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転職。決断のとき

第28回 転職に経歴は関係ない!

岩崎史絵
2005/11/9


転職が当たり前の時代になった。それでも、転職を決断するのは容易なことではない。スキルを上げるため、キャリアを磨くため、これまでと異なる職種にチャレンジしたり、給料アップを狙ったり――。多くのエンジニアが知りたいのは、転職で思ったとおり仕事ができた、給料が上がった、といったことではなく、転職に至る思考プロセスや決断の理由かもしれない。本連載では、主に@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに、転職の決断について尋ねた。


今回の転職者:川上章さん(仮名・28歳)
高校卒業後、大学はコンピュータソフトウェア学科に進学。だが大学1年生のとき、先輩2人が始めたWeb制作会社に参加するうち、仕事や新しい技術の面白さにのめりこむ。7年間在籍した大学を中退後、Linuxに強いベンチャー系システムインテグレータ(SIer)に就職。だが今年2月、そのSIerが倒産したのをきっかけに転職活動を開始。「ベンチャーの仕事は全体を見渡せて面白いが、IT業界にいるからには大きなインフラを手掛けたい」という希望どおり、大手SIerの関連会社に転職する。

ベンチャー企業から超大手への転職

 「転職活動のサポートをエージェントにお願いしたのは、自分の経歴が普通の企業人にはなかなか分かってもらえないと思ったからです」と笑いながら話すのは、今年4月に大手SIerの関連会社に転職した川上章さん(28歳)だ。社員数は100名前後だが、関連会社といっても、いわゆる親会社の下請けとは違う。むしろ親会社の技術精鋭部隊と共同で、新技術の検証や新システムの開発に当たる役回りだ。

 親会社は国内でトップのSIerのうちの1社。「学生時代からベンチャーを何社か経験し、仕事の工程を全部見られたのは貴重な経験でしたが、できるなら今度は大きな仕事をやってみたい」という川上さんの希望どおりの職場だ。しかも「できるなら、アットホームで人数もそれほど多くない企業」という要望にもぴったり合っていたのだ。親会社は大会社でも、その会社自体の従業員は少なかったからだ。「学生時代に普通の就職活動をしていなかったので、転職活動自体が面白くもあり、新たな発見もありました。最終的には自分の望んでいた形の企業、仕事に就くことができ、言葉は悪いのですが、前の会社が倒産しなければ、このチャンスはつかめなかったでしょう」と川上さんはいう。

プログラムで喜んでもらえると、自分もうれしい

 川上さんが「普通の企業人は自分の経歴をなかなか理解してくれないのでは」と漏らすのには理由がある。大学1年生のときに、先輩2人が立ち上げたWeb制作会社を手伝ううちに、仕事に“ハマり”こんでしまい、「前期は授業に出たが、後期にはまったく学校に行かなくなったという状態でした」(川上さん)という。

 川上さんが大学に入学したのは1995年。このころ学生時代を送った人は、一様に「Windows 95の登場や、インターネットブームに心を動かされた」と口をそろえるに違いない。川上さんもその1人だが、子どものころから普通にパソコンと接し、小学5年生のときには「雑誌を見ながらBASICで簡単なプログラムを組んでいた」(川上さん)そうだ。

 中学生のときには、色の違う空き缶を組み合わせて1つの絵を描く「空き缶すだれ」の実行委員に任命され、BASICで簡単なドット絵のプログラムを書き、必要な空き缶の数と色を割り出した。文化祭の出し物は成功し、校長先生に名指しで褒められたという。「大したことをやったわけではないし、みんなの力があってこそですが、すごくうれしい経験でした」と川上さん。

 大学はコンピュータソフトウェアの専門学科へ進学。川上さんが専攻していたのは、まだ出始めだったJava言語だった。Webページ上に動作をつけるアプレット的な使い方ばかりが注目されていたころだ。

 そんな川上さんは大学1年生のとき、先輩2人が作ったWeb制作会社を手伝うようになった。これがきっかけで「人生が変わってしまいました」(川上さん)という。HTMLも単純なマークアップ言語で、背景や文字の色、大きさを変えてGIFアニメーションを張れば立派なWebページができた時代だ。まだ技術として未知数だったJavaは、市場にエンジニアがほとんどおらず、技術好きの学生の方が詳しかったという。

 こうした背景もあってか、先輩2人の会社はあふれるばかりの案件を抱えることになった。特にJavaがらみの案件があると、東京からでも発注がくる。それがうれしくて楽しくて、川上さんは意気揚々と出張に出たり、「インターネットやJavaに詳しい学生」ということで仕事の依頼が来るようになったりと、気が付けば学校そのものに対する興味は薄れていった。大学には7年間在籍するも、「無理して卒業することもない」と川上さんは中退を決めた。

大学中退後、勤務した会社が倒産に

 大学を中退した川上さんは、先輩の会社には就職せずに実家のある栃木県へと戻った。長男ということもあり、きちんとした就職は実家のある地元でと決めていたのだ。しかし川上さんはすぐ就職はせず、「シェアウェアを作ってみよう」と思い立った。その理由について次のように語る。

