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転職。決断のとき

第48回 都心からの引っ越し。地方で転職先を探す難しさ

加山恵美
2008/5/29

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都心から離れると年収は下降

 月岡氏は、新居の近くで転職先を探し始めた。都心から離れた場所のため、「給与は下がるだろう」と予想していた。どのくらい下がるのか調べるため、@ITジョブエージェントの「@IT年収MAP」を試してみることにした。勤務地を指定した年収の目安が分かるからだ。

 勤務地を新居に近い地域に設定し調べてみると、なんと「データなし」という結果になってしまった。これは勤務地のサンプルの母数が少ないためである。月岡氏の年齢、スキル、勤務地を掛け合わせると該当するデータが少なく、査定できなかったのだ。

 当然ながら、募集案件自体もあまり多くない。新居の近くのハローワークを利用し、9社ほど調べてみたが、ことごとく年収は低かった。「100万円は下がるでしょうか」と月岡氏はいう。

 そのうち何社かに応募し、面接も受けた。だがどこも、年収が100万円以上下がることが予想できた。高い評価を得ながらも、結果的には予想よりもさらに低い額を提示されたこともあった。社風や仕事内容についても、納得できるところが見つからなかった。

東京と新居のほぼ中間で会社を探す

 地理的な条件に加えて、月岡氏は転職先にいくつかの希望があった。大手であることを最優先条件としていたわけではないが、「会社としてしっかりしていること」、自分がこれまで手掛けてきた分野に近い仕事ができること、同年代の社員が多くいることなどである。年収が大幅に下がらないことも。

 「これからもずっとエンジニアとして働きたい」と願っていた月岡氏は、当時所属していた会社で感じたような心配はしたくなかったのだ。しかし、いい転職先はなかなか見つからない。都心から離れるという条件は予想以上に厳しかった。

 苦戦を強いられていた月岡氏は、@ITジョブエージェントに登録しコンサルタントに相談することにした。すると「はじめまして。ここはどうでしょう」と最初のメールから会社を提案してくれたコンサルタントがいた。キャリアコンサルタントの宮脇氏だ。

 宮脇氏が提案した会社は、月岡氏の理想にもかなっていた。新居と東京駅のおよそ中間、どちらかというと新居に近い土地にある会社だ。新居からは電車で1本、45分ほどで通える。少し都心に近づいたこともあり、当時の会社と変わらない待遇が期待できそうだった。新居のすぐそばというわけではないが、いい妥協点を見いだせたといえよう。

円満退社、そして後進へのエール

 月岡氏も「その会社なら話を聞いてみたい」と興味を感じ、宮脇氏と面談することにした。その後はとんとん拍子に事が進んだ。書類審査を通過し、4度の面接を経て内定が決まった。さらにうれしいことに「年収は少しアップした」そうだ。新しい職場ではこれまでに多くの経験を持つ業界を中心に、営業支援的な立場で働くことになる。

 転職が決まると、会社の同僚だけではなく顧客もとても残念がってくれたそうだ。だが地理的な理由には皆納得せざるを得なかった。プロジェクトが一段落ついたタイミングで、円満退社することができた。

 都心から離れるのが一時的なことであれば、単身赴任することもできたのかもしれない。だが、新居に永住することはほぼ決まっていた。新居から通える会社を探そうと早めに動いたのは、長期的に考えても正解だったかもしれない。

 月岡氏は新居について「静かでいい所ですよ」と話す。引っ越しして半年が過ぎ、新しい土地の雰囲気にもなじんできたところのようだ。

 また月岡氏は似た境遇の転職者への思いを語ってくれた。「私のような(家族とともに引っ越すことになった)人がいれば、相談に乗るなどして応援したいです」と話している。今回のインタビューを受けてくれた理由は、そこにあったようだ。

担当コンサルタントからのひと言

■「経験と人柄で、数少ないチャンスを勝ち取った月岡氏」

 月岡氏が@ITジョブエージェントに登録された内容を拝見し、勤務地・仕事内容などが希望に近いと思われる候補企業をご提案しました。結果、その企業にスムーズに転職が決まりました。都心から離れた勤務地を希望されたため、選択肢が極めて少ない状態での転職活動でしたが、月岡氏は数少ないチャンスを見事に生かされました。

 これは、ただ単に勤務地などの希望が合致したからでは決してなく、月岡氏が積み上げてきた経験および人柄が企業に高く評価されたからです。私自身も第一印象で感じた、月岡氏の誠実な人柄が相手に伝わったのでしょう。これで生活環境が落ち着くと思いますので、腰を据えて今後も頑張っていただければと思います。

 月岡氏はよいご縁が得られたケースではありますが、首都圏以外の勤務地を希望して転職活動に苦労される方は多くいらっしゃいます。首都圏以外の求人案件は数が少ないため、仕事内容・収入・勤務地などの中で何を最優先にし、何に妥協できるのかをしっかりと整理しながら、いろいろな情報網を利用し、時間をかけてチャンスを待つことが重要になるかと思います。

キャリアコンサルタント 宮脇啓二氏


 

今回のインデックス
 自宅の引っ越しと、会社への不安(1ページ)
 引っ越し後の自宅の近くで、理想的な環境に (2ページ)

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