第3回 ITエンジニア経験を生かし法律のプロに!
加山恵美
2007/12/21
エンジニアをした経験が、ほかの業界、業種、職業などに移っても役立つのか、役立たないのか。その点を、実際にエンジニアとして働いた経験を持つ人に聞く。結果は? |
■弁護士の数はITエンジニアの約3%
近年はテレビのバラエティ番組に弁護士が登場するようになったが、多くの人にとって弁護士は依然遠い存在だ。企業の法務担当ならともかく、弁護士に相談するのはよほど深刻な事態か大金が絡む問題という感覚が日本では根強い。
実際、日本に弁護士は何人いるのだろうか。日本弁護士連合会に弁護士として登録しているのは、2007年12月1日現在で2万4301人だ。一方、2005年実施の国勢調査のデータによると「IT業務従事者」は84万9500人とある。弁護士はIT業務従事者の約3%しか満たない希少な職業だ。
また狭き門である。近年では法科大学院が登場し、法曹(弁護士や司法官)は増える傾向にあるが、まだまだ難関である。法務省が発表している旧司法試験合格者数によると、新司法試験開始前の合格者は年間で1400人前後で合格率は3%台。今年(2007年)は新旧司法試験合わせて合格者はようやく2000人を超したところだ。
だが、この難関の試験に合格したITエンジニア出身の弁護士がいる。弁護士法人 古田&アソシエイツ法律事務所の弁護士、佐藤未央氏だ。ITエンジニアを8年ほど経験して、今年9月から当事務所の弁護士となった。主に企業法務を担当し、現在では各種契約書や株式公開をサポートしているという。
■ITエンジニアとしてパッケージ開発をするも
弁護士法人 古田&アソシエイツ法律事務所 弁護士 佐藤未央氏 |
佐藤氏は学生時代、政治経済学部で経済と政治を専攻していた。ITエンジニアとして就職した理由を聞くと「文系のシステムエンジニアが台頭し始めたころで、就職活動をしてみるとシステムエンジニアはクリエイティブで興味を持ちました」と話す。
当時は就職氷河期ではあったが、IT業界はエンジニアが不足していたため、佐藤氏のITエンジニアへの道はとんとん拍子に進み、最終的にシステム開発会社に就職が決まった。ただ学生時代にプログラミングの経験がなかったため、コンピュータに関するスキルは就職してから学んだ。
最初に就職した会社はパッケージ開発から受託開発まで請け負うシステム開発業務が中心だった。佐藤氏はパッケージ開発の部署に配属され、主に倉庫の在庫管理や人事の勤怠管理などのパッケージ開発に携わった。Visual Basicでプログラミングを行い、営業と一緒に顧客とカスタマイズの開発内容の打ち合わせ、パッケージの操作方法を顧客に教えるインストラクターをした。ITスキルとコミュニケーション能力を生かした仕事だった。
2〜3年ほど働いたころ、佐藤氏はITエンジニアという職業についてあらためて考えるようになった。「ITエンジニアは思ったとおりクリエイティブで、仲間と一緒にシステムを作りあげることを楽しいと感じていました。しかし一生続ける仕事として腹を据えられるかというと、迷いがありました。実は法律のプロフェッショナルになることに興味があり、弁護士への道が気に掛かっていました」と佐藤氏は話す。
■法律とITには意外な共通点がある
実は佐藤氏、子どものころから弁護士に興味があったという。社会人になると会社をとりまくさまざまな法律にも目を向けるようになった。「法律問題は日常生活でもあらゆるところに存在しており、弁護士が活躍するフィールドも幅広くあります。法律のプロフェッショナルになるには深い知識が必要になりますが、とてもやりがいのある職業と思えるようになりました」と、一生の職業として弁護士を見るようになった。
だがなんといっても、司法試験は難関である。学生時代に専攻した政治や経済は法律と無関係ではないものの、法学部ではなかった。加えて当時はまだ法科大学院がなかったので、弁護士になるには、司法試験の予備校で受験勉強をすることが多かった。仕事と受験勉強との兼ね合いもうまくこなさなくてはならない。
迷いつつも、幸いなことに佐藤氏の周囲には「挑戦してみてはどうか」と佐藤氏を応援する声があったという。会社には法学部出身の上司もおり、「法律とITは意外と無縁ではないのですよ。小さいことを積み重ねていくところは同じです」とアドバイスしてくれた。
そうして最初の会社に入社して4年目に司法試験を目指すために退職した。だが無職で受験勉強に専念するわけではなかった。知人の紹介でベンチャー企業に就職し、仕事と受験勉強を両立する生活を始めた。
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