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〜自分戦略研究所 転職者インタビュー〜
転職。決断のとき

第22回 流されるうちに見えてきたものは?

岩崎史絵
2005/2/9


転職が当たり前の時代になった。それでも、転職を決断するのは容易なことではない。スキルを上げるため、キャリアを磨くため、これまでと異なる職種にチャレンジしたり、給料アップを狙ったり――。多くのエンジニアが知りたいのは、転職で思ったとおり仕事ができた、給料が上がった、といったことではなく、転職に至る思考プロセスや決断の理由かもしれない。本連載では、主に@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに、転職の決断について尋ねた。


今回の転職者:松浦賢一さん(仮名・25歳)
プロフィール■専門学校のマルチメディア科を卒業後、通信機器・ハードウェアメーカー系列のシステム開発会社に入社。専門学校では「Macromedia Dreamweaver」や「Macromedia Flash」を中心としたWebコンテンツ制作技術を修得、そのほかCやJavaなどを履修。入社後はJavaを使ったWeb系業務アプリケーションの開発を担当。実装工程の仕事を4年間経験するうち、「要件定義や提案を担当する上流工程へシフトしたい」という思いが募る。だが勤務先の開発会社は、親会社である通信機器・ハードウェアメーカーの下請けという位置付けだったため転職を決意。@ITジョブエージェントを通じ、2004年7月にグルージェントへエンジニアとして転職。

友人に誘われるまま、コンピュータの専門学校へ

 「高校を卒業するとき、仲のいい友人に誘われてコンピュータの専門学校へ。それがこの業界に入るきっかけでした」と松浦賢一さん(仮名・25歳)は屈託なく話す。幼いころからコンピュータやプログラミングが好きだったという技術者とは違う。得意科目も国語・社会・理科で、どちらかというと文系志向だった。

 専門学校ではマルチメディア学科に所属。これも「バリバリの技術系とは違う専攻に興味を持ったので」(松浦さん)との理由からだ。この学科はWeb系とデジタルミュージック系に分かれており、松浦さんはWeb系に進んだ。卒業時には、「Macromedia Dreamweaver」と「Macromedia Flash」を使ったWebコンテンツの制作に取り組んだそうだ。

 ところが、卒業後に進んだのはシステム開発会社。「クリエイティブ系よりも、専門学校で学んだプログラミング技術を生かした仕事の方に適性があると思いました」(松浦さん)。就職活動を行った2000年はちょうどITバブルの時期に当たり、7月にはあるメーカー系列のシステム開発会社への就職が決まった。

 「特に大きなきっかけはなく、本当に流されるままこの業界に入りました。それでも仕事をするうちに、『こういう方向ではない』『こういう仕事がしたい』という道筋が見えてきたのです。それが転職の動機でした」(松浦さん)

学校で学んだことの意味をOJTで知る

 専門学校を卒業後、就職したシステム開発会社は、人間関係では何の問題もなかったという。2001年4月に入社した仲間は、松浦さんを含め5人。親会社である通信機器・ハードウェアメーカーの新卒社員と一緒に、2カ月間の新人研修でビジネスマナーなどを叩き込まれた。

 その後、OJT(On the Job Training)の場としてWeb系の業務アプリケーションを開発する部署に仮配属された。OJT中にはJavaやPHPで簡単なイントラネット用アプリケーションを構築したという。「実はそのとき初めて、専門学校の実習でやったのがJavaだと分かったのです。学校ではインターネット技術の1つとして教えられたので、Javaプログラミングということは意識しませんでした。OJTで初めて、『あれはJavaだったのか』と気が付いた次第です」と松浦さんは笑いながら語る。

 それでも仕事を進めるうちに、システム開発が好きになっている自分に気が付いた。OJTで仮配属されたまま、Web系業務システムの開発担当者として、親会社系列の関連会社のイントラネット構築に携わる。そこで興味を持ったのが、オブジェクト指向の考え方やJ2EEについてだ。自分で率先して情報収集に努めた。流されてこの業界に入ったとはいうものの、実際に仕事を始めてみると、技術や開発の面白さを発見し続ける毎日だったという。

上流工程への興味が生まれる

 エンジニアの面白さが分かってきた一方、会社の仕事に対しては不満を抱き始めた。その原因は2つある。

 1つ目は、仕様の決定や要件定義といった上流工程に携われないこと。その工程は主に親会社の営業SEが担当し、松浦さんの会社はいわば下請けだった。しかも担当していたクライアントが大手システムインテグレータ(SI)だったため、仕様や要件定義は社内で済ませてしまう。上流工程に行きたいとは思っても、その会社にいる限り、そのチャンスはほとんど見込めなかったという。

 2つ目は、上記とも関係するが、社内に新しい技術に対する知識欲や学習意欲が欠けている点だった。「下請けなので、適用技術についてもいわれたとおりにこなすだけ。新しい技術を活用した積極的な提案など、まったくできない状態でした」(松浦さん)

 上流工程でキャリアを積みたい、技術的にもっと自分を高めてくれる環境が欲しい。そう思った松浦さんは、2003年秋から人材紹介会社を使っての転職活動を開始した。月200時間以上の残業が続いていた時期でもあり、「このままでは倒れる」という危機意識にも後押しされたとのことだ。

