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外資系コンサルタントのつぶやき 第16回
コンサルタント会社の弱点とは

三宅信光
2002/10/18

   開発案件を受注したがる理由

 前回まで2回にわたって、SIベンダの上流工程へのアプローチを話題にしました。SIベンダの上流工程への進出は、従来コンサルタント会社が得意としてきた分野への挑戦とも受け取れます。では、一方の大手コンサルタント会社はどのような戦略を練って、その挑戦を退けようと考えているのでしょうか?

 SIベンダが悩む他社との差別化は、大手コンサルタント会社も同様に抱える問題です。戦略系に特化した比較的小規模のコンサルタント会社は別ですが、ある程度以上の規模を持つコンサルタント会社は、大手SIベンダとは異なる差別化の悩みを抱えています。コンサルタント会社が得意とするのは、上流工程からの提案です。上流工程ではアプリケーション開発と違い、提案内容によって差別化は可能な場合が多いようです。もちろん、単純な経理業務のシステム化などであれば差の出しようがありません。が、前回に紹介したように、クライアントの単純なシステム化の要求から経営戦略を理解し、それに沿ったシステム化の提案へとつなげることができます。そこに工夫の余地があるわけです。それならば、コンサルタント会社に死角はないように見えます。

 実は、コンサルタント会社の悩みはその後にあるのです。あまり規模の大きくないコンサルタント会社であれば、コンサルティングのみで仕事をしていく方が効率的です。その分野であれば、比較的利益も高く、割の良い仕事をすることができます。しかし、大手のコンサルタント会社は、数万人のコンサルタントを抱えています。企業の投資額は、上流から下流に行くにつれて大きくなるものです。従って、下流の仕事の方が利益率は下がっても、利益の額としては大きくなります。少数精鋭で戦う戦略系のコンサルタント会社であれば手を出しませんが、大手のコンサルタント会社であれば、どうしても下流域の仕事までこなさなければ組織を維持していくことが難しいのです。

   技術スキルを持つ人材を育成するのは難題

 また、もう1つの問題が人材の育成/養成です。人材の育成は特定の技術的な基盤を持たないコンサルタント会社にとっては常に大きな問題なのです。SIベンダでも同じような問題はあるのでしょうが、自社技術を持っている分だけ、コンサルタント会社よりはマシなのではないかと思っています。

 コンサルタント会社は戦略的な提案をしますが、それにからめてIT関連の提案をすることが多いのは当たり前です。そのため、ITの知識が当然必要とされるのですが、実戦をまったく知らないと、実現性のない(または低い)提案をしてしまいかねません。そのためにも、若いメンバーには実際の開発を経験させ、きちんとIT技術に対する基礎的な考え方を教えることがとても重要なのです。

 いくら会社の経営方針を具現化する提案をしても、それが現実的な提案でなければ採用してもらえませんし、仮に採用してもらったとしても、実際にシステムを構築するときにコンサルタント会社自身がほぞをかむことになります。なぜなら、システムの構築で失敗すればクライアントの信頼を失うからです。そうした信用の失墜は、後々開発案件を獲得する妨げとなり、若いメンバーが経験を積む場を失うという悪循環をもたらしかねません。

   開発を経験していない若手の提案案件の行方

 実際に私が携わったプロジェクトでもそういった状況に直面したことがあります。1つ例を挙げておきましょう。会計システムを手始めに、ある大手企業の基幹システムをゼロから構築し直すプロジェクトでのことでした。私は会計システムの担当でした。その隣のサブプロジェクトでは、まだシステムの構想を練っていた段階から担当していた若いメンバーが、そのままそのサブプロジェクトのシステム開発の現場に配属されたのです。もちろん、彼らにはシステム開発の経験はありませんでした。

