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転職。決断のとき

第35回 SAP R/3に携わりたい

岩崎史絵
2006/11/16


転職が当たり前の時代になった。それでも、転職を決断するのは容易なことではない。スキルを上げるため、キャリアを磨くため、これまでと異なる職種にチャレンジしたり、給料アップを狙ったり――。多くのエンジニアが知りたいのは、転職で思ったとおり仕事ができた、給料が上がった、といったことではなく、転職に至る思考プロセスや決断の理由かもしれない。本連載では、主に@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに、転職の決断について尋ねた。


今回の転職者:田中真二さん(仮名・30歳)
大学卒業後、大手システムインテグレータ(SIer)企業に就職。8年間、ERPの導入コンサルティングを中心とする業務に従事する。ところが会社が本腰を入れてERPビジネスを展開しようとするも、プランどおりに進まずビジネスは停滞気味に。ERP関連の仕事に満足していた田中さんは、よりキャリアを積むべく、2006年8月@ITジョブエージェントを通じて大手コンサルティング会社に転職。

新卒入社した会社で「天職」に出合う

 田中真二さんは都内有名私立大学の経済学部出身で、大学卒業と同時に大手SIer企業に就職した。大学ではレポート作成にExcelやWordなどを使ったことはあるが、プログラミング経験はなかった。しかし「ちょうど就職活動をしていた1998年当時は、ITバブルの萌芽が見え始めたころで、業界全体に活気があり、求人も多かったのでIT業界への就職を決めたのです」と田中さんはいう。同期で入社したのは100人ほど。ちなみに「この会社に在籍した7〜8年の間は、毎年常時100〜120人くらいの新卒採用が続いていました」(田中さん)とのことだ。

 田中さんが入社した時期は、ちょうどERP市場が拡大しつつあったころだ。ERPは、経営の効率化やスピードアップに取り組む企業から絶大なる支持を受け、1990年代半ばから後半にかけてかなりのブームを巻き起こした。田中さんが入社したSIerは、古くからERPのコンサルティングや導入に取り組んでいた。田中さんはそこに配属されたのだ。

 田中さんが入社した当時は、ERPの部門は総勢60人ほどの勢力だった。ここで田中さんは、当初営業SEとして勤務し、その後導入コンサルタントなどへとキャリアを重ねていった。

 もともと就職したのは大手SIerであり、いわゆる1次請けの立場で仕事ができる環境だった。新入社員とはいえ、要件定義やヒアリングなど上流工程を経験し、続いて開発現場で実績を積んでいったので、ITエンジニアとしてのキャリアスタートは申し分ない。もっとも「新人なのに、顧客先の部長や役員クラスを前にプレゼンしなければならないときには、本当に緊張しました」(田中さん)という苦労もあったようだ。

 時代の追い風もあったが、田中さんには「ERPパッケージの導入コンサルティング」という仕事がとても合っていた。活気ある職場、伸びていく市場、そして自分にマッチした仕事内容。転職したいまでも「いい会社だと思っていますし、いまでも当時の同僚や先輩とは時々会って情報交換をしています。そのうち、『一緒に仕事しようよ』ともいい合っています」(田中さん)という。

会社がERPビジネス全面刷新を図るも……

 仕事内容や職場環境にとても満足していた田中さんだったが、少しずつ状況は変わっていった。

 まず、案件内容そのものが大型化、高度化していったこと。入社した当初は、まだERPブームの余波が残っていて、「試しに導入してみる」とい案件が多かった。が、2000年を超えたころから、少しずつ規模が大型化してきた。ERPに求められる要件が変わり、ビジネスプロセスのベースとして活用しようという動きが出てきたのだ。

 こうした流れに対応すべく、当時の勤務先では、ERPビジネスの大幅な刷新を決定。それに合わせて新しい組織体制が作られた。田中さんも従来のビジネスに従事していたが、徐々に縮小し、新しいビジネスの方に移る予定だった。

 ところが、新しいビジネスははかどらなかった。そしてビジネスの方向が見えなくなってしまったそうだ。

 それまで仕事に満足していただけに、田中さんが受けたショックは大きかった。上層部も事態を深刻に受け止め、何とか努力しようとしたものの「方向性が頻繁に変わるので、だんだん会社に対しても不信感が芽生えていきました」(田中さん)という。いま振り返ってみると、会社も努力しようとしていたのは分かるだが、「現場にいる身としては、『将来どうなるのだろう』という不安が先でしたね」(田中さん)とのことだ。時期はちょうど2005年末だった。

じっくり見極めてから転職活動を開始

 田中さんの中では、新しいビジネスが本格化した2005年は「今後どうなるか見極める1年間」と位置付けた。その1年間は、残念ながらビジネスは停滞したまま、旧来のビジネスから脱却できずに終わってしまった。

 2006年に入ると同時に、「別の会社に転職しようか」という思いが徐々に強くなっていったという。条件は、これまでかかわってきたERPのコンサルティングの経験を生かせる職場であること。特に「ERPパッケージの代名詞となっているSAP R/3を経験してみたい」という希望があった。

 そこで今年2月、「最初は『取りあえず』という気持ちで」(田中さん)@ITジョブエージェントに登録。大手SIer勤務とその職務内容から、あっという間に7〜8社の人材紹介会社から問い合わせがあった。

