第45回 5歳からのプログラマの選択は
「.NETを究める!」
加山恵美
2007/12/26
■プロジェクトごとに、着実に知識を吸収
2番目のプロジェクトには、トータルで半年ほどかかわった。設計の意図を伝える難しさを実感し、プログラマが無駄なく確実に仕事に取り組めるようにシステム基盤を整備することを学んだ。
3番目のプロジェクトは、すでに開発は終了しているものだった。すでに運用フェイズに入っているシステムだったが、クライアント側にトラブルが多発していた。品質の悪さは「十分なスキルを持つエンジニアがいないまま開発してしまったのが原因のようです」と富永氏は分析する。
開発したのは富永氏とはかかわりのない会社だったが、トラブル続きのシステムがあることを営業が小耳に挟み、高い技術力を持つ富永氏を紹介するに至ったらしい。システムはすでに稼働中なので、作り直すことはできない。そこで富永氏はシステムを精査し、開発元に修正内容をアドバイスしたり、簡単なものならリライトしたりと、システム改善に尽力した。
「このシステムは反面教師だったような気がします。複数の会社が絡んで開発したため、処理に無駄が多く見られました。また技術が分からない人がシステムを構築するとどうなるのかが実感できました。それを防ぐための開発方法を学ぶことができました」と富永氏。
■30代を前に「そろそろ転職」を決意
要件定義のみの1カ月ほどのプロジェクトに続き、5番目のプロジェクトはパッケージ開発。ASP.NETとC#でWebアプリケーションを構築した。このプロジェクトは、それまでの富永氏の集大成となった。「まさに卒論のようでした」と富永氏はいう。ここでも実装はオフショアのプログラマが担当したため、間違いなく開発が行えるように基盤を整備した。約2年かけてサブシステムごとに開発を進めていった。
30代が目前に迫っていた。20代前半から5年ほど.NETにどっぷり浸り、多くを習得した。誰もが「.NETなら富永に聞け」というほどになったが、それしか知らないわけではない。「最も手になじむのはC#ですが、それ以外にも扱える言語は16種類ほどあります」と富永氏。実際はオールマイティなのだ。
そんな富永氏は、当時の会社で働くことに疑問を感じるようになってきた。学べることは学び尽くしてしまったと感じ、停滞感があったのだ。技術力において、社内で特出した存在となったが、孤独でもあった。同じレベルで技術を語れる相手が誰もいないのだ。
本音としては、待遇の問題もあった。入社当時から十分なスキルを持ち、さらに経験を積み重ねてきた富永氏は、レベルの高いエンジニアとして会社に大きく貢献していたことだろう。しかし、給料は伸び悩んでいた。加えてボーナスもなかった。
「待遇に不満がなかったといえばうそになりますが、それでも20代のうちは経験を積むことを重視してきました。しかし30代を目前にして、そろそろほかの環境に移るべきだと感じました」。富永氏は決意を固めた。
■円満退社のため、@ITジョブエージェントを利用
転職するならどんな会社か。当然ながら.NETの仕事ができる会社だ。.NETについての高い技術を持つ集団であれば理想的だ。会社はいくつか思い浮かべることができたが、富永氏にとって転職は初めての経験だ。それに富永氏は会社を.NETに誘導した中心人物であったため、退職がすんなりうまくいくとは思えなかった。そこで@ITジョブエージェントを利用することにした。
@ITジョブエージェントに登録すると、富永氏のスキルと経験を見たエージェントからメールが殺到した。「ざっと16社ほどでしょうか。すべてのメールと、そのメールに紹介されていたコンサルタントの記事に目を通しました。あまりに多くて2週間ほどかかってしまいましたが、メールや記事からコンサルタントの人柄を吟味し、最も納得がいく人材紹介会社を選びました」と富永氏はいう。
最終的に選んだのはキャリアコンサルタントの宮脇氏だ。宮脇氏の支援もあり、転職活動は問題なく進んだ。採用が確定すると、次は退社交渉である。富永氏が予想したとおり、かなり強い引き留めにあった。当然である。会社でトップの.NET技術を持っているエンジニアなのだから、簡単に手放すはずがない。
最後に大きな困難が待ち受けていたが、宮脇氏が陰で支援してくれた。円満退社のために、さまざまな作戦を立てて交渉した。さすがはプロである。富永氏は宮脇氏を「3人目の師匠」と呼ぶ。それほど熱心に富永氏を導いてくれたと想像してもらいたい。
■思わず早起きしてしまうほど、新しい会社が楽しい
そして富永氏は、新しい会社で働き始めた。数日間の研修を経て、いまでは新しい現場に配属されている。もちろん、これまでに培った.NETのスキルを存分に生かせる環境だ。そして希望どおり、周囲には高い技術力で名を馳せるエンジニアが数多くいる。刺激的でわくわくする日々を過ごせているようだ。
「毎日が充実しています。新しい会社になってから、朝は1時間も早く起きられるのです。楽しくて仕方ありません」と、満面の笑みで富永氏は話す。まさに最高の転職ができたようだ。
担当コンサルタントからのひと言 |
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■「優れた『職人』でありながら、コミュニケーション能力も高い人」 最初に富永氏とお会いした際に印象に残ったのは、その技術力以上に、彼のコミュニケーション力でした。 特定の技術領域に深くのめり込んでいる方では、職人タイプでコミュニケーションの上手でない方が比較的多いという印象があります。その点富永氏は、優れた技術を持つ職人でありながら、どんな方とも的確にコミュニケーションが取れ、温和な性格で周りを和やかにする方との印象でした。 「自分はこれで勝負する!」という姿勢も、多くのエンジニアが見習うべきかと思います。 また、マイクロソフト技術に対する勉強熱心さには驚かされました。あるときは「いつもこんなの電車で読んでるんですよ」と、さりげなくかばんから分厚い英文のマイクロソフトの技術書を取り出して見せてくれました。 今後は技術スペシャリストとして、より高いレベルでプロジェクトを引っ張っていく立場になられることでしょう。技術力とコミュニケーション力、2つの力をもって、困難も楽しみながら乗り越えていただければと思います。
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今回のインデックス |
5歳でプログラミング。師匠はエンジニアである父だった |
.NETを究めにいった環境で、2人目の師匠に出会った |
新天地への飛躍を助けてくれた人が3人目の師匠 |
記事のためインタビューに出てくれる転職経験者募集中 |
本連載では、さまざまな理由で転職したITエンジニアを募集しております。なぜ転職したのかを中心にお話を聞かせてください。記事のインタビューに当たっては、実名、匿名どちらでも構いません。インタビューを受けてもいいという方がいらっしゃいましたら、次のアドレスまでお知らせください。なお、インタビューを受けていただいた方には、多少ではありますが謝礼を差し上げております。 連絡先: jibun@atmarkit.co.jp |
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