 「いままでやってきたことを生かして、何かの形あるものを作りたかったんです。それをただ配布するのではなく、きちんと買ってもらえるようなものを作ってみたかった。あるしきい値を超えないと、人はなかなかお金は払わないですよね。心に訴えかけるような製品を作ってみたかったんです」(川上さん)

 3カ月かけて作ったのは、Javaで簡単にプロトタイプを構築できる開発環境だ。いくつかの専門誌やシェアウェア関連のWebサイトにも取り上げられ、少しずつ売れていった。満足した川上さんは、それから就職活動に本腰を入れた。条件は、実家から通えるコンピュータ系企業であることだ。

 新聞や雑誌を見て、実家のある都市近辺にあったベンチャー系SIerの門をたたいた。運良く一発で採用が決まり、エンジニアとして働くことになった。2003年4月のことだ。

 ところがこの会社が、約2年後の2005年2月に倒産の憂き目に遭ってしまう。「最後の方は給与の遅配などがあり、顧客先からも『おかしいぞ』といわれるようになっていたのですが、実際に会社が倒産という事態にはびっくりしましたね」と、川上さんはひょうひょうと語る。

 これがきっかけで、川上さんは否応なく転職活動を進めざるを得なくなった。普通なら途方に暮れる状況だが、川上さんは「学生のとき、普通の就職活動をしていなかったので、むしろいろいろな会社を見て回れることが面白かった」と振り返る。

転職活動で新たな自分を発見

 川上さんは転職に当たって、迷うことなく転職エージェントのサポートを受けることを決意した。自分の独自の経歴を理解したうえで、アピールすべきポイントは何か、どの企業がふさわしいかという転職活動全般を支援してもらうためだ。

 そこで川上さんは、2005年2月に「@ITジョブエージェント」へ登録した。ほかにも転職エージェントが運営しているサイトにいくつか登録したが、@ITジョブエージェントで出会ったアデコのコンサルタントに転職活動を委ねることにした。「ベンチャー企業にはまって留年、中退、シェアウェアの開発、就職、倒産と経てきた経歴を理解し、かつ自分の希望にマッチした企業を紹介していただけた」と川上さん。川上さんが転職先に求めたのはただ1つ、「大きな仕事をしている企業で働きたい」ということだ。

 状況的には勤務先がなくなり、「待ったなし」の状態。川上さんは転職エージェントに紹介された企業を5社ほど訪問したが、アデコに紹介された企業に面接に行ってからは、ターゲットをその会社1つに絞った。それほど川上さんの希望に合っており、「面接に出てきた年配の方がとても紳士的でかつ非常に鋭く、技術的なディスカッションで話が弾み、この会社に入りたいと強く思ったのです」(川上さん)という。一方、面接した企業側も川上さんをいたく気に入り、3日後には内定の通知が来たそうだ。

 ちなみに川上さんは、面接を受けた会社すべてで、2次、3次とプロセスを進めていくことができた。「経歴が特殊なので、なかなか受け入れられないと思っていました。でも実際にふたを開けてみると、気に入ってもらえることが多かったようです。また、別の転職カウンセラーの方には『コンサルタントも向いているのでは』といわれ、自分の知らなかった一面を知るいいきっかけにもなりました。だからこそ、いまの勤務先を気に入り、ほかを断らなければならなかったときは、つらかったですね」(川上さん)

「喜んでもらえる仕事がしたい」

 入社して半年だが、川上さんが面接で得た第一印象そのままに、最新技術の検証や開発にいそしむ同輩、先輩に囲まれ、楽しく仕事をこなしている。現在は開発工程を支援するツールの開発や技術検証にかかわっており、「ゆくゆくは自分が作ったシステムを現場に持っていきたい」という夢を持っている。川上さんは「やはり中学生のときに文化祭で喜んでもらえたり、シェアウェアを買ってもらうなど、自分の開発したものが何かの役に立ち、みんなをハッピーにできることが原点なんです。当面はいまの会社で仕事を続けて、そのうち自分が開発したツールやシステムが標準として使われるようになるといいな、と考えています」とほがらかに語った。

担当コンサルタントからのひと言

 川上さんからのご相談内容は、会社の倒産によって失業したが、これまでの経験を最大限に生かせる会社へ転職したいというものでした。

 詳しくお話を伺う中で、下記の課題を実現できる企業をご提案させていただきました。

<課題>
(1)資金難による倒産の心配がない
(2)オブジェクト指向とオープンソース系の技術を向上させられる
(3)将来的に大規模案件のプロジェクトマネジメントを実現

<提案企業>
(1)企業規模:大手企業および関連企業
(2)職務内容:基盤技術、アーキテクト系のコンサルタントまたはプロジェクトマネージャ
(3)企業イメージ:大手SIer、コンサルタント会社、およびその関連会社

 川上さんは高い技術力をお持ちの方だと思いましたので、入社した際の戦力性がイメージできるかどうかを、時間をかけて打ち合わせをしました。結果としては、弊社にお越しいただいてから約3週間という短期間で希望に合致した企業から年収200万円アップの内定を受けられました。

 最後に、この転職を機にご結婚を決意されたということでしたが、幸せな家庭を築いてください。川上さん、本当におめでとうございました。


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