 その中から、返信されてきたスカウトメッセージの印象が良かったテクノブレーンとコンタクトを取った。「ERP導入に従事してきた経験を生かし、できるならSAP /R3の案件に携わりたいこと」「完全な外資系企業は転職先として考えていないこと」「1次案件を請け負う規模の企業であること」という条件を提示し、3〜4月に面接を受けた。この時期はちょうど、カットオーバーを迎える案件を抱えており、時間が取りにくかったため、「面接先を厳しく絞り込む必要がありました」(田中さん)という。

 コンサルティング会社を1社、メーカー系の大手SIerを1社受けたが、先に内定が出たコンサルティング会社への転職を決めた。

前職の同僚と「一緒に仕事をしたい」と語り合う

 「前職の会社は、持っている技術力や職場環境はとても良かったと思います。だからこそ、円満退社をしたいと思いました」(田中さん)

 最初に「転職したい」と上司に打ち明けたときには、「なぜもっと早くいってくれなかったのか、もう少し様子を見てからはどうか」と引き留められた。だが田中さんの中では、すでに見極めの時期は過ぎていた。「こちらも早くに相談していれば、ひょっとして別の方向が見つかったかもしれません。でも会社の上層部は、現場の本当の部分は理解できないし、大きく何かが変わるとは思えなかったのです。ただ今後ビジネスが成功することを期待しています」(田中さん)。プロジェクト終了まで在籍し、翌日から転職先へというあわただしい日々を送った。

 ただ、そのおかげで、いまでも前の職場の人脈とはつながっているし、「一緒に仕事をしよう」という話題も出てくるのだという。

 現在の仕事は、「業務プロセスがどのように変わるか」を見極め、「ほかのシステムインフラとの整合性を取りつつ」「極力カスタマイズを減らすような構成を提案」するというもので、「基本は以前の会社でみっちりたたき込まれたので、思ったほど苦労はありません」(田中さん)という。SAPという新しい製品で経験を積めることに満足しているそうだ。

 転職してカルチャーショックを受けたことの1つは、「コンサルタントという職種を誤解していました」(田中さん)と打ち明ける。「向上心はとても強く、勉強熱心ですが、中身は結構普通の人が多いのです。それまでは、話すにも敷居が高いというイメージがあったのですが、気さくでいい方が多いですね」(田中さん)とのことだ。

 「将来は、さらにERPの経験を積み、コンサルタントとしてもっと経験を積んでいきたい」と田中さんは語る。

担当コンサルタントからのひと言

 私が普段お会いする方々の多くがそうなのですが、田中さんも「転職ありき」ではなく、最初はキャリア相談でお会いした方です。スカウトしていてなんですが、一流会社にお勤めでしたので、「本音レベルの気持ちが知りたい」と思いながらお話をいたしました。

 田中さんとの初対面の印象はいまでも覚えています。

 一見ソフトでおっとりしており、親しみやすい方だなと思い、普段の業務で顧客の懐に自然と入り込み、信頼されている様子がすぐにイメージできました。また、ご自分の考えやメッセージも明確で、キャリアに対してのAs−Is(現状)とTo−Be(あるべき姿)の分析ができており、私が田中さんのキャリアビジョンを共有することは難しいことではありませんでした。

 スキルも一貫しており、中堅企業向けERP導入におけるカスタマイズの中で、要件定義から保守まで行っていました。そのため引く手あまたでした。

 SAP R/3は未経験とのことでしたが、お人柄、技術スキル、上流経験や会計関連の業務知識を生かして、未経験でもチャンスを与えてくれる会計系のコンサルティングファーム1社と、高い技術力とプロジェクトマネジメント力を誇るメーカー系SIerに絞って活動をサポートいたしました。

 面接指導などで気を付けたことは、「SIerとコンサルティングファームとのポジションの違い」「コンサルタントとSEの違い」などについて事前情報を差し上げたり、過去に受験された方のフィードバックを基に面接シミュレーションをしたことでしょうか。

 あとはセンスのある方でしたので、毎回の面接の詳細なフィードバックをいただきながら、途中途中でお会いして、状況や意思を確認しながらサポートを進めました。

 印象に残ることは、田中さんの退職活動についてです。優秀な方ですから、前職の上司へ退職意思を伝えてからの引き留めは大変でした。ご本人の意志が固いとしても、必ず「円満退職」してもらわなければならない。同じ業界で仕事をする以上、いままでの会社のメンバーとどこでどんな縁があるか分かりませんし、人とのつながりがとても大切な業界ですから、喜んで送り出してくれるように引き継ぎをキチンとしなければいけません。内定を出していただいたコンサルティングファームからも「円満退社が条件です」とおっしゃっていただき、入社日も最大限考慮してくれました。これも田中さんへの評価が高かったからでしょう。

 ご入社前には、新天地でのご活躍を祈念して乾杯をしました。今後も、ご活躍され転職が成功となって本当の祝杯を挙げられるまで、今後も田中さんとは長いお付き合いをしたいと思っております。           


記事のためインタビューに出てくれる転職経験者募集中
本連載では、さまざまな理由で転職したITエンジニアを募集しております。なぜ転職したのかを中心にお話を聞かせてください。記事のインタビューに当たっては、実名、匿名どちらでも構いません。インタビューを受けてもいいという方がいらっしゃいましたら、次のアドレスまでお知らせください。なお、インタビューを受けていただいた方には、多少ではありますが謝礼を差し上げております。
連絡先: jibun@atmarkit.co.jp

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