自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

組み込みエンジニアは何を見るか

第10回 誰もやったことがないから組み込み開発は面白い

千葉大輔
2008/2/28

情報をどこから取得するのか

 組み込み開発を考えるときに、もう1つ壁になる部分。それは「情報が少ない」ということだ。「お客さんに付いて仕事をするときは、お客さんの要望に合わせてプロセッサやデバイスを組み合わせて開発をしますが、それぞれについてドキュメントの品質や提供のされ方もまちまちです。オープン系であれば、Webを検索すれば出てくることが多いのですが、組み込みの場合、圧倒的に情報が少ない」と坂井氏はその苦労を語る。

 「自分でWebや書籍、製品のドキュメントなどを調べますが、人に聞くこともあります。会社の同僚と休憩中に『こういうことで困っているんだけど』と相談すると、しばらくしてから『そういえばこんな情報があったよ』と教えてくれることがあります。逆に相手が困っていることがあれば、自分ができる範囲で教えることもあります」と坂井氏。自分から能動的に行う情報収集が欠かせないが、一緒に仕事をする人とのネットワーク作りも重要だろう。

 「組み込みエンジニアに限らないですけど、人に聞くことは重要で、そのとき問われるコミュニケーション力というか、対人インターフェイスが大事になってきます」

 コミュニケーションというと、組み込み開発ではハードウェアとソフトウェアのすりあわせが重要だ。しかし、それぞれ価値観や文化が異なる人とコミュニケーションを図るとき、なかなかうまくいかないというケースもあるだろう。坂井氏は「私はあまりコミュニケーションでトラブルになったことはありません」という。うまくコミュニケーションを行うコツはあるのだろうか。

 「まめにコミュニケーションをしています。そのためには、ハードウェアを担当しているエンジニアと、ある程度対等に話せることが必要です。ソフトウェアから見るというよりも『ハードウェア的にこうかもしれませんね』といえることが重要です」

 大学で電気工学を学び、ハードウェアに明るい坂井氏ならではのコメントだ。「回路図も読めますし、仕事で回路図を描いたこともあります。ソフトウェアエンジニアの中で一番はんだごてをつかいます」と坂井氏は笑う。

組み込み開発の楽しさ

 組み込み開発のだいご味について、坂井氏は「人それぞれだと思いますが」と前置きしつつ、次のように話す。

 「組み込み開発の場合、ほかの人とやることがあまり重ならないと思います。いままで誰もやったことがないようなことを手掛けられる。例えば、誰も動かしたことがないようなデバイスを動かせるといった部分は面白いと思います」

 組み込み開発の領域で使われるハードウェアはさまざまだ。新しいハードウェアだけでなく、ハードウェアの組み合わせも幅広い。そういった状況で、まだ誰も踏み込んだことのない領域に挑戦できるチャンスは多い。

 また個人的なやりがいというものも当然ある。

 「やっぱり、お客さんに喜んでもらえて『ぜひ次もお願いします』といってもらえたときはうれしいですね。あと、Bluetoothのプロトコルスタックを利用させてもらっている海外の会社のエンジニアと顔を合わせたとき、『あなたはいいエンジニアだ。うちの製品のことについて、社外で一番よく知っているだろう』と声を掛けてもらう機会があったのですが、これはうれしかったですね」

近距離無線技術を極めたい

 そんな坂井氏のこれからの目標とは何だろうか。

 「特定の技術について深く知っているという人はたくさんいると思いますが、私はこれまでBluetoothを始め、無線LANやNFCなどいろんな近距離無線技術に携わることができました。この近距離無線技術というすこし広いカテゴリのソフトウェアを極めていきたいと思います。近距離無線といえばこの人というようなエンジニアになりたいです」と坂井氏は話す。技術者としての目標を掲げる一方で、マネジメントにも目を向けている。

 「小さい規模の会社だといろんな分野を1人で手掛けることが多いと思います。誰かが仕事を抱えきれなくなったとき、別の人に仕事を任せないといけません。そういった状況では、マネジメント知識や経験は今後必要になるでしょう」

 いまやHDDレコーダーやゲーム機をはじめ、さまざまな製品がネットワークに接続できるようになっている。今後ますます通信の重要性が高まる中、坂井氏の挑戦は続くだろう。

 

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。