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〜自分戦略研究所 転職者インタビュー〜
転職。決断のとき

第20回 自分に合った環境だからキャリアが磨ける

岩崎史絵
2004/12/10


転職が当たり前の時代になった。それでも、転職を決断するのは容易なことではない。スキルを上げるため、キャリアを磨くため、これまでと異なる職種にチャレンジしたり、給料アップを狙ったり――。多くのエンジニアが知りたいのは、転職で思ったとおり仕事ができた、給料が上がった、といったことではなく、転職に至る思考プロセスや決断の理由かもしれない。本連載では、主に@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに、転職の決断について尋ねた。


今回の転職者:工藤豊さん(仮名・27歳)
プロフィール■工学系の大学卒業後、2000年にエンジニアの派遣会社に入社。初めの1年間はJavaによる基幹システムの開発を担当、その後3年間は監視システムの構築に携わった。「顧客にシステムを納めるのではなく、これまでの技術スキルとヒューマンスキルを生かし、新サービスを展開しているネット企業のシステムに最後までかかわりたい」との思いが募り、2004年4月から転職活動を開始。現在、ネットショッピングサービスを手掛けるベンチャー企業で、サービス用システムの構築・機能追加や社内LANの整備を担当している。

「こういう仕事がしたい」から始まるキャリアアップ

 一口に「キャリアアップ」とはいうものの、具体的に何をどうすればいいのか分からない――特に20代の若手エンジニアなら、誰もが1度はこうした思いにとらわれることだろう。「転職すなわちキャリアアップ」とは限らないし、さまざまな資格を取得したからといってキャリアに直結するわけではない。そうかといって、会社の中で役職を目指すのはちょっと違う。プロジェクトマネージャやアーキテクトを目指すという手も考えられるが、マネージャや設計担当をやりたいのでもない。

 今回お話をうかがった工藤豊さん(仮名・27歳)は、プロジェクトマネージャやアーキテクトなど具体的な職種を目指したのではなく、自分の適性と「やりたいこと」を突き詰めていった結果、スキルアップとキャリアアップを実現した成功ケースだ。「そんなに順調ではないんですよ」と語る工藤さんだが、これまでの経歴を見ると、確実に一歩一歩階段を上っているのが分かる。

周囲とコミュニケーションを取る仕事がしたい

 「大学受験のときから、漠然とIT業界で働くという意識がありました」と工藤さんはいう。それもそのはず、工藤さんが卒業した学校は九州にある工学系の大学。昔からコンピュータに興味があり、理数系も得意だった。

 そして工藤さんが実際に専攻したのは情報工学。授業ではC言語などのプログラム実習やコンピュータの仕組みを学んだ。卒業後も、専門知識を生かしてIT企業に就職した。九州にあるエンジニアの派遣会社だ。「九州で生まれ育ったので、就職後も当然九州で働くつもりでした」(工藤さん)

 ところが現実は、就職して2カ月を過ぎるころには、東京勤務になっていた。理由はなぜか。九州で仕事がなかったので異動になったからだ。

 「開発系のエンジニアということで、ある大手システムインテグレータ(SI)ベンダに出向し、開発チームに所属していたのですが、仕事柄どうしてもチームメンバーとしか交流がないのが悩みでした。もっとプロジェクト内のほかのチームやメンバーとコミュニケーションを取る仕事がしたいと思ったのです」(工藤さん)

 工藤さん自身は非常に明るくハキハキと話し、会話のキャッチボールを好むタイプ。画面にずっと向かっているタイプのエンジニアとは少し違う。しかし開発チームでは、5人なら5人と決まったメンバー間で仕事を進めるだけで、ほかのチームやメンバーとの交流はほとんどない。「大学でもプログラミングは実習しましたが、こうした作業ではなく、人とのコミュニケーションがキモとなる仕事がしたかったのです」(工藤さん)という。結局、開発チームには1年所属することになるが、2001年からは念願かなって監視システムの開発を担当することになった。

 同じ開発でも、監視システムの開発はコーディング作業とはまったく別物。工藤さんが担当するプロジェクトでは、某国内大手SI会社が提供する運用管理ツールをベースとすることが前提になっていた。コーディング作業とは違う形でプロジェクトが進められるし、何より監視システムなので、サーバやネットワークの担当者との打ち合わせも必要になる。当初の“プロジェクト内のほかのメンバーと積極的にコミュニケーションを取る仕事がしたい”という目的は達せられたわけだ。

 さらにもう1つ、大きな経験も積むことができた。「東京で仕事をするようになり、世界有数のグローバル企業や中央官庁のシステム開発に携わることができました。九州にいたら、こうしたチャンスに巡り合う可能性は少なかったでしょう。その意味では、東京で仕事ができたことは私にとって大きなポイントでした」(工藤さん)。

システムを“作って納める”だけの仕事に疑問が

 移動先で順調に活躍できたが、2年3年とたつうちに、新たな思いが頭をもたげてきた。確かに、プロジェクト内でコミュニケーションを取りながら進める仕事ではある。だが当時の仕事内容を一言でいえば「システムを作って、リリースして、納品」までが1サイクルで、これを延々と繰り返す日々だった。こうした中、出てきた疑問が2つある。

 1つは“作りっぱなし”という仕事内容について。「表現は悪いのですが、とにかくリリースして納品したらおしまいで、すぐに“次”というサイクルに、少し嫌気が差してきたんです。離れていってしまうのではなく、最後までかかわりたいという思いが出てきました」(工藤さん)。当時開発していたのは、出向先のSI企業が受注した顧客用のシステムで、社内で使うものではない。要件を満たし、開発が終われば離れていってしまうものだった。

