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〜自分戦略研究所 転職者インタビュー〜

転職。決断のとき

第17回 下流工程に見切りをつけて「社内SE」に

横山渉
2004/8/4

 スキルを上げるため、キャリアを磨くため、給料を上げるため――。エンジニアはさまざまな理由で転職し、新しい舞台で活躍する。では、転職の決断をするのはいつなのか? そしてその決断に至った理由とは何だろうか? その決断のときを、今回は@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに尋ねた。

今回の転職者:本山恵美氏(仮名・28歳)
プロフィール6年間在籍した運輸関連会社のSEから自動車メーカーの社内情報システム部門に転職。転職活動では「ユーザーに近い立場でシステム提案できる仕事」にこだわり、現在は「社内SE」としてデータベースマーケティングの新システムを立ち上げ準備中だ。

■文学部卒業後、技術者の世界へ

 理系出身の方がエンジニアには有利――私たちは先入観でそう思い込んでいないだろうか。しかし、実際は文系出身者が多く、かなり多くのSEは就職後にITスキルを身に付けている。

 就職氷河期だった10年近くもの間、SEやプログラマには求人があり、文系出身者も大量に採用されてきた背景がある。ただ、文系出身者といっても、子供の頃から趣味でコンピュータいじりに親しんでいたというケースは多い。

 しかし、このたび希望通りの転職を実現した本山恵美さん(仮名・28歳)は文学部出身であり、そうした「よくあるパターン」ではないうえに、まだまだ少数派の女性ITエンジニアだ。彼女のキャリアアップストーリーは、IT業界で自分のキャリアについて悩む「文系出身エンジニア」にとって大いに励みになる事例かもしれない。

■SEの仕事が分からず、ゼロからのスタート

 「いろいろ受けた中で何となくフィーリングが合った会社でした。面接でやりたい仕事を聞かれても、その当時はあいまいな返事しかできませんでした」

 大学卒業後、特にやりたいことが決まらないまま就職活動をしていた本山さんは、大手運輸関連企業の子会社に入社した。そこは、親会社のシステム開発や運用を全面的に請け負う会社で、顧客管理システムの開発を担当している部署に配属された。

 ただ、SEという職種は知っていても、仕事内容は入社して説明を聞くまで詳しく知らなかった。まさしくゼロからのスタートだ。研修らしい研修もないまま、COBOLでプログラムを組むことから始まった。

 「スタートは断然、理系出身者が有利でした。私はアルゴリズムの考え方すらまったく分かりませんでしたから」

 仕事は完全にOJTで進められ、理系出身者に追いつこうと必死に努力し、自宅では本やWebサイトで勉強し続けた。入社後1カ月くらいは「SEは自分にあってなかったかな」と思うこともしばしば。ただ、手も足も出ないという状況ではなかった。

 「プログラムを組んだりするのは不思議とイヤじゃなかった。少しずつやれば何とかなるのかなと。プログラミングは、問題解決のプロセスを作る作業でもあるので、そう考えると文系も理系もないのかなと思ったからです。ただ、理系の人と違ってベースの知識がないので、いまでもインフラ部分の知識が弱いと感じる時もあります」

 ITに対して何らの専門知識を持たなかった本山さんがSEを続けられたのは、実はロジカルに物事を考えることに抵抗がなかったからなのかもしれない。

■ユーザーの求めるシステムを実現する

 エンジニアとしてやっていけそうだという自信がついたのは、入社して3カ月程。「システムがどのように動いているのかは意識せず、とにかくロジックを組んで、プログラムを仕上たとき、充実感を感じたのです。最初の1本を組むまでは大変でしたけど……」

 また、先輩SEと同行してユーザーの話を聞く機会があったのは、モチベーションアップにも役立ったという。話を聞きながら作業を進めることで、どういう業務でシステムが使われるのかが少しずつ理解できるようになったからだ。同時に、SEという仕事が自分なりに見え始めたのもこの頃からだった。

 「SEはユーザーが求めていることをシステムを活用して、どうやって解決するかを考える仕事なんだなと思うようになりました。SEという仕事をいっそう面白く感じるようになりました」

 1年目の後半からはプログラミングだけでなく、内部設計も担当するようになり、2年目の後半からは要件定義にも携わるようになった。仕事が軌道に乗り、気持ちにも余裕が生まれ、資格取得の勉強も始めた。2年目には基本情報技術者(旧第2種情報処理)を取得。これも自信をつけるための手段としては役立った。そして、顧客情報システムというデータベース関連のシステムを担当していたこともあり、4年目にはORACLE Silver Fellowを取得した。

■上流工程への意欲はカラ回り……

 転職を考え始めたのは入社5年目の頃だ。理由は2つある。1つは、もっと顧客に近いところでシステム提案をしていきたいというもの。「ユーザーの求めるシステムを構築することがSEである自分の喜び」である本山さんならではの理由だ。

