日本のITエンジニアはここがいい! ここがダメ!
長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2006/9/16
■日本の戦略は何か
ナイル氏は日本企業や日本人ITエンジニアに提案したいこととして、「日本は日本の戦略を考えるべきです」という。「アウトソーシングできる仕事はたくさんあります。オフショア開発の盛んな米国では、コアなエリアをきちんと分析してそこに注力し、周辺はアウトソーシングで安くする体制ができています。日本のIT企業はそこまでは考えていないと思います。とてもコンサバティブ。もうちょっと積極的にアウトソーシングをやってみればどうですかといいたい」
「企業としてコアの部分を分析してプランを立て、R&D分野などに優秀な日本のITエンジニアを充てて、開発の上流部分や品質チェックを担当し、開発部分はアウトソーシングする。そうすれば日本の企業にとって一番利益が出るのではないかと思います」
そんなナイル氏の目標は、将来、自分の会社を立ち上げることだそうだ。「日本のお客さん、日本市場にとても興味があります。将来は自分の会社を持ち、経営をしながら、現在のようにIT分野でインドと日本の仲立ちをするような仕事をするのが目標ですね」と夢を語った。
■11カ国のITエンジニア
タタ コンサルタンシー サービシズ ジャパンには、約300人のITエンジニアが在籍する。そのうちインド人は215人ほど。残りの約85人の多くは日本人だが、日本人以外に米国、フランス、中国、韓国など、さまざまな国籍のITエンジニアがいるという。インドと日本を入れて11カ国に上る。彼らはもともと日本で勉強もしくは仕事をしており、日本語で顧客との折衝ができてブリッジの役割を果たせる人材として採用された。ナイル氏もそのうちの1人だ。
タタ コンサルタンシー サービシズ ジャパン 代表取締役社長 梶正彦氏 |
タタ コンサルタンシー サービシズ ジャパン 代表取締役社長の梶正彦氏は、日本法人の役割を次のように説明する。「われわれのバリュープロポジション(価値命題)は、プロジェクトの初期段階、顧客とのコンタクトの部分は日本でオンサイトで行い、開発部分はインドをメインにオフショアで行うことです。日本オフィスの役割はその仲立ちをきちっとやること。これができるのが強みです。
また、いわゆるブリッジSEとして日本にやってくるITエンジニアに、日本の顧客のプロジェクトの進め方などに関してトレーニングを行うことも重要な役目です。例えば、日本の顧客の要件を米国のやり方で受けてしまうと、理解の足りない部分が出てきます。プロジェクトを受注する段階から、どのように進めるかを考えながら提案をする必要があります。
トレーニングを通じて知識や経験を集積し、どのITエンジニアも日本の仕事の進め方にできるだけ早く慣れるようにしています」
■海外のITエンジニアに「置き換え」られないために
ナイル氏のように、日本の顧客とオフショア開発のITエンジニアを結ぶ役割のITエンジニアが大いに活躍し、IT業界においてインドや中国をはじめとする国々の存在感は増すばかりである。一方、日本では「理系離れ」がささやかれ、ITエンジニアの不足が問題視されている。グローバルでの競争が激化すると予想される中、日本のITエンジニアが国際競争力を向上させていくにはどうするべきか。
梶氏は、日本のITエンジニアはマネジメント能力を身に付けるべきだと指摘する。「2007年問題を目前にして、日本のITエンジニアの数が圧倒的に足りないというのは明らかです。今後は中国やインドのITエンジニアをどうやってマネジメントして、プロジェクトを遂行するかという能力を身に付けないといけないと思います」
日々インドの優秀なITエンジニアと接する梶氏は、そもそも日本の教育について不安があるという。「インドのITエンジニアは産学連携でITを学び、競争をくぐり抜けてきている人たち。日本のITエンジニアはキャリアの出発以前、学校教育の段階でインドとは差がついてしまっている」
梶氏は日本のITエンジニアに対して「発想の転換をしなければならない」と断言し、開発だけではなくマネジメントができるようにならなければ「ほっぽり出される」可能性があるという。「同じようなこと(開発)をやるのなら、同じ値段でやらないと競争力がないですから」
「付加価値というか、売れる価値を身に付けなければいけない。ただ開発しているだけでは、海外に置き換えられてしまう危険がある。必ずそうなるとはいわないが、そういう方向に向かっていると思います」
■企業の競争力を支えるという気概を持って
梶氏は、日本のITエンジニアにはもっと誇りを持って仕事をしてもらいたいと語る。「会社を動かすにしても、ものをつくるにしても、いまではITの良しあしがすべてを左右する。ITは見た目ではクオリティが分からないが、皆が思っている以上に会社の命運を左右するもの。それにかかわっていることの喜び、生きがいを、もう一度思い起こしてほしい」と訴えた。
「いまや企業は、世界的な競争力があるかということを判断される段階に差し掛かっている。5番、6番が急に1番手になるようなこともある激烈な競争です。そこで他社との差別化を実現できるのがIT。それを支えているという気概を持ってほしい」
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