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経営者から若いITエンジニアへのメッセージ

第10回 グーグルで活躍できるITエンジニアになる方法

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2007/8/23

優れた人材が、さらに優れた人材を引き付ける

 グーグルの人事戦略、人材育成の考え方とはどのようなものなのだろうか。村上氏は、「3つのきっかけ」がグーグルに人材を引き付け、育てていると語る。3つのきっかけとは、「社内の優れた人材」「社内の優れたコンピュータシステム」「サービスに対するユーザーの反応」だ。

 グーグルに優秀な人材が集まっていることは「自他共に認めている」ところだと村上氏はいう。その結果「相互に刺激し合うという、非常にいい環境」がつくられていると考えているそうだ。

 加えて、グーグルには「巨大なサーバ群を基にいろいろなサービスを提供するためのコンピュータシステムが潤沢にある」。「コンピュータサイエンスは、理論だけではなく作り込んでコンピュータの上で走らせて、何かを実現して初めて評価が得られるという傾向のある領域です。その意味でグーグルは、コンピュータサイエンスを学んだ、あるいはその上で仕事をしている方々にとっては願ってもない環境なんですね。自分の理論を実際にコンピュータ上で実現できる、そのインプリメンテーションの喜びを味わえる道具がそろっているということです」

 先ほど述べたようなサービスに対するユーザーの反応が、さらに良い影響を及ぼす。「卵が先かにわとりが先か分かりませんが、優れた人材と優れたコンピュータシステム、自分の作ったものが世の中の人にすぐ使われ、いろいろな反応が出てくるということ、この3つのきっかけが相互に刺激し合いながら、らせん状にいい効果を生んできていると思います。

 グーグルにはある分野でのトップクラスのエンジニアなどが多数参加していて、Tech Talk(社内の技術セッション)という形で、新しいプログラミングのスタイルや技法、サービスの今後の展開などをシェアするチャンスもたくさんあります。そういう人に交ざって仕事をするのも楽しいことでしょうし、先端的な技術開発のさらに先の一歩という話を身近に聞くチャンスも多い。それらのいろいろなことがエンジニア1人1人の自己啓発、自身の発展にうまく作用しているんだろうと思いますね」

サービス精神の旺盛なITエンジニアに来てほしい

 そんなグーグルで求められているのは、どのようなITエンジニアなのだろうか。

 村上氏は1つ目の条件として「優秀な人であること」を挙げる。「理科系の学問というのはどうしても向き不向きがあるので、そういう意味で、コンピュータサイエンスにおいて優秀な人に来てほしい」という。

 2つ目は、作り込みが好きであること。「論文を書くというのも学問を進めるうえで大事なことなんですが、それよりもセオリティカルな方向で、サービスを作って公開し、反応が返ってくるところに喜びを見いだす、ものを作るところに向いている人ですね」

 3つ目は、サービス精神が旺盛であること。「これは技術力とはちょっと違う側面です。自分が作りたいものを作るというのはそれでいいんですが、最終的には多くの人に使われ、喜ばれることが目標です。自己満足だけではだめで、そういう意味でサービス精神が旺盛な人に来てほしいと思います。会話していても盛り上げていこうというタイプの人が向いていると思います。Googleではコミュニケーションの中から新たなものが生まれると考えます。

 ほかにもいろいろあるとは思いますが、こういう点を備えている人が、私がいつも考えているグーグルに来てほしいエンジニアです」

 内部のソフトウェアエンジニアは、どういう人と働きたいと思っているのか。「見ていて思うのですが、きっと、面白いやつと働きたいという感じですね。自分が負けるくらい優秀な人、プログラムを書かせたら『こいつ、うまくやったな』というやつ」と村上氏は笑う。

どんなプロジェクトからも何かをつかみ取り、吸収する

 最後に村上氏に、若手のITエンジニアに今後必要なものについて聞いてみた。「これはもうシンプルで、まずやったらいいと思うのは英語の勉強です」との答えが返ってきた。「これからの時代は、特に20代の若いエンジニアの方にとっては、グローバライゼーションは避けられません。今後、英語でコミュニケーションせざるを得ないプロジェクトに巻き込まれたり、英語でクライアントのお世話をしたりということは避けられなくなります。

 いまの仕事では『何の役に立つんだろう』と思うかもしれませんが、いずれの日にか必ず役に立ちます」と、村上氏は英語の重要性を強調する。

 村上氏は次に、「どんなプロジェクトでも、そこから何かをつかみ取ること」を挙げた。「自分がいままで経験したことがない何かを探し当て、必ず吸収する。それがどんなプロジェクトであったとしても、お給金だけもらっていたのでは絶対に損です。

 『何にもないよ!』と思うかもしれません。納期は迫り、リソースは常に足りなくて、苦しい条件の中でもいいものを作ろうというエンジニア精神を持って頑張っている人も多いと思います。しかし、その中にも必ずいままでにない何かがあると思いますから、それを必ずつかみ取っていくことです」

 さらに、新しいことは「すかさず吸収する」姿勢が重要であるという。「例えば、たまたま一緒に仕事をした他社の人が新しいプログラミング手法や新しい言語の動向を知っていたら、すぐ聞くこと。本当に日進月歩の世界ですから、聞くことは全然恥じゃない。どこで知ったのか、どんな本を読んだのかを聞き出し、ネット上や書店で情報を探して勉強する。技術だけではなく、その背景にある産業の動向なども含めて。

 昔のように、本を1冊買ったら3カ月かけて読もうというのはだめです。休みが土日あったらその2日、そういう短時間で吸収することです。1週間ならともかく、ひと月はだめです。エンジニアの皆さんは、新しい言語を明日までに知っておかなくてはならないというような状況になれば、一晩か二晩で主要なところを押さえていると思うんです。細かいところは最後に確認すればいいんですから。

 そのことを肝に銘じて、新しいことは一気呵成(かせい)に学ぶこと。すぐさま役に立つ知識ではないかもしれないが、そういうことをゴンゴンやっていくと、必ず蓄積されているんです。少しくらい忘れてしまっても、実際に新しい仕事のチャンスが来たときには必ず生きてきます。

 さまざまな技術があり、日進月歩の世界で大変だと思いますが、英語を勉強して、いろいろな仕事から何かをつかみ取り、新しいことはすぐさま吸収する。この3つを実行すれば、必ず素晴らしいエンジニアになって、成長を遂げられると思います」

 グーグル社内には開発エンジニアだけではなく、ISPやポータルなどのパートナーのサポートエンジニアもいる。「いろいろなチャンスがあります。この3つをやれば、グーグルの中にチャンスがあるかもしれないし、それ以外の外の世界にチャンスがあるかもしれない」と村上氏は語る。

 

今回のインデックス
 グーグルで活躍できるITエンジニアになる方法 (心構え編)
 グーグルで活躍できるITエンジニアになる方法 (実践編)

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