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〜自分戦略研究所 転職者インタビュー〜
転職。決断のとき

第25回 必要なのは「体系立ったスキル」

岩崎史絵
2005/5/26


転職が当たり前の時代になった。それでも、転職を決断するのは容易なことではない。スキルを上げるため、キャリアを磨くため、これまでと異なる職種にチャレンジしたり、給料アップを狙ったり――。多くのエンジニアが知りたいのは、転職で思ったとおり仕事ができた、給料が上がった、といったことではなく、転職に至る思考プロセスや決断の理由かもしれない。本連載では、主に@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに、転職の決断について尋ねた。


今回の転職者:加藤優子さん(仮名・33歳)
大学で言語学を専攻後、「手に職を付け、一生仕事を続けたい」という一心からIT業界への就職活動をし、システム開発会社にエンジニアとして5年間在籍。その後、英国のソフトウェア会社にインターンとして勤務。4年間を英国で過ごし、2004年9月に帰国。コンサルタントとしての新たなキャリアの展開を図り、国内コンサルティング企業に転職。

高いスキルは本当に得か?

 日本では一般的に、春と秋に通信教育講座や各種専門学校の入学希望者が増えるという。特に春は会社や学校に新人がやってくる季節。社会人として経験が長くなればこそ、「新しいスキルや専門性を身に付けたい」という思いを抱く人も多いだろう。こうした思いを触発するのが、ちょうど春と秋というわけだ。

 実際、ビジネススキルが高くなれば、それだけ自分の価値を高めることができる。

 今回の転職者である加藤優子さん(仮名・33歳)は「手に職を付け、一生働きたい」と決めて就職活動を開始、就職後もさらなる高いスキルを目指し、努力を重ねてきた。“スキル”とは、具体的には技術力であり、ベーシックなビジネススキルであり、英語だった。

 ただし、「スキルを身に付ける=即キャリアアップ」とならないのが仕事の難しいところでもある。はたから見れば非常に高いスキルを持つ加藤さんだが、「転職活動に当たっては、なかなかうまくいかないこともありました」という。

仕事に対する意識は昔から高かった

 加藤さんの就職活動は10年前にさかのぼる。バブル崩壊の煽りを受けて不況にあえぐ企業が、軒並み採用を見送ったときでもある。そんな中、大学で言語学を専攻していた加藤さんは「一生仕事をしたい」という希望を持っていた。

 一生仕事をするのであれば、誰もができる仕事をするのではなく、高い職能が必要になる仕事がいい。加藤さんが選んだのはIT業界だった。高い技術力を身に付ければ、それが自分の価値になる。

 加藤さんが就職したのは、メーカーと独立系システムインテグレータが合弁でつくったシステム開発会社だった。ちょうどダウンサイジングにわいていた時期で、加藤さんはシステムエンジニアとしてクライアント/サーバシステムや、Windows系の業務システムの提案・開発・運用を担当することになった。「アットホームな会社で、仕事の幅も広く、自由な雰囲気でした。裁量労働制だったので、自分のペースで仕事ができるのも魅力でしたし、成果主義を採用しており、技術を磨くのに適していると思いました」(加藤さん)

 当時の会社は、社員のスキルアップのための支援も惜しまなかった。基本情報技術者試験や簿記など、業務上必要となる資格や知識について勉強する時間もあったし、資格を取得すれば基本給に手当が付いた。

 こうした中、加藤さんが目指したスキルの1つが英語だった。ITの最新情報のほとんどは海外から発信される。英語ができればいち早く最新の技術情報を知り、知識を高めることができる。またビジネススキルとして英語を身に付ければ、それだけキャリアの選択肢が広がることも事実だ。では、ビジネススキルとして「読む・書く・聴く」といった総合的な英語力を付けるにはどうすればいいか。加藤さんは「海外の会社に転職する」道を選んだ。

英国式の人材活用法とは

 「英語力を身に付けるなら、比較的若いうちの方がいいと考えました。また、5年間同じ会社に勤めていたので、違う環境で仕事をしたいという思いもありました。そこで海外の会社への転職活動を始めたのです」(加藤さん)

 加藤さんは、海外の会社への研修派遣を世話するエージェントの門をたたいた。希望者側と企業側の意向がマッチすると、企業はトレーニングの労働ビザを発給する。正規の労働ビザとは異なるので期間も短いし、賃金も安い。しかし海外の企業で英語力とビジネススキルを磨きたい希望者にとっては、現地で働きながらスキルアップが図れるし、企業にとっては比較的安い賃金で優秀な人材を確保できるというメリットがある。

 加藤さんが勤務地として選んだのは英国だった。というのも、米国では研修条件の垣根が低く、学生でも応募できたが、英国の場合はビジネス経験の有無が選考条件にあったからだ。「ロンドンなどの都会でなくてもいい、とにかくIT系の企業で仕事をしながら、技術力と英語力を向上させたいと考えました」(加藤さん)

 就職して5年目の冬に書類を送り、電話インタビューを受けて、オックスフォードにあるソフトウェア会社への採用が決まった。渡英を決めてからは、英会話学校にも通った。ちなみに加藤さんのご両親は「心配はしていたと思いますけれど、決めたのだから止めてもムダと思ったのか、何もいいませんでした」(加藤さん)という。

 加藤さんの新しい職場は、ちょうど日本への進出を考えていたソフトウェアベンダだった。そのため加藤さんには、設立準備中の日本支社で使用するグループウェア(Lotus Notes/Domino)のアプリケーション開発、ならびに付随する情報システムの開発、それに日本支社立ち上げに関するもろもろの仕事が割り当てられ、何度も日英間を往復した。「展示会の手伝いや、備品・回線の手配とサポートを担当しましたよ」(加藤さん)と笑いながら語る。

