第7回 ずっとフリーランスでいられますか?
■なぜ、正社員に戻りたいのか
初めて鎌田さんにお会いした折、私が確認したのは次の2点です。
- 収入が減ってしまうことを受け入れられるか
- 組織人になることの不自由さを受け入れられるか
シンプルにいうと、前述のフリーランスの良さを放棄できるかということです。
結婚している鎌田さんには、転職コンサルタントとしての現実的な見立てを説明し、奥さんとよく相談してから決めるようアドバイスをしました。
1週間後、鎌田さんから当社に電話がありました。本格的に転職活動を進めることを決めたということでした。さっそくお会いして、詳しくインタビューをしました。鎌田さんが正社員への転職を決断した理由は下記のようなものでした。
- 将来にわたってフリーランスで仕事を獲得できる自信がない
- 5年後、10年後にフリーランスで働いていても、いま以上のキャリアアップが描きにくい
- 収入はいつか頭打ちになることが予想される
- 家族計画やマイホーム購入の計画に伴って収入を安定化させたい
見落としてしまいがちなのは最後の家族計画、マイホーム購入計画などです。
働き方は、どんな人生を歩みたいかによって選ぶべきです。家族が増えたり、住宅を購入したりして自分自身が安定すると、働き方も安定させる必要が生じます。例えば住宅ローンを組むときにも、会社員である方が審査が通りやすいという事情もあります。
鎌田さんは、安定を選んだのです。
■そして正社員に
鎌田さんはいくつかの面接を経て、ある大手SIerから採用内定を獲得し、転職をしました。
大手SIerの人事部長からは、フリーランスで働いていた点を強く指摘されましたが、最後には鎌田さんのITエンジニアとしてのスキルと人柄が勝利しました。
フリーランスのときの報酬(売り上げ)は年間900万円、今回のオファーは年俸で600万円でした。大幅な収入ダウンです。でも鎌田さんは、自身の人生設計について熟考した結果、再び正社員になる道を選んだのです。
■働き方を選ぶことは、生き方を選ぶことに等しい
冒頭で言及したように、フリーランスにはメリットとデメリットがあります。フリーランスで働くかどうかを考えるときには、何に重きを置いて働くかを決めることが必要になります。
20代から30代、40代になっても、重きを置くところが同じであれば問題はありません。しかし多くのITエンジニアは、その成長に伴い、求めるものが変化していきます。長くフリーランスで働いていると、安定を求めて正社員になろうと思っても雇用側がそれを許さない場合もあります。組織になじめるかどうかの判断に迷うからです。
働き方は、それぞれのメリットとデメリットをよく考えたうえで、人生設計に沿って決めるべきです。会社員として働くことが幸せなのか? フリーランスで働いた方がよいのか? 答えは人それぞれで、他人がとやかくいうことではありません。
しかし、意思決定の際には多くの具体的な事例が必要になるでしょう。そんなときには転職後のギャップをなくすためにも、人材紹介会社の転職コンサルティングを試してみてください。
今回のインデックス |
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筆者プロフィール |
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント 山口孝之 千葉県出身。大学卒業後、建設会社にて人事、経理などの管理業務を経験。その後ITエンジニアに特化したスカウト型の人材紹介会社に転職し、キャリアアドバイザー業に従事する。その後アデコに参画。キャリアアドバイザーとしては一貫してIT業界を担当。ギャップのない転職を支援するための情報収集能力、転職者側と採用企業側の両方の目線で行うカウンセリングには定評があるという。 |
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