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転職。決断のとき

第46回 50歳になっても、エンジニアでいたい!

加山恵美
2008/1/25

この会社では無理。転職しかないのか

 次第に栗原氏は、「エンジニアでい続けることは、この会社では無理なのかもしれない」と考えるようになってきた。

 そこで「いま、会社を離れたらどうなるだろうか」という興味で@ITジョブエージェントのITエンジニア年収査定に申し込んでみた。転職が可能かどうか、いまの自分は有利なのか不利なのかなど、あらゆることが漠然としていたためだ。

 年収査定の結果はほぼ平均値で、現状の給料が安いということもなかった。だが残業代が加算された状態であることを考えると、それほど良くもない。転職するべきか、とどまるべきか。どっちつかずの状態のまま、半年ほどがたった。

 しかし、会社での状況は変わらなかった。再び技術営業への道が、より現実味を帯びて迫ってきたのだ。

 そこでいろいろな転職サイトを回り、転職先を探し始めた。「35歳になれば選択肢は狭くなるかもしれない」という焦りもあったからだ。だが不幸なことに失敗が続いた。栗原氏自身「無理していました」と振り返るように、焦りゆえに空回りしていたのだ。徹夜明けに業務の疲れを残したまま面接に向かうなど、不利な条件が重なったことも悪循環を招いてしまった。結局10社ほどに応募し、ことごとく失敗した。

迷いが決意に変わったとき

 栗原氏は次に、@ITジョブエージェントに登録した。何社かのキャリアコンサルタントからメールが届いた中から、テクノブレーンの神戸氏に相談することに決めた。「コメントに好感が持てたからです。それに勤務先からの交通の便が良かったこともありました」と栗原氏。

 この選択は正解だった。転職を希望していた栗原氏だが、「転職ありき」で転職活動へと向かうにはためらいがあった。内心で「本当に転職しかないのか」と、迷いを抱えていたためだろう。「神戸さんは転職以外の選択肢も含め、キャリアを一緒に考えようとしてくれました」と栗原氏は振り返る。

 栗原氏は「どうしても転職」と思ってはいなかった。こだわりがあったのは「どうしてもエンジニア」というところだった。だが会社はそれを許してくれない。そうしたつらさ、転職に何度も失敗して焦っていたことも打ち明けた。

 ひととおり聞いて神戸氏は「焦らなくてもいいんですよ」と諭してくれた。転職の可能性を、会社に残る道も含めていろいろと一緒に考えてくれたそうだ。栗原氏はあれこれ考え、結果的には「やはり転職」という結論に落ち着いた。結果を見れば同じことだが、「もやもや」が晴れ、転職への決意を固めることができたのは大きな前進だった。

 「自分がどんな仕事をしたいか。どういうふうにやりたいか。自分のスタンスを決めるために、現状分析の手伝いをしてくれたのがありがたかったです。自問自答ではたどり着けませんでした」と栗原氏は話す。

 栗原氏が本当に転職を決断したのは、このときだったろう。それまでは迷いもあり、焦りもあった。しかしじっくりと相談ができたことで迷いは吹き飛び、精神的にも余裕が出てきた。落ち着いて転職活動に臨めるようになり、いい結果も出せるようになった。

 神戸氏経由で応募したのは、大規模システムを運用している会社など、安定感のある大手。3カ月で4社ほど、並行して転職活動をした。

 最終的に転職を決めた会社では、選考はとんとん拍子に進んだ。2次面接後、数日で再度の面接。その面接が終わった後、「30分ほど待っていただけますか」といわれて部屋で待機していたところ、担当者が戻ってきて「内定しました」と告げた。これにはびっくりして、言葉が見つからなかったという。

重要なのは、自分のスタンスだ

 栗原氏が新会社へ転職して半年ほどが過ぎた。前の会社ほど激務ではなく、「基本的に夜の8時前には帰れます」と、栗原氏はほどほどの勤務状態に満足している。また日常的な福利厚生が充実しているところが特に気に入っているという。もちろん、栗原氏が強く希望していた「ずっとエンジニアでい続けることができる」環境であることはいうまでもない。

 これまでの経験から栗原氏は「転職サイトには非公開求人を大量に保有していることを売りにするサイトもあります。しかし重要なのは非公開求人があるかどうかではなく、その求人をする企業の事情を把握していることや、それが自分に向いた場所かどうかを判断してアドバイスをしてくれる人がいるかどうかではないかと思います」と話す。

 会社で窮地に追い込まれていても、自分のスタンスが決まらないうちに転職活動をしてしまっては、不毛な試行錯誤を繰り返す羽目になってしまう。

 転職する覚悟を決め、転職先に何を求めるのかを明確に持てるようになれば、転職活動で好結果を導き出せる。栗原氏は、そのことを示してくれた。

担当コンサルタントからのひと言

 栗原さんは、事前にいただいた経歴書にあった「出身地」と「趣味」について私と通じるものがあり、お会いしたときにはそのような話で盛り上がったことを記憶しています(もちろんまじめにキャリア相談もしましたが)。

 すでに多くの企業を受けておられたので、まずは「どうしてその企業を受けたのか」を整理するお手伝いから始めました。中には明らかに栗原さんの志向と合わない企業も含まれていて、あらためて企業の特徴を説明したこともあったかと思います。しかし栗原さんの「ずっとエンジニアでいるため」という転職の動機と志向ははっきりしていて、まったくブレがありませんでした。そのためか、面談後はスムーズに企業の紹介ができ、ご本人も面接などで力を発揮されていました。

 入社された現在の企業は、実はご本人が想定もしていなかったところでした。その企業の人事担当との打ち合わせの中で「このような方はどうか?」と個人情報は伏せて打診したところ「ぜひ会いたい」となり、栗原さんに紹介したのです。栗原さんにとっては意外な選択肢だったようですが、「まずは会社説明を聞いてみては?」と提案し、面談から始めました。その結果、栗原さんの志向にぴったりであることが分かり、とんとん拍子で面接をクリアして内定を獲得。正直ここまでマッチするとは思っておらず、私自身も驚きましたし、何よりも栗原さんご本人が一番驚いていました。内定後、乾杯したビールのおいしさをいまでも覚えています。

 入社されて2カ月たったころにもお会いして、新天地での活躍ぶりを伺いました。初めてお会いしたときとは打って変わって、充実した日々を過ごしているようです。ぜひ今後もお付き合いをしていきたいと思っています。


 

今回のインデックス
 エンジニアでい続けたい。しかし…… (1ページ)
 迷いが決意に変わったとき (2ページ)

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