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経営者から若いITエンジニアへのメッセージ

第9回 進む道を自分で決めるITエンジニアになれ

三浦優子
2007/8/6

冷静に自分を見直すことで見える将来

 人事担当者として嶺村氏は、中途入社を希望する人に次のようにアドバイスを送る。

 「それまで何らかの技術、例えばWebのスペシャリストで、『この分野では誰にも負けない!』という人がいるとします。その技術がいかに素晴らしいものだったとしても、中長期的にIBMを支えていく人材になることができるのか。そう考え始めると、いろいろな見方ができます。技術革新が早いことを考えると、突き詰めたと思っている技術も3年もたてば陳腐化する可能性がある。そのときにどうすればいいのか。そこまで考えて仕事をしていくべきではないでしょうか」

 人事担当となる以前、ITエンジニアとして仕事をしていた嶺村氏は、「現場は忙しすぎて、3年後の自分を考える暇があったら1分でも余分に眠りたいという現実もよく理解できます」とも話す。

 嶺村氏自身、以前はアジア・太平洋地区の付加価値通信を7年間担当し、寝る間もなく国から国へと飛行機で飛び回り、現地のスタッフを指導していた時期がある。当時は、ITエンジニアには技術だけでなくタフであることが求められることを実感したそうだ。

 「営業職の場合、自分でどんどんキャリアをつくっていく傾向があります。それに比べるとITエンジニアはほかの人に背中を押してもらって、ようやくステップアップしていく人が多い。しかし成功した人には、自分で考え、自分でアクションを起こした人が多いのです。IBMの企業カルチャーとして、手取り足取り教えるというところがなく、上司に自分でこうしたい! と主張した人が受け入れられる文化があるから、余計そうなるんでしょうね」

 成り行きで仕事を続けていくのではなく、自分で進むべき方向を決定する。これがIBMでITエンジニアとして働いていくうえで必須となってくる。

 「自分で進むべき方向を見定めさえすれば、技術者としていろいろなパスが用意されています。あくまでも特定技術に特化したいという人向けには、認定プロフェッショナル制度というものが用意されています。特化したエリアで誰にも負けないと認定されれば、推薦を受けて、IBMフェローと呼ばれる技術者としては最高の位置に進むことも可能です。それとは別に、ライン管理者としてマネージャに進む道もあります」

 流されるままに仕事をしていくだけでは、技術者として新しい道は開けてはこない。自分で自覚的に進むべき方向を定めることで、技術者としての新しい道が決まることになる。

 「技術は陳腐化するものではあるが、1つの技術をきちんと理解すれば、その知識をベースに応用していくことも可能です。私自身、SNA(Systems Network Architecture)というネットワーク体系について、かなり真剣に学んだ経験が仕事をしていくうえで大きなプラスになりました。TCP/IPが登場したときにも、自分のSNAに対する理解をベースにして考えることができたからです。1つの技術に固執しすぎては駄目ですが、学んだことは次に必ずつながる。そう考えていけば、技術者として仕事をしていくことに可能性を見いだせるのではないでしょうか」。嶺村氏は自らの体験をもとにこうアドバイスする。

企業として変化するために積極的に外部の血を取り入れる

 最後に嶺村氏に、IBMへの中途入社を目指している人にアドバイスをもらった。

 「新入社員とは異なり、中途入社した人には、自分なりのカラー、スタイルがすでに存在します。入社して仕事を始めてみて、どうもIBMのそれとは合わないという場合に、どう対応するのかが大きな課題となります。そこでポイントとなるのは、いかに謙虚に、人の話を聞く姿勢を持つかではないでしょうか」

 IBMは1980年代まではコンピュータの世界を完全にリードする立場にいた。すべてがIBM主導で、顧客もそれに合わせる時代が長く続いた。「だが、現在は違います。IBM自身が変わっていかなければ生き残れないということを痛感し、それを実践する企業となったのです」

 企業として生き残るためには、変革が必要であるというのがIBMのスタンス。それだけに、変化を実現するために中途入社の社員を積極的に採用し、外部の血を取り入れていった。それだけ中途入社しやすい環境になったといえる。

 「現在のIBMは、すべて自社で完結するのではなく、関係会社のITエンジニアの力を束ねて指揮する、オーケストレイト能力が必要な場面もあります。指揮者として、一緒に仕事をしていく人の力を生かし、1+1が2ではなく、何倍にもする掛け算的能力を持った人材が必要な場面もある。自分はこれしかできないと思わず、謙虚に変化を受け入れていく意識を持った人に中途入社してほしいですね」

 

今回のインデックス
 進む道を自分で決めるITエンジニアになれ (1ページ)
 進む道を自分で決めるITエンジニアになれ (2ページ)

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