第1回 起業の土台をつくったエンジニア時代
語り手 鈴井広己(仮名)
聞き手 渡辺知樹(ランディングポイント ジャパン)
2008/11/21
■次の転職のテーマは、信頼できる営業のプロに会うこと
鈴井氏 そんな日々を送っているうちに3年が過ぎました。自分の所属する部署は急激に拡大しました。米国本社から要求されるビジネス上のターゲットは増え続け、お客さまと一歩一歩信頼関係を築いていくよりも、短期で利益率の高い案件のみを獲得するよう企業の方針が変わり、技術的なチャレンジは減っていきました。
課題だったヒューマンスキルやビジネススキルも一通り学べた感触が得られたため、そろそろ次の転職を……ということで、次のテーマを考えました。
このころ、周りには起業する人が何人もいました。しかし、どの企業も技術は素晴らしいのに、企業としての成長がそれに見合っていないことに気付きました。私には、その理由は営業力の弱さにあると分かりました。つまり、彼らは素晴らしい技術を持っていて、お客さまとの信頼関係もできているのですが、既存のお客さまを相手にするまでが彼らのビジネスの限界で、新たなお客さまと出会い、関係を築いていくことがあまりうまくいっていないように思えました。
もし、しっかりした営業担当者がいれば、お客さまの企業の内情、システム構成、何よりキーパーソンがつかめ、その企業のいまの課題、今後のプロジェクトの予定、次に開発案件が発生するタイミングなども分かってくるのです。
というわけで、次の転職のテーマは、起業後のための信頼できる営業のプロに出会うことでした。そういう人は上流を理解しているはずだと考え、ビジネスコンサルティング系企業の中から転職先を探し、大手コンサルティングファームからいくつか内定をもらいました。
そして、当時勤めていた企業に辞表を出したところ、私の運命の時計を早める1本の電話がかかってきたのでした……。
<渡辺の解説> |
起業という目標を持っていた鈴井氏のサラリーマン時代を振り返ると、目標を見すえた戦略的な思考や行動がうかがえる。また、決して楽な道ではないが、自分自身の人生を悔いなく生き抜こう、世間の常識や他人の意見にとらわれずに自分の立ち位置を決め、周囲との関係を築いていこうという強い意志が見られる。 |
起業家への十カ条 その一、その二 |
一、お客さま、仲間、社内、関係会社など、自分と関係する人たちとの信頼関係をつくることに注力すべし 二、1日1歩でも、自分の幅を広げ、自分を成長させるべし |
◇◇◇
次回は、実際に起業するまでの鈴井氏の奮闘を見てみたい。
注意:登場する人物は実在します。よって、了承を得られた人物以外、団体名・個人名は伏せています。
聞き手・解説者プロフィール |
渡辺知樹●外資系企業でのISMS導入、SOX内部テストプロジェクトなどをリードし、現在も情報リスク管理や内部統制システムの整備を主な業務としている。現在、合同会社ランディングポイントジャパン代表として、後進の指導にも当たる。 公認情報システム監査人(CISA)。公認情報セキュリティプロフェッショナル(CISSP)。 |
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