第6回 もうプロマネは嫌。プログラマに戻りたい!
アデコ
辻貴由
2007/10/12
ITエンジニアは、どのような理由で転職を考えるのか。いくつかの事例から、転職者それぞれの課題と解決のプロセスを紹介する。似たような状況に陥ったときの参考になるだろう。 |
転職を希望する人が、その理由としてよく挙げるのが「キャリアアップしたいから」ということ。非常に多くの人が、漠然と「キャリアアップ」という言葉を使います。
では、ITエンジニアにおけるキャリアアップとは、どのようなものなのでしょうか。一般的には「プログラマ」→「システムエンジニア」→「プロジェクトマネージャ」→「コンサルタント」といったところがキャリアアップの王道だと思います。このようにポジションが変わっていくことで、通常は人月単価が上がり、業務上の裁量範囲も広がります。
しかし、すべての転職希望者がこのようなキャリアアップを希望しているわけではありません。これに逆行する、いわゆるキャリアダウンの転職を希望する人もいます。キャリアダウンはキャリアアップに比べ簡単と思われがちですが、実際はそうでもありません。一般的な認識に逆行するキャリアパスを希望すると、思いどおりにはいかないこともあります。大は小を兼ねるという言葉は、転職活動には当てはまらないのです。
今回はこのキャリアダウン転職を取り上げます。プロジェクトマネージャからプログラマになることを希望して転職活動を始めたあるITエンジニアの例を紹介し、キャリアダウンを希望した本当の理由、その課題、解決策を追っていきたいと思います。
■コーディングがしたいのに
宮崎さん(仮名・35歳)は、大手システムインテグレータでプロジェクトマネージャとして活躍中のITエンジニアです。入社以来、製造業向けシステムの開発に携わり、これまでプログラマ、システムエンジニアと順調にステップアップしてきました。顧客との折衝・工程管理・原価管理・品質管理・協力会社管理などの管理業務を担当する宮崎さんは、顧客からも同僚からも非常に信頼が厚く、会社からも将来を期待されていました。
誰もがうらやむようなキャリアを持つ宮崎さんにも、転職を考える訳がありました。ここ数年マネジメント業務が中心となり、手を動かしてコーディングする機会がまったくないことに不満を持っていたのです。
元来、職人肌のITエンジニアであった宮崎さんは、マネジメントよりも美しいソースを記述することに喜びを感じるタイプでした。また穏やかな性格で、交渉ごとはそれほど得意ではない宮崎さんにとって、マネジメント業務のみの毎日には苦痛もあったようです。
しかし、現職ではコーディング中心の業務をしたいといえるような立場ではなく、職種変更は難しい状況です。それに現職にとどまれば、今後もより一層マネジメント業務が増えることが予想されました。
確かに現職にいれば安定が得られ、収入も約束されます。しかし自分が本当にしたいことができる環境を強く望んでいた宮崎さんは、多少の不安要素が含まれることは承知のうえで、思い切って転職することを決意しました。
■面接で不合格になるのはなぜ?
宮崎さんは、転職先はすぐに見つかると高をくくっていたようです。しかし書類選考は通過するものの、面接では不合格ということが数社で続きました。宮崎さんは中堅ソフトウェア企業を中心に応募し、面接ではコーディングの経験とスキルを存分にアピールし、下流工程に注力したいということを率直に述べていました。
「プロジェクトマネージャまで務めた自分が、なぜ不合格になるのだろう」。宮崎さんはその原因が分からずに悩んでいました。ただ、35歳という年齢がネックになっているのだろうと漠然と考えていたのです。
そんな時期に、私は宮崎さんと話す機会を持ったのでした。まずは宮崎さんの考え方や転職理由について、じっくりと聞くことから始めました。
多くの企業では組織構成上、社員の年齢が上がるに伴ってマネジメント業務を任せるようになります。中堅といえる年齢でありながら、一切のマネジメント業務を拒否している宮崎さんの言動に面接で接したことで、企業側はスキルの高さは認めても、採用には不安を感じたということだったのでしょう。
宮崎さんの経験を考えると、やはりシステムエンジニア、プログラマの取りまとめ役としてのポジションを期待されるのが当然です。それを本人がかたくなに拒否していたことが原因だったのです。
冷静に考えれば分かりそうなことなのですが、宮崎さんはあまりに自分の考えに固執し過ぎ、気付いていなかったのでした。
宮崎さんが嫌だったものは、実は…… |
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