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短期集中連載! ITエンジニア向上プロジェクト

第3回 30代前半で年収1000万円を突破する秘密

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2006/10/12

最新の技術を求めて転職を決意

  高収入を得られるITエンジニアの傾向がつかめたところで、続いては実際にITエンジニアとして30代前半で1000万円を稼いでいた方に話を聞いた。

 企業のIT部門の社員教育や資格取得のための、教育サービスを提供するアイテック 業務管理本部 本部長 岡村康一郎氏はまさに前述の傾向にぴたりと当てはまる。

 岡村氏は大学卒業後、1994年に三菱電線工業に入社。最初はイーサネットブリッジのソフトウェア開発を行っていた。当時は現在のようにイーサネットが万能ではなく、トークンリングや音声回線なども用いてデータのやりとりを行っていたインターネット前夜。「そこで仕事をしていくうちに、通信って面白いなと思うようになりました」

アイテック 業務管理本部 本部長 岡村康一郎氏

 その後、イーサネットスイッチの開発などを行ったが、岡村氏は当時不思議に思ったことがあるという。「普通の製品の場合は差別化のポイントを作って製品を作るのですが、通信の世界では製品よりも技術の標準化が先だったり、標準化に携わったメンバーが作った製品が良しとされていたことが不思議でした」

 岡村氏は、「新しいものを作りたいが、標準化が良しとされる中でどこを差別化したらいいのかジレンマを感じていました」という。また通信の世界ではアメリカが先行していたので、アメリカで標準化された技術を使ってもなかなかアメリカ以上の製品は作ることが難しかった。

 そのため自社製品の開発と並行して、代理店としてアメリカのベンチャー企業の製品を販売することになった。製品を扱っていく中で岡村氏は「いまのままではあまり情報も入ってこないし、当時新しかったATM(Asynchronous Transfer Mode)などの技術にもっと触れたい」と思い、その製品を作っていたベンチャー企業の日本法人に転職を決意した。外資系企業への転職だったが、英語は学生時代に論文を読むなどしていたのでそれほど抵抗はなかったという。

「エンジニアだから」といって仕事の範囲を決めない

 転職先では販売代理店のサポートなどを行った。サポートといっても製品の導入支援など現場よりの仕事をすることが多く、「現場の仕事を離れるわけでもなく、アメリカからの情報も早く入ってきたので良い環境でした」と岡村氏。英語も仕事でコミュニケーションをしていく中で上達していった。

 転職をすると年収はそれまでの1.5倍に増えたという。その後、会社が買収されたことを機に年収はさらに増えた。「会社が買収された後、給与体系が変わったのですが、ベースの給与は変わらずにインセンティブが加わったので一気に増えました」

 買収後もそれまでのセールスエンジニアというポジションは変わらなかった。しかし、販売代理店が製品を売りやすい環境の構築ということを次第に考えるようになったという。「Webサイトを作るのを手伝ったり、カタログ作りを手伝ったりといろんな仕事に首を突っ込むようになりました。あまり仕事の範囲を決めないようにしていました」

 技術以外の仕事が増えていったが「あまり抵抗はなかったですね」と岡村氏は話す。「どうやって売り上げを伸ばすのか代理店の営業の人と考えることが楽しかった」という。技術を全面に出す仕事ではなかったが、当時の自身の職種を岡村氏は「営業ではなくて、ITエンジニアだったと思います」と振り返る。「技術に裏打ちされた言葉が顧客に伝えられるし、エンジニアと営業の製品の売り方は違うと思っています」

一歩一歩ITエンジニアとしての経験を積み重ねていった結果

 仕事の面では順調だったが、買収後はそれまでのベンチャーと比べて大きい規模の企業になった。そのためか製品の開発スピードなどが落ちていったという。扱っている製品は多く、ほかの製品にも興味があって扱ってみたいと考えていたが、部署が異なるので結局扱うことができなかった。

 会社への不満を感じ始めたちょうどそのころ、早期退職プロジェクトがあり、岡村氏は再度転職をすることに決めた。それまでと同じくネットワーク機器メーカーに転職し、業務も変わらなかった。しかしその後、かつての上司に誘われる形で現在の職場に転職することにした。岡村氏は「それまでの仕事をずっと続けていられるだろうかという疑問もありましたし、アイテックが行っている、技術者の教育という事業にも興味がありました」と話す。

 岡村氏は現在、業務管理というこれまでの業務の延長にない仕事を行っている。「いまの業務を始めて、前よりもエンドユーザーの気持ちが分かるようになりましたし、会社をつくるという体験をさせてもらえているということはすごく面白い」

 ITエンジニア時代の岡村氏を支えていたものは、岡村氏の核にあったネットワークの技術と、顧客や営業と接する中で磨かれていった折衝力や企画力といった能力だ。これらの能力が岡村氏のITエンジニアとしての評価を高め、結果として高収入につながっていたといえる。

 そしてエンジニア時代に培った経験は、いまの業務でも生かされている。岡村氏は「会社の仕組みや法律といったものは、通信と似ている」という。通信も法律もあるプロトコルに従って自分ならどうするかという部分は変わらない。「こういう枠組みで当てはめてしまえば、どんなことでも一緒だと思えるようになりました」

 IT業界の景気が回復してきたからといって、すぐに高収入を得ることは難しい。その中でも高収入を得られやすい技術があるからといって、そのときそのときの時流に乗るのは、その後の将来を考えたとき必ずしもプラスにはならない。「自分の業務はここまで」と枠を決めずに、目の前にある仕事や目標に果敢にチャレンジしていく姿勢が結果的に高収入につながるのではないだろうか。

 

今回のインデックス
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