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転職。決断のとき

第33回 Javaとの出合いでキャリアを変えた

永井理恵子
2006/6/16


転職が当たり前の時代になった。それでも、転職を決断するのは容易なことではない。スキルを上げるため、キャリアを磨くため、これまでと異なる職種にチャレンジしたり、給料アップを狙ったり――。多くのエンジニアが知りたいのは、転職で思ったとおり仕事ができた、給料が上がった、といったことではなく、転職に至る思考プロセスや決断の理由かもしれない。本連載では、主に@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに、転職の決断について尋ねた。


今回の転職者:松永祐一さん(32歳)
国立大学の工学部情報工学科在学中、気象予報士を目指して中退。その後、IT系企業に就職し、汎用機の運用を担当。その後、たまたま携わったプロジェクトでJavaに出合い、魅せられたのが転職のきっかけに。@ITジョブエージェントを通じてWeb専門のシステムインテグレータ(SIer)に転職を果たし、現在はJavaを使った仕事を担当している。

漠然と将来性を感じ、情報工学科へ進学

 松永さんは1993年、大学に入学。IT関係に興味はなかったが、工学部の情報工学科なら将来役立つだろうと思ったという。けれど専門課程に進む前に、退学してしまう。「ほかのことを勉強したくなり、大学をやめたんです。結局、大学では、数学、物理の基本的なことを勉強しただけでした」(松永さん)

 1994年より導入された気象予報士制度の資格取得のため、大学在学中から勉強を始めたが、両立が難しいと考えて中退したのだ。その後は、ラボやスタジオなど写真関係のアルバイトで生計を立てながら、資格取得に向けて勉強をした。働きながら勉強した5年間で、松永さんは「2つのことを同時にするのは難しい」と痛感した。

 1999年、気象予報士という夢をあきらめ、就職する決意をした。求人雑誌をめくると、ほとんどがIT系技術者か営業の募集だった。「IT系なら大学で少しだけ勉強していたし、未経験でもOKという触れ込みだったので、やってみようと思ったんです」(松永さん)という。2社を受験し、1社から内定をもらった。1カ月間の研修では、一般的な社会人研修のほか、C言語を使ったプログラムを教わった。学生時代からプログラムを組むことが好きだったという松永さんはこのとき、その楽しさ、面白さを再認識した。

キャリアパスを考えるきっかけはJavaとの出合い

 入社後の松永さんは、約3年間、プログラマとして、汎用機の運用、保守、点検を担当、オペレータ的な役割もこなしてきた。「(会社から現場に常駐するための人員として派遣されていたため)最初は同じ会社の人間がいなかったので、他社の方々に教わりながら仕事をしていました。その後、同僚が入ってきたので、会社に呼び戻されましたけれど、次に行くところは決まっていなくて……。結局、3カ月ほど待機期間がありました。その間、COBOLの勉強をしたんです」(松永さん)

 この待機期間中、松永さんにとって大きな出来事があった。社内に持ち帰った仕事で、Javaを扱う案件があったのだ。案件は、テレビ局のデジタル化に合わせてプログラムを作る仕事。「以前から機会があればJavaを使った仕事をしたいと思っていたので、ラッキーだと思いました」という松永さんは、約半月を勉強期間に充てて、あとは実際にプログラムを組みながら勉強した。

 一緒に開発した2人は、C言語やVisual Basic(VB)を使ったプログラムの経験はあっても、Javaを使ったことはなかった。社内を見渡してみても、Javaを知っている人間は皆無。簡単なプログラムを書いて動かす程度しかJavaを使ったことがなかった松永さんが、最もJavaを知っている人間だったのだ。頼れるのは、初心者レベルの知識しかない自分自身だけ……。そんな状況下で、オブジェクト指向のプログラムを組まなければならなくなった。

 「僕が勤めていた会社は、C言語やVBに強い社員が多かったので、それらを扱う仕事がメインでした。Javaを扱う仕事をしなくても会社がちゃんと機能していたので、Javaを使える人間を育てようという意識が会社になかったんでしょうね」(松永さん)

 初心者レベルの人間が集まっても、そのレベルのものしか作ることができない。そう痛感した松永さんは、Javaを使える人材を採用してくれるよう、Javaを使った仕事を請け負ってくれるよう、会社に掛け合った。その願いは、全くといっていいほど、聞き入れてもらえなかった。結局、その後のプロジェクトでも、Javaを使った仕事をしたのは、社内で松永さんただ1人だけだったという。「つたない技術ながらも、作ったプログラムが思ったとおりに動いてくれるとすごくうれしいですよね。そこが開発の一番の魅力だと思うんです。Javaにこだわったのは、いろんな人が使っているものを扱いたいという気持ちがあったからです」(松永さん)

 Javaをもっと勉強したい、スキルアップしていきたい。そんな松永さんの仕事に対する意欲、熱意は、空回りするばかりだった。この先、この会社にずっといても、Javaを扱う仕事はできない。そう思った松永さんは、会社に見切りをつけ、転職を決意した。

一度応募をあきらめた企業を受験し、見事合格

 転職を決意した翌月から、Webを中心に、転職活動をスタートした。名の知れた転職サイトには一通り登録。プログラマとして転職したかったため、プログラマとしての経歴だけを記入した。