 彼らはクライアントへの提案段階では、業務の改革、それに即したシステム提案ということで、意気込んで仕事をしていたようです。しかし、彼らが提案したシステムは、ほとんど机上の空論で、システムとしての実現性をまったく考慮していないものだったようなのです。しかし、経験のない若いスタッフが提案した内容をクライアントが受け入れたため、そのまま基本設計からコーディングへと移っていったのでした。そこで、システム提案段階からかかわっていた若いメンバーと、実際の開発を行う段階で加わったメンバーとの間で、深刻な対立が生じたのです。

 システム構想に携わったメンバーが提案した内容を、システムに落とし込もうとするとどうしても無理があり、「そんなシステムは作れない」というのが、開発段階から加わったメンバーの意見でした。ついにはグループ同士のいがみ合いから口も利かない状態となり、当然のことながらサブプロジェクトはうまくいかず、暗礁に乗り上げたのです。

 そうした状況の中で、システム提案段階からかかわったメンバーの中から、「自分たちはシステムなんか知らなくてもいいはずだ」といい放った者がいると聞いたときは、さすがに暗たんたる気持ちになりました。まあ、売り言葉に買い言葉でそんなことをいったのだと思いますが、システム提案段階からのメンバーの一員として、作れないシステムを提案してしまったことに対する反省はないのかと、怒りすら覚えたものです。

 結局そのサブプロジェクトによるシステムは、当初提案した半分ほどに機能を縮小して、ようやくなんとか完成しました。

   開発を経験していない若手の提案案件の行方

 私はそのクライアントと現在もお付き合いしているのですが、そのサブプロジェクトで失った信用は大きいものがあります。まあ、そのサブプロジェクトに直接かかわった部門の人間は、だれもかれもまともに話してもらえず、クライアントと会話できるようになるまでには、だいぶ時間が必要でした。こちらがどんな提案をしても、「最初の提案が実現されていれば、そんな追加開発はいらなかった」などといわれると、返す言葉がありません。すごすごと提案書を持ち帰ることぐらいしかできませんでした。

 それでも地道に話をし、やっとの思いで(数年もかけて!)信頼を得られるようになったと思っています。それでも、いまだに「あなたの会社に開発を頼むのはどうだろうか」といわれますが……。そのため、システムの提案などは受け入れてもらえても、開発となるとほかのベンダへ流れてしまっています。

 この例は、開発経験に乏しいメンバーに上流工程を任せてしまったために起きた失敗事例です。コンサルタント会社が得意とする分野は、確かに企業戦略に沿った上流工程にあります。入社してくる新人もそうした戦略的な話を好むのも事実です。そのため、システム開発の実践的なスキルを軽視しがちであることは、以前お話ししたとおりです(「第5回 技術スキルだけでは食えない」と「第11回 コンサルタントになる前に磨いてほしい能力」)。

 しかし、上流工程の仕事も実現可能であるかどうかの見極めがつかなければ、できるわけではないのです。社内でも若いメンバーの経験不足を憂う声は上がっていて、トレーニングの充実、開発経験のある中途採用の強化などを推進しているようです。もちろん、開発案件を取ることが最も効果が高いわけですから、積極的に取りに行ってはいるのですが、なかなかうまくはいかないようです。それに、高度な技術スキルを持った人材を採用しても社内制度の不備や企業カルチャーの相違から、採用した人材がなかなか定着しないようです。

   継続的な関係から提案が要求される時代

 コンサルタント会社が実際の開発業務を受注しようとする直接の理由は、人材育成のためではありません。前述したように、下流域の利益は率でこそ上流工程に劣りますが、利益額は上流工程をはるかに上回ります。数万人規模の組織を持つコンサルタント会社にとってみれば、大きなパイ(甘い木の実)がある下流域に、いかに食い込めるかが死活問題となっているのです。さらに、クライアントの戦略に沿った提案をするためには、従来のように、その場その場で提案するのではなく、継続的な関係からの提案が要求されるようになっているのです。次回は、こうした流れにコンサルタント会社がどう対応しようとしているのかを、お話ししようと考えています。

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