 当初研修期間は1年間の予定だったが、こうした活躍が評価されたのか、「翌年も引き続き契約したい」ということになった。加藤さんは一も二もなく了承。トレーニングビザでなく正規の労働ビザも下りることになった。だが2年目には、仕事内容について限界を感じ始めた。

 英国の会社では専門性を重んじるため、最初に割り振られた仕事の内容が変わることはほとんどない。加藤さんの場合、Notes/Dominoでの開発がそれに当たる。日本でシステム開発会社に勤務し、開発経験があるという専門性が買われたわけだ。つまり会社が人材やスキルを育てるということはなく、本人のプロフェッショナルとしての知識と専門性がそのまま評価される。「英国では1つの会社の中でキャリアアップを図るのではなく、転職してキャリアを磨くのが一般的なんです」(加藤さん)

 そういうことであれば、と加藤さんは英国で転職活動を開始。現地の転職エージェントを利用し、日系のIT関連企業に転職した。

英語以外に見えてきた「コンサルタント」という職種

 加藤さんが英国で転職したのには理由がある。1つは、日本での職歴も含め、7年間開発にかかわってきて、「自分は本当は開発向きの人間ではない」と認識したことだ。むしろ開発経験を生かし、今後はコンサルタントとしてキャリアを伸ばしたい。そこで注目したのが「ITコンサルティング」という仕事だ。具体的には、技術知識を生かし、システムの設計や仕組みを考えるという仕事内容になる。

 加藤さんは、英国にある日系企業にITコンサルタントとして籍を置いた。10人ほどの規模だったため、ユーザーへのヒアリングから始まり、設計から構築、プロジェクト管理まで何でもこなした。ユーザー企業も日系企業がほとんどだったが、プロジェクトではキーパーソン1人が日本人で、あとは英国人というケースが多かった。そのため「英語で交渉し、違う国のメンバーをまとめる」という能力も向上した。

 英国生活も4年を過ぎたころ、加藤さんの中に「帰国したい」という意識が芽生え始めた。単純に日本の風土が恋しくなったこともあるが、仕事内容として「開発現場より、上流を目指したい」という希望も生まれてきたためだ。英語力と開発経験、ITコンサルタントとしての経験を生かし、日本で転職活動をしようと決めた。

 こうして帰国したのが、2004年の9月のこと。10月半ばには、さっそく転職活動を開始した。自分で転職情報誌を見て応募したり、在英時から時々情報収集に訪れていた@ITジョブエージェントへ登録。コンタクトがあった人材紹介会社と連絡を取り、ワークス・アンド・アソシエイツに転職活動のサポートを依頼した。決め手となったのは、「知識と経験を生かしたアドバイスをしてくれることと、海外生活者の転職活動について知識や実績があること」(加藤さん)だという。

転職に必要なのは「体系立ったスキル」

 実際に転職活動をしてみると、いわゆる外資系の経営コンサルタントや、上流コンサルタントへの道は険しかった。加藤さん自身、経営コンサルタントを目指していたわけではないが、これまで身に付けたスキルを洗い出してみると、コンサルタントとして評価されるかどうかはきわどいところだったという。

 まず開発経験についてだが、NotesとWindows系の業務システム、それにOracle DBなど個別案件での経験はあるものの、面接時に体系立ったスキルとして訴えかけるには弱かった。加えて上流コンサルティングの経験も浅い。

 ワークス・アンド・アソシエイツのコンサルタントからのアドバイスは、「IT関連のスキル、それに海外生活で得たスキルは何かを洗い出し、この2つを体系化した方がいい。まずポイントを絞り込み、キャリアについてきちんと分析すること」というものだった。実際に加藤さんは8社ほど面接を受けたが、「英語が相当できるようなので、その方面の仕事をした方がいいのでは」といわれたこともあったという。

 2カ月間、辛抱強く転職活動を続けた結果、2社からコンサルタントとして内定通知をもらった。最終的に選んだのが、現在勤務しているコンサルティング会社だ。社員数は10名とこぢんまりしているが、幅広い内容のコンサルティング案件を扱い、まさに加藤さんの希望にぴったりだったという。さっそく2004年12月上旬から働き始めた。

 現在、加藤さんはマネージャに当たる先輩社員と二人三脚でプロジェクトを担当している。やはり開発現場で身に付けた技術知識と英語力が期待されているようだ。

 「上流コンサルタントと名乗るためには、まだまだ勉強しないといけないことが山ほどありますし、開発のプロというには片寄った経験しかしてきていない。これからは、いままでに得た経験や知識をどのように生かし、体系化していくかが勝負だと思います」と語った。

担当コンサルタントからのひと言

 加藤さんは、ご自分の目指すもの・方向を大変しっかりと持っておられました。とはいっても固いところはなく、柔軟なスタンスで広い視野を持とうという姿勢だったのを記憶しています。海外でいろいろな考え方や価値観に触れる経験をされたからなのでしょうか。

 ITコンサルタントしての実務経験があることだけでなく、より広い意味でコンサルタントとしての資質を持たれているなあ、とここそこで感じました。

 私は情報の提供役、サポート役というところだったと思います。今後のキャリアを考えるうえでの比較検討の材料、視点と軸、といった情報をなるべく多く、客観的に提供させていただくことに努めました。

 私自身も海外で働いていた時期がありましたので、加藤さんに共感する点が多々ありました。

 新しい環境での加藤さんの今後のご活躍を、陰ながら応援しております。



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