第1回 もっと給与をアップさせたい!
アデコ 藤田孝弘
2008/5/21
目的別の実例を挙げながら、転職における成功・失敗の要因を探る。皆さんの参考となる「道」を探してほしい。 |
転職の目的は、人それぞれで異なるもの。周りにいる人、例えば職場の先輩や友人の成功体験、失敗体験を集めたとしても、自分に当てはまるとは限りません。しかし、自分と同じような目的を持って転職した人の具体例が得られれば、大きな助けになりそうです。
この連載では、キャリアコンサルタントの経験から、12パターンの転職目的をピックアップします。それぞれの成功事例や失敗事例を紹介しながら、転職でその目的をどのように実現するのか考えたいと思います。
第1回は、給与アップを目的とした転職を実現するための心構えや留意点について、事例を交えて解説します。
■入社時から給与が変わってない藤原さん
藤原さん(仮名)は当時29歳のITエンジニア。転職の相談に弊社を訪れたのは、2004年春のことでした。大学を卒業後、システム部門のアウトソーシングを請け負う会社に入社して4年近い経験を積んだ藤原さんは、相談の半年前に会社を退職し、転職活動中でした。
経験してきた職務内容は、企業のシステム部門に常駐し、各種システムの追加や修正をVisual Basicで行うというものでした。単独での常駐がほとんどであるため、リーダーの経験はありません。
藤原さんが会社を退職した理由は、給与が低かった点と、それに伴う将来への不安でした。実は退職時、藤原さんの給与は、入社時と比較してほとんど変わっていませんでした。1年前の昇給の時期に上司に相談してみましたが、まったく取り合ってもらえなかったということです。リーダー経験を積めば手当が付くということで、異動の希望を出しましたが、これも認めてもらえませんでした。仕方なく、ユーザーとの契約が切れた半年前に退職を決意したのだそうです。
その後藤原さんは、給与の大幅アップが見込めそうな会社に照準を定めて応募をしたのですが、ほとんどが書類選考で不採用という結果に終わりました。
それもそのはず、2004年当時、企業は採用数を抑え気味にし、採用基準も年々上げている状況でした。若手であればJavaの開発経験、中堅であればマネジメント経験がほぼ必須。即戦力となる人材には高額の給与を提示し、教育が必要な人材には、面接のチャンスも与えない企業がほとんどでした。転職をするのに、決して良いとはいえない時期だったのです。
■方向性を再検討。長期的なキャリアアップを見据えて
このまま方向性を変えず、給与アップを目的とした転職活動を続けていても、内定はおろか面接に進むことも難しい状況になります。給与がアップしそうな会社は、当然採用基準も高いはずです。しかし藤原さんのスキルは、ほとんどの求人企業の要件を満たしていませんでした。
転職の相談をする中で、藤原さんは、面接の機会が得られる企業を探すことさえ難しい状況だったことに気付きました。そこで私は、いますぐ給与アップを狙うのではなく、長期的なキャリアアップとそれに見合った給与アップが実現できる企業の選択を提案しました。
目的を達成するため、条件を決めたうえで企業選択をすることにしました。次の3点です。
- 社員教育に熱心でスキルアップができる企業
- 実力を正当に評価してくれる企業
- 将来性のある企業
3点すべてを満たす企業のみに応募するわけではなく、3つ満たす企業をAランク、2つ満たす企業をBランク、1つ満たす企業をCランクとし、1つでも条件を満たす企業は選択肢に入れることにしました。
■年収の下がるAランク企業、年収の上がるCランク企業
条件に従って選び、応募した企業は5社でした。Aランクはインターネットベンチャー企業2社、Bランクはシステム開発(SI)企業2社、CランクはSI企業1社です。
書類選考の結果、5社のうち2社で面接を受けることになりました。2社とも面接は順調に進み、無事内定を得ることができました。
1社はWebサイトを運営する中堅のベンチャー企業で、3つの条件をすべて満たすAランク企業です。年収は前職を下回る350万円からのスタートですが、半年ごとに給与の見直しがあり、実力を正当に評価してくれる風土があります。開発環境はLAMPがメイン。藤原さんの未経験分野ですが、それをカバーする教育制度は整っているということでした。もう1社は中堅のSI企業です。年収は大幅アップの480万円ですが、派遣業務が主体という点でスキルアップ機会と将来性に欠けるため、Cランク企業に該当します。藤原さんはどちらを選択すると思いますか?
藤原さんは、迷うことなくAランク企業を選択し、入社しました。
■その後の藤原さん
このWebサイト運営企業は、藤原さんが入社した1年後に上場し、現在は当時の6倍の従業員を抱える企業に成長しています。
先日、久しぶりに藤原さんと話をする機会があり、状況をお聞きしました。藤原さんは現在、10人のメンバーがいるグループのリーダーとして勤務しています。気になる年収について聞くと、詳しい額までは教えてもらえませんでしたが、入社当時の2倍は軽くもらっているということでした。笑顔で話す藤原さんからは、ようやく念願を果たした満足感のようなものがうかがえました。
リーダー経験ないけど給与上げたい! 山下さん |
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