 「@ITジョブエージェントにも登録しました。登録後、十数社の人材紹介会社から声が掛かり、ビックリしました」(松永さん)という。

 その中から、実際に会った人材紹介会社は1社だけ。記事を見て信頼できそうと感じたから、会うことにしたそうだ。その直感は正解だった。「実際に会ってみて、すごく印象がよかった。いい人に当たったなと思いました」(松永さん)

 高いスキルを持っているわけではない松永さんは、Javaに関する高いスキルのある会社に入社して、仕事をしながらスキルを学びたいと考えていた。実際、開発経験は1年半ほどとそれほど長くない。それでもいいといってくれる会社で働きたいと、松永さんは人材紹介会社のコンサルタントに率直に伝えた。すると、採用が決まってから勉強していけばいいという答えが返ってきた。道が開けたような気がして、安心した。

 人材紹介会社からは、松永さんの希望に合う会社をいくつか紹介された。そのうちの1社に目が留まる。転職先を自分で探しているときに見つけて気になっていた会社だったのだ。「スキル的に、自分が応募できる会社ではないと思い、外していた」(松永さん)そうだ。

 その会社は、年々業績が伸びていた。松永さんの入社後しばらくして、上場を果たしたほどだ。“会社と一緒にレベルアップしていけたら……”、そんな思いが頭をよぎった。今度は、躊躇(ちゅうちょ)することなく応募した。

 結局、人材紹介会社に紹介されたこの会社を含めて10社受験し、6社から内定をもらった。うれしいことに、行きたいと思っていた会社からも内定が出た。迷わず選んだことはいうまでもない。

 こうして転職を決意してから2カ月後、松永さんは新しい環境で仕事をし始めた。

 「入社して驚いたのは、雰囲気の柔らかさ。前の会社では、スーツが当たり前でしたが、いまはカジュアルウエアでも大丈夫。これは衝撃的でしたね。出社時間も10時と遅いのも驚きでした」(松永さん)

入社して一番の収穫は?

 プログラマとして入社後、1週間の研修を経て、すぐにプロジェクトに参加することになった。入社したばかりで経験の浅い松永さんには、分からないことがまだまだ多い。そのうえ、人手不足もあり、体力的にも精神的にもキツいプロジェクトだった。

 前の会社なら、分からないことを1つ1つ、ネットや本を使ってじっくりと調べ、自分の力だけで解決できた。でも、(ここでは)あまりの忙しさに、調べる時間などないのは当たり前。そのうえ、先輩に聞きたくても聞けない雰囲気だった。

 「それでも、毎日が充実していましたね。何よりも、実践で使われているプログラムを見ることができたのは、大きな収穫です。前の会社では、本で見たものや、ネットで見つけた知識をベースにJavaのプログラムを作っていたので、決して実用的ではなかったのだと気付きました。本当にいい勉強になりました」(松永さん)

 入社して約10カ月がたったいまも変わらず、忙しい毎日を送っている。タイトなスケジュールの中、分からないことを調べる余裕がないのも変わらない。しばらく考えて分からなければ、すぐに同僚に聞いて覚えるのが習慣となった。

 「入社以来、ポータルサイトの管理システムを作るプロジェクトにずっと参加しています。まだ1つのプロジェクトしか経験していないので、もっともっと覚えることがたくさんあるはずだと思うんです」(松永さん)

 Javaを知っている人たちに囲まれて仕事をするという、念願の環境を手に入れた彼の次なる目標は、さまざまなプロジェクトにかかわり、いろいろな技術を身に付けることだ。そして5年後には、いまよりももっと上流のポジションで仕事をしたいと願っている。

担当コンサルタントからのひと言

 松永さんのご相談内容は、下記のような内容でした。

・社内でのポジションは、高いクラスであるが、見合った評価がなされていない
・将来的には、プロジェクトマネージャという方向を考えているが、現状は派遣形態であるため実現が難しい
・Javaでの開発スキルをさらに高めたい

 常駐先では信頼も高く、グループリーダーとして7名のメンバー管理を行う立場を担っておられました。また、お会いしたときの印象もよく、非常に好感の持てる人でしたので、人物的な強みをアピールできる会社にターゲットを絞りご本人の課題を解決できる企業をご紹介させていただきました。

 上記の課題を解決できる企業としてのご紹介ターゲットとして、下記の点に該当する企業をご紹介させていただきました。

・育成型である企業(OJTを含め、育成ができる規模・風土を持つ企業)
・ネットベンチャー(採用マーケットが拡大している)
・ご紹介実績が複数あり懇意にしている企業(紹介時に人物的なアピールが可能)

 結果として、ご紹介させていただいた企業から高い評価をいただき、内定を取られました。上場前の勢いのある会社でしたので、ご本人も即答で入社を決意されました。

 松永さん、本当におめでとうございました。さらなるご活躍をお祈りいたしております。


記事のためインタビューに出てくれる転職経験者募集中
本連載では、さまざまな理由で転職したITエンジニアを募集しております。なぜ転職したのかを中心にお話を聞かせてください。記事のインタビューに当たっては、実名、匿名どちらでも構いません。インタビューを受けてもいいという方がいらっしゃいましたら、次のアドレスまでお知らせください。なお、インタビューを受けていただいた方には、多少ではありますが謝礼を差し上げております。
連絡先: jibun@atmarkit.co.jp



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