後編 女性部下を「女性」ってひとくくりにしてませんか?
加山恵美
2008/6/26
■ケース2:昇進を前に不安な気持ち。上司に聞いてほしかったのに
昇進が決定した29歳の女性社員vs.男性上司 |
これまで一生懸命仕事に打ち込み、昇進が決定した女性。しかし、「いつまでこんなふうに働き続けられるのだろうか」という、漠然とした不安も持っている。
女性 | 「大塚さん、ちょっといいですか」 |
男性 | 「おう、なんだ」 |
女性 | 「昇進するのはうれしいのですが、ちょっと不安で。大塚さんは昇進してよかったですか?」 |
男性 | 「そうだな。入ってくる情報の量や質も違うし、責任もあるし、昇進してよかったよ」 |
女性 | 「そうですか……。でもなんか……」 |
男性 | 「(イライラして)で、君は結局どうしたいわけ?」 |
女性 | 「えっ……」 |
【アドバイス】 上司は部下が何をいいたいのか分からず、もどかしく思ってしまったようですが、ここは辛抱強く話を聞いた方がよかったですね。時折うなずき、鏡のように共感を示すことで彼女の不安は静まったかもしれません。 部下は「自問自答してもよく分からないので、ちょっと聞いていただけますか? 聞いていただけるだけでいいんです」と伝えてから話すのもいいかもしれません。 |
■ケース3:妊娠を告げたら引き継ぎの話のみ。会社だから当たり前?
妊娠3カ月の女性社員vs.男性上司 |
女性はプロジェクトのリーダー。少し前に妊娠が分かった。出産予定日はプロジェクトが大詰めを迎えるところなので、なかなかいい出せない。「今日こそは相談しないと」と意を決して上司の前に。
男性 | 「このプロジェクト、絶対成功させよう! 君なら安心だよ!」 |
女性 | 「ちょっと、お話が」 |
男性 | 「何?」 |
女性 | 「実は妊娠しまして……」 |
男性 | 「えーっ。プロジェクト、どうしようー。予定日はいつなの?」 |
女性 | 「(なによ。まずは「おめでとう」じゃないの?)……予定日は○月です」 |
男性 | 「うわー、カットオーバー前か……。参ったな、引き継ぎできそうな人はいる?」 |
女性 | 「えっと(やば。考えてなかったな……)。○○さんなら問題ないと思います」 |
男性 | 「そうか。じゃ、仕方ないな。引き継ぎ、よろしくね」 |
【アドバイス】 上司は部下から妊娠の知らせをうけたら、どんな状況でもまずは「おめでとう」といいましょう。また母体や子どもの健康を気遣うことも大事です。 部下は、リーダーなら引き継ぎ案も持参したうえで相談した方がよかったですね。 |
3つのケースを通じ、GEWELは「自分自身のコアバリューをしっかりと定めることが大事」と説く。女性の場合は特に結婚すると家事、出産、育児と向き合うことになる。こうした仕事以外のことにどう優先度をつけ、どれだけの時間や労力を割くのか。自分で自分のポリシーを決め、実行することが大事だということだ。
■「もやもや」を脱し、自分なりの答えを
クロージングにはWomen's Initiativesの総責任者であるアクセンチュア 公共サービス本部 エグゼクティブ・パートナーの本井稚恵氏が登壇した。本井氏は3月8日付の朝日新聞土曜版「be on Saturday」に掲載されたカルロス・ゴーン氏のインタビュー記事を引き合いに出して話をした。記事では「働く女性が10年、20年後に成功するには何が必要ですか」という問いに対し、ゴーン氏は「女性はたくさんの『もやもや』を抱えて生きていますね」と指摘していた。
「もやもや」とは漠然とした疑問や不安であり、将来の指針が定まっていないことの表れであるようだ。例えばいつまで仕事を続けるのか、育児しながらプロフェッショナルができるだろうか……などだ。ゴーン氏は「1つ1つの疑問を具体的に解決し、それぞれの局面で選択しなくてはならないのです」と説く。そして、それができなければ「多くの機会を失ってしまいます」と警告している。
本井氏もこれに同感のようだ。「悩むことは避けられないが、できるだけ早くもやもやを脱した方がいい。早く自分自身の答えを見つけることが大事だ」と会場の女性社員に語った。
日本におけるアクセンチュアのWomen's Initiativesの活動はまだ3年目。本井氏はまずは5年後を見据えている。「5年後に『アクセンチュアは変わったね』といってもらえるようにしたい」と話し、現場の声を取り入れながら活動を進めていきつつある。Women's Initiativesの挑戦は、まだまだ続くだろう。
@IT自分戦略研究所の関連記事
子育てと仕事の両立、悩むよりまずチャレンジ
連載:ITエンジニアの働く環境を考える
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。