 もう1つ、疑問としてわき上がったのが自分の技術力についてだ。先にも述べたが、監視システムのベースとなるのは、国内の某大手SI企業が提供している運用管理ツールを使うことが前提条件。プロジェクトをこなすうちに、当然ツールについては詳しくなった。だが「あまりにも製品依存に過ぎるため、外で通用する技術だとは思えませんでした」(工藤さん)という。

 社内ではそのツールに精通する人材が少なかったため、優遇されていたのも事実。一方でそれは、「案件が続く限り、同じ仕事を担当しなければならない」ということを意味した。「仕事内容に加え、技術スキルについても『このままでいいのか』という疑問が募りました。社内では重宝がられていたので、今度は異動願いが通らない可能性も高い。ならば転職、という考えに至ったのです」(工藤さん)

 ちなみに、最後は開発作業に従事するのではなく、客先との打ち合わせや資料作りに追われるようになったという工藤さん。転職を決意した背景には、「もう少し実作業に携わりたい」という思いもあったようだ。

自社でシステムを開発・運用しているネット企業がターゲット

 2004年4月、転職を決意した工藤さんは、早速@ITジョブ・エージェントに登録した。「@ITは、Webサイトが立ち上がった当初からよく読んでおり、まずはここに登録しよう、と思いました」(工藤さん)という。

 ジョブ・エージェントに登録後、いくつかの転職エージェントから接触があった。最終的にパソナキャレント経由で転職サービスを受けることになったのだが、決め手は「取りあえずお会いしましょう」というコンサルタントの一言にあった。ほかのエージェントは、「まず履歴書を送ってほしい」といってきたのに対し、「顔を見て話せるということに、信頼性を感じました」(工藤さん)とのことだ。

 そこで工藤さんは、自分の興味対象ややりたいことを総合して考え、ネット系企業をターゲットにすることに決めた。自社でITを使ったサービスを持ち、常にそれを改善しているためだ。ネット系ならWebやネットワーク周りの知識も身に付けられるし、システムを最後まで保守・運用する義務もある。“作りっぱなし”という仕事内容や技術力に疑問を感じていた工藤さんにぴったりだった。

 エージェントから転職先を紹介してもらい、6社の面接を受け、最終的に決めたのが現在所属しているネットショッピングの企業だった。決め手は人数が約40人とアットホームで、伸び盛りの企業だったこと。ネット系企業の中には、大企業顔負けの社員数を抱える大所帯の企業もある。そうした企業は、すでに体制が出来上がっている。工藤さんには、身に付けたコミュニケーション力を生かし、“みんなで作り上げていく”伸び盛りの企業で活躍したいという思いもあった「落ちた会社もありますが、たとえ全部内定をいただいていても、やはりいまの企業を選んだと思います」(工藤さん)

SEの限界は見えている?

 新しい会社に入社したのは2004年の7月のことだ。新しい企業なので、すべて自分たちでやらなければいけない。例えば工藤さんが所属するIT担当部署は12人くらいスタッフがいるが、そのスタッフ全員で、自社システムの構築、運用、機能の追加、自社内LANの整備などすべてを担当する。大まかに役割はあるものの、まだそこまできっちりした体制にはなっていない。そこはこれから作り上げていくというわけだ。

 また社内には、システムエンジニア(SE)だけでなくコールセンターの部隊や商品紹介Webを担当するライターもいる。こうした多種多様なスタッフが集まっていることも大きな魅力の1つ。これからは、社内のあらゆる関係者の声を吸い上げ、新しいサービスを展開するシステムを作っていくことが仕事になる。これまで培ってきたコミュニケーション力が発揮できる場だ。「同時に、新しい技術力も磨いていきたいですね。2年後には、『取りあえず工藤に聞け』といわれるようになりたいです」(工藤さん)

 ベンチャー企業に転職する人は起業家志望が多いといわれている。工藤さんは「当然、そういう可能性も視野に入れています」と明るく答える。

 「SEの限界・頂点はある程度見えていると思います。想像ですが、年収でいえば1000万円クラス。もちろん収入だけではないとは思います。ただ、将来の自分の仕事として、SEという枠の中だけで考えるのではなく、技術力やヒューマンスキルなど、あらゆるスキルを活用して次のステップを目指したいと思っています」(工藤さん)。

 キャリアで悩むことはない。自分の適性とやりたいことを考えていけば、道はもっと広がるものだ。

担当コンサルタントからのひと言
 工藤さんの第一印象は、エンジニアらしくないなという感じでした。SE(システムエンジニア)/PG(プログラマ)の仕事はある意味、内向的な仕事が多いのですが、彼は営業マンのようによく話される方で、表情はとても豊かな方でした。

 そんな工藤さんの転職のテーマは、次の2点だったと思います。

(1)自分のキャラクターに合った仕事に就くこと
(2)ほかの会社にいっても通用する技術力を身に付けること

 
(1)は開発者としてのキャリアパスだけでなく、さまざまな部門間の調整役などの業務を経験して技術以外のビジネススキルを高めていってほしいと思い、事業会社の情報システム部門を推薦しました。事業会社の中でもネット系の企業であればインターネット関連の技術を身に付けられて、その結果(2)もクリアできます。そこで、ネットベンチャーを何件かご紹介しました。

 
ネットベンチャーでは単に技術を追求するだけではなく、自社のサービスを向上させていくためにITをどう使っていくかを考えられるようなサービスマインドを持った人が求められると思います。そういう意味でも工藤さんは採用側から見てもナイスマッチだったと思います。

 
工藤さんには技術以外のビジネススキルを高めていって付加価値の高い人材になってほしいと思います。
パソナキャレント 山口孝之氏


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