実際に自分で細かい仕様に携わることはなく、プロジェクト間の窓口、調整役です。また、社内の各部署とプロジェクトの橋渡しをしています。社内情報を共有化したり、課題管理したりするのが仕事です」

 ある程度システム全体を把握していないとできない役回りなので、いままでのキャリアにピッタリの仕事といえる。「携帯電話の通信キャリアに必要なシステムの全体像は2社目の経験で把握していますし、複数部署間の調整は3社目のセールスサポートの経験が生きています」

自分のスキルレベルとやりたいことを明確にする

 転職回数は、転職が日常化したいまでさえ、会社の人事担当者によって見方が分かれる。よって面接では、「なぜ、うちの会社に入社したいのか。どんな仕事をしたいのか」と執拗(しつよう)に聞かれる。その部分を明確に説明できなければマイナス要因にもなりかねない。

 青山氏はその点をクリアしてきたのだ。現在の会社の面接ではどう答えたのだろうか。

 「顧客に対してセールスサポートという形で接してきたので、顧客のニーズやどういうソリューションを提供したらいいのかを技術の視点から理解できる。情報システム部門の中でその経験を生かせる立場、プロジェクト内の旗振り役みたいなことがしたい。そんなことを面接官にいいました」

 こうして転職経験から得たすべてのスキルをその会社でどう生かせるかを明確化することに成功した。これは文系、理系、年齢、職種を問わず、転職を希望する人はぜひ学びたいポイントだ。

 青山氏は、自分のことをいいかげんな性格だと謙そんする。確かに先々を見越して転職してきたというよりも、その時々の「やりたい仕事に専念」して忠実にキャリアを積んできた。しかし、いまの職務には、いままで蓄積してきたスキルや経験が見事に生きている。「やりたい仕事を忠実に行う」というのも1つの自分戦略のあり方かも知れない。

担当コンサルタントからのひと言
 青山さんの場合、前職のネットワーク関連のプリセールスではなく、事業会社の社内システム企画職が自分の適性に合っていると明確に自己分析していましたので、キャリアビジョンの方向性を特にアドバイスすることはありませんでした。面接時の注意点(現職の不満と誤解されるようないい方をしないなど)をアドバイスした程度です。

 いまの会社を紹介したのは、前々職と同業の通信会社なので、いままでの経験が生かせるうえ、転職先企業にとっても即戦力になると判断されるだろうと考えたためです。さらに青山さんの場合、前々職の情報システム企画職以外に、システム開発エンジニアを経験していることで、ユーザー視点だけでなく、開発者視点の両方を持っていることも大きな評価につながったと思います。

 面接を通過するためのテクニックとして、「模範解答」をしたわけではなく、日々の業務に高い意識を持って取り組んでいたことが内定・採用につながったのではないでしょうか。


キャリアデザインセンター
人材紹介事業部 コンサルタント 山田理人氏

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