長期プランはあったが中期プランがない

 転職に当たって松浦さんが掲げた条件は3つ。まず、上流工程に携われる会社であること。次に、開発業務からは離れたくなかったので、コンサルティングだけを請け負う会社は対象から外すこと。最後に、「将来的には起業してみたい」という意識を持っていたので、社長の行動や考え方が見える小規模な会社であること。

 いざ転職活動を始めた松浦さんは、あることに気付いた。面接で「何をやりたいか」を問われると、明確に答えられないのだ。

 「将来に関しては、上流工程をやりたい、起業したいという目標があったのですが、1年後・3年後という中期プランがなかったのです。そのため、どういう仕事をこれまでやってきて、それをどう生かし、どんな方向に行きたいかという絵がきちんと描けていませんでした」(松浦さん)

 先が見えない中で、2003年末に@ITジョブエージェントに登録した。技術情報収集のため、@ITのコンテンツを時々閲覧していたこともあり、@ITジョブエージェントの利用を思い付いたという。「登録後、年末年始の休暇中にじっくり考え、自分が本当にやりたいことを見つけました。そして心機一転、年明けから気合を入れて転職活動を再開したのです」(松浦さん)

 松浦さんが目指したのは、「技術が分かるプロジェクトマネージャ」。先々には起業したいという目標はあるが、システム開発からは離れたくない。とはいえ、開発工程だけを請け負っていたのでは将来的に先細りが予想されるので、技術と上流工程、それにマネジメント力を強化して、自分のコアコンピタンスを確立することが重要だと考えたのだ。方向性が見えたところで、@ITジョブエージェントと大手人材紹介会社のサービスを併用し、転職先を絞り込んでいった。

収入は下がったが、モチベーションは向上

 @ITジョブエージェントを介して、キャリアデザインセンターのコンサルタントから、現在の勤務先であるグルージェントを紹介されたのは2004年5月のこと。松浦さんの印象は「栗原社長をはじめ、雑誌やメディアに登場する有名な技術者がそろっている会社」で、わくわくしながら面接を受けた。

 前年までとは異なり、自分のやりたいことや中・長期プランが固まっていることが自信につながり、楽しく面接を受けることができたという。「面接を受けてみて、技術に対して誇りを持っている会社だと強く感じました」(松浦さん)とのことで、松浦さん自身も負けじと、自分がどれだけ技術力があるかを積極的にアピールした。「入社してみて、グルージェントの技術者を前によくあんな大きなことをいえたな、と赤面しました」(松浦さん)と苦笑いするが、強気の姿勢が功を奏したのか内定をもらい、2004年7月に入社した。

 今回はポテンシャル重視での募集だった。松浦さんは「入社してみて技術力の高さに圧倒されました」と語る。例えば新しい技術を検証し、新規プロジェクトに採用してみるというグルージェントの姿勢もその1つ。仮に何か不都合があれば、自分でフレームワークを組み直すくらいのことはやってしまう。新技術を適用する力や知識欲は、以前の会社にはなかったものだという。

 もう1つは人脈だ。例えば栗原社長が、国産のオープンソースJava軽量コンテナ「Seasar2」の開発者とユーザーのコミュニティであるThe Seasar Projectと深いかかわりを持っていること。新しく技術を作り上げていくという取り組みも、決して前の会社では経験できなかったものだ。

 仕事内容も、単なる実装作業ではなく、ビジネスの目的からシステムへブレイクダウンして開発を進めるというスタイルを取っている。松浦さんも入社して半年未満ながら、そうした上流工程へ実際に触れる場面が増えているそうだ。

 「グルージェントには『無理な残業を重ねなければ間に合わないというのはプロではない』という考え方があるので、残業は減り、平日の就業後や休日にはきちんと自分の時間が取れるようになりました。年俸制になったことで、残業代が出ていた前の会社と比べ収入は減りましたが、仕事内容や刺激という面からモチベーションはずっと上がっています」と松浦さんはうれしそうに語る。

 流されてこの業界に入った中で、仕事の面白さにのめり込み、新たなステップを踏み出した松浦さんは、今後も積極的に「興味のあること・面白いこと」を追求しながらキャリアを積んでいくだろう。

担当コンサルタントからのひと言
 松浦氏は、登録にいらしたときには自分で転職活動を始めており、ある程度目指す方向性は固まっていました。方向性の理由や裏づけはしっかりしていたので、それに見合った求人を探してお知らせするということに集中してお手伝いしました。

 松浦氏は非常に思慮深く、転職市場についてもよく理解されている方でした。目指す方向の求人を見つけることができたので、よかったと喜んでいます。

 実際には、ここまでしっかりと考えがまとまっている方は少ないです。松浦氏には、若くて経験がまだ浅いながら「ぜひ会ってみてください」と企業側に後押しできる多くの要素があったのです。エージェントにそう感じさせることで書類通過率も高くなります。その点も順調に転職できた要因の1つかと思います。

キャリアデザインセンター 担当コンサルタント





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