自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

コラム:自分戦略を考えるヒント(40)
新しい一歩を踏み出した君に贈る手紙

堀内浩二
2007/4/25

 ○○君、新年度早々のお知らせありがとう。大きな変化になりますね。どちらの道を選択するべきか悩んでいたので、とにかく決めたことでまずはホッとしているのではないでしょうか。

 ご存じのとおり、僕も勤め先がなくなったときに悩み、それが「個人の意志決定」という研究テーマを持つきっかけになりました。個人的な決断や選択について、多くの方々にお話を伺ってきました。今日はその成果を生かして、応援メッセージを贈ります。

 今回の選択が○○君の意に100パーセント沿うものでないことは知っています。最初の希望からすると、第3希望といったところでしょうか。しかし選択した時点では、その選択が良かったのか悪かったのか、成功だったのか失敗だったのかを評価することはできません。

選択の良しあしを決めるもの

 選択の良しあしを決めるのは何か。僕はこう考えます。

 「この選択が良い選択であったと振り返れるようにしたい」

 その思いで、日々の小さな選択を積み重ねていくこと。

 では、「良い」選択とは何でしょうか。目的あっての選択ですから、結果として目的を果たせた選択が良い選択だったということになるのでしょうか。

 僕がインタビューした方々に関していえば、過去の選択に満足しているという人であっても、結果だけを見ると必ずしも成功だったわけではありません。当初の目的に照らせば「失敗」といわざるを得ない人の方がむしろ多いかもしれません。

 それなのになぜ満足なのか。ここが面白い発見なのですが、満足度の高い方は得てして、

 「結果に合わせて目的をセットし直す」

ような解釈のし直しをしてしまいます。

 「まあ、こういう目的でやったことの結果だと思えば、かなりうまくいった」

という感じです。

 ちょっと考えるとこれは本末転倒であって、自分の感情を合理化しているにすぎないように思えます。仕事では許されない考え方かもしれません。しかしそういう方々は、実は(意識しているにせよしていないにせよ)深い考えに立ってそう解釈されているのだと思います。それは、この選択にもまた目的がある、という考えです。

 例えば、転職の目的は職能を高めることかもしれませんが、職能を高める目的として「人間として見識を深める」、さらには「人生を楽しむ」という大目的があります。

 そのような大目的に照らすならば、「結果に合わせて目的をセットし直す」というのは非常に「強い」考え方です。

選択の結果に、「学習」はあっても「失敗」はない

 「人生に消しゴムはない」という格言があります。過去は変えられない、だから一瞬一瞬を誠実に生きろという意味でしょう。たしかに過去の選択や行動は変えられません。ただ、その選択にどういう意味を与えるかは、その人に任されています。最近読んだ本から、「つまらない決まり文句」を引用させてください。

 敗者はそれを失敗だと言い、勝者はそれを学習だという

 小見出しにこのつまらない決まり文句をつけたことを筆者は心苦しく思っている。明々白々なことを言っているだけなのだから。とはいえ正直なところ、筆者はこの言葉を世界中のビジョナリーな人から何度となく聞かされている。

ビジョナリー・ピープル』(ジェリー・ポラス、スチュワート・エメリー、マーク・トンプソン著、宮本喜一訳。英治出版)

 失敗したのではなく学習したのだ。確かにありきたりな言葉です。ただ、こういい換えてみることはやはり大きな効果があります。なぜか。「学習」というのは学んだことを実地に試してみて初めて完結します。これをわれわれは暗黙のうちに理解していて、「学習」ととらえることで自動的に自分に再チャレンジを課していることになるからです。

 僕も創業時のプランとはかけ離れたところにいますが、当時の選択には満足しています。ただ、満足とはいっても、

 「底値で拾えたから、あのときA社の株を買っておいて正解だった」

というような、結果だけからくる満足とは違います。

  • この道でなければ得られない経験ができた。
  • この道を通ったからこそ、この方に出会えた。
  • そして新しい目的も、そのための次の選択肢も、見えた。

 そういう満足です。

○○君、ぜひ「転んでもタダでは起きない」精神で、その選択を「良い」選択にしていってください。

 またゆっくり話しましょう。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役、グロービス経営大学院 客員助教授。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。シリコンバレーに移り、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。帰国後、ベンチャー企業の技術および事業開発責任者を経て独立。現在は企業向けにビジネスリテラシー研修を提供するほか、社会人個人の意志決定支援にも注力している。

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。