 「前の会社もソリューション提供型の会社を目指していたので前職場に留まってもできそうな気はしました。でも、戦略立案よりも下流のフェイズで仕事をしていたので、やれることには限界があるとも思いましたし……。1年くらいずっと悩んでいました」

 もう1つの理由は、ジョブローテーションができないほど担当者への依存度が高い体制に疑問を感じていたことである。自分のキャリアの幅を広げるためにさまざまなことを学びたいと思っていても、、日々の業務に追われて勉強する時間を作ることもできない状況が続いていた。

 「この部分はAさん、あの部分はBさんというように、担当者がいないと組織が動かないようになっていました。このまま留まってもさらに忙しくなるだけで、自分のためにはならないと思い始めたのです。入社以来ずっと同じシステムに携わっていたので、ほかのシステムでも自分の力を試したいとも思ったのです」

■「社内SE」というキャリアを考える

 エンジニアには2通りのタイプがいるとよくいわれる。技術志向でひたすら技術の研さんを積んでいきたいと考えるタイプと、業務志向でできるだけ上流の仕事をしたいと考えるタイプ。本山さんは典型的に後者のタイプといえるだろう。

 「1つのことを極めるよりも仕事の幅を拡げたい」と語る本山さんは、今年始めに@ITジョブエージェントに登録した。人材紹介会社のエージェントには「ユーザーに近いところでシステム提案がしたい」という希望を説明した。

 当初コンサルタントのような仕事をイメージしていたというが、現実にはなかなか難しく、エージェントからは「社内SE」という選択もあると提案された。

 「社内の情報システム部門は必ずしもシステム開発経験者が担当しているわけでもありません。最近は開発経験者を採用するケースが増えていると教えてもらいました。社内SEは、これまで自分が一緒に仕事をしてきた人をイメージすることができ、新たな仕事ができそうだということでお願いしました」

 エージェントからすぐに転職先として2社をオファーされ、結局そのうちの1社である大手自動車メーカーの社内SEへの転職が決まった。

■データベースマーケティングで営業に貢献

 本山さんが転職した自動車メーカーの情報システム部門は、生産管理・物流・購買・経理など、社内業務の情報システムを統括している部署だ。その中で、営業・販売系システムの開発部門に配属され、新しい顧客管理システム構築のプロジェクトを担当している。
 
 「販売会社やコールセンター、インターネットなどさまざまなシーンで集められる顧客情報を一元化して、それを販売戦略に生かすというもの。一エンジニアの枠を超え、キャリアを広げる面でも、とても可能性のある仕事だと思います」

 前職で顧客管理システムに携わりつつ、データベースマーケティングに興味を持ち始めたということからも、今回の転職はまさしく希望に近い転職だったといえる。前職と大きく変わった点は、コストに対する考え方だという。

 「エンジニア時代は決められた予算の中でどういうシステム開発が可能かという発想でした。しかし、現職では社内で必要とされるシステム開発のために、どうやって予算を獲得するかという視点で働く点が、大きく変わったところですね」

 また、これまでは「システム導入によって業務がどう変わるか」など、業務の効率性を提案していたのに対し、いまは「新システムを提案・構築することで、どれだけ営業や販売面に貢献できるのか」ということを考えるようになった。

 ただ、技術的にはまだまだ勉強しなければいけないことが多いと実感している。

 「アプリケーションの開発をメインに経験を積んできましたが、Webやネットワーク、インフラ系の知識に関してはまだまだこれからです。実際の開発はアウトソーシングですが、取りまとめ役の私が知らないと話になりませんからね」

 初めての転職経験だったが、成功した最大の理由としては、やりたい仕事をイメージしていたということだろう。エンジニアとしてのスキルをマーケティングに生かして営業や販売に貢献しようという発想は、実は文系出身エンジニアならではなのかもしれない。

担当コンサルタントからのひと言
 本山さんの場合、ユーザー系SIerの経験が長く、面談時にはコンサルティング方面への仕事に、漠然とした希望を持っていました。しかし、必ずしもコンサルタントをやりたいというものでもありませんでした。

 その一方で、現在の立場にジレンマをお持ちのようでした。それは社内のIT部門の仕事と、SIerの仕事といった、2つの立場で働くことが多かったからです。
そこで社内のIT戦略の企画・立案をする大手企業の社内IT部門のポジションなどをいくつか紹介しました。

 これまで、親会社の社内IT部門とも密接に仕事をしてきているため、仕事の進め方も理解しており、「こういう投資をすれば効率的になる」という意見もお持ちでした。面接では、その意見をアピールしたほうがいいと説明しました。本山さんの経験がマッチした点もありますが、ベンダ、ユーザー双方の視点を持っていることも大きな評価につながったと思います。


 エンジニア時代のスキルや知識を生かして、さらに飛躍していただきたいと願っています。

キャリアデザインセンター 人材紹介事業部 野村健次

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