第2回 イナバ君、簿記を覚えてパン屋さんの決算書を作る
日本公認会計士協会準会員
小澤文子
2008/5/23
分類名 |
ホームは どちら側? |
借方に記入するのは どんなとき? |
貸方に記入するのは どんなとき? |
資産 |
借方 |
増えたとき |
減ったとき |
負債 |
貸方 |
減ったとき |
増えたとき |
純資産 |
貸方 |
減ったとき |
増えたとき |
収益 |
貸方 |
発生したとき |
|
費用 |
借方 |
発生したとき |
|
表1 取引の8要素の関係 |
へ〜っ、簿記の世界は案外システマチックなんですね! 少しとっつきやすくなった気がする!
ここでもう1度おさらいしてみましょう。どうして取引先との契約は簿記で扱う「取引」にならないのか、分かったかな?
はい! 契約しただけでは、資産・負債・純資産・収益・費用のどれも増減しないからですよね?
そのとおり! ほかに、「地震でパンを作る機械が壊れた」なんて場合は、一般的には誰とも取引していなくても……。
機械という資産が減少しているから、簿記上では「取引」になると思います!
完ぺきです!
(2)勘定科目を使って取引を仕訳しよう
さて、簿記で扱う「取引」が分かったら、次はそれを仕訳しましょう。仕訳によって、取引は(会社の立場から見た)2つの視点により分解されるのよ。具体的には、取引を表す勘定科目と金額を決定して、借方と貸方に分けていくの。勘定科目は、いままでに出てきた現金・機械・借入金などのことで、取引の計算単位のようなものね。
「僕が株主になって、貯金10万円を会社に出した」という取引は、
現金が10万円増えた(資産の増加)
資本金が10万円増えた(純資産の増加)
と分解すればいいのかな?
そうそう、その調子! 同じように、「銀行から90万円借りた」という取引は、
現金が90万円増えた(資産の増加)
借入金が90万円増えた(負債の増加)
となるわけ。
(3)仕訳を仕訳帳に記帳しよう
ここからは、簿記の流れに沿って仕訳を記録していきましょう。いまの世の中、ビジネスでもプライベートでもパソコンを使うことが当たり前だけど、ここではあえてパソコンから離れて、手作業でいくわよ!
パソコンのない生活なんて、僕には考えられない……。
はい、ではノート2冊と筆記用具の準備をお願いしまーす。ノートの表紙には、1つは「仕訳帳」、もう1つは「総勘定元帳」と書いてね。簿記の世界ではこの2つの帳簿を主要簿と呼んでいて、取引が発生する都度、主要簿に記帳していくの。
【キーワード】主要簿 |
|
帳簿名 |
何のための帳簿か? |
仕訳帳 | 取引を仕訳という形式で記入するための帳簿 |
総勘定元帳 | 仕訳帳から、勘定科目ごとに情報を集めた帳簿 |
さらに、主要簿のサポート的な役割を果たす補助簿というものもあって、例えば、売上情報を得意先別にまとめた「得意先元帳」や、仕入情報を仕入先別にまとめた「仕入先元帳」などがあるのよ。今回は、決算書を作るための基礎資料となる主要簿だけを作ってみましょう。
よし、さっそく仕訳帳のレイアウトを決めることにしよう! 仕訳帳に必要な項目は何ですか?
最低限必要なものとしては、取引日、借方の勘定科目、貸方の勘定科目、金額、取引に関する説明(摘要と呼ばれる)あたりね。ほかに必要だと思う項目も追加してかまわないから、イナバ君が考える仕訳帳を作ってごらん。
それじゃ、仕訳をユニークに識別するための仕訳bニ、勘定科目に勘定科目コードを追加しよう。勘定科目にも内訳を付けたら便利かな。
うんうん、いい考えね。そういうプログラマ的視点は、会計に携わるうえでとても役に立つと思うわ。勘定科目コードについては、一般的によく使われているJIS規格のものがあるから、それを参考にしてみてね。勘定科目の内訳は、ここでは補助科目という言葉を使っていきましょう。
前回想定した営業活動を参考に、2007年4月から6月までの取引を仕訳帳に記帳してみたので、見てください。
仕訳 |
取引日 |
借方 |
貸方 |
仕訳摘要 |
||||||
勘定科目 |
補助科目 |
金額 |
摘要 |
勘定科目 |
補助 科目 |
金額 |
摘要 |
|||
001 |
2007/4/20 |
1111 現金 |
50,000 |
8300 売上 |
A社 |
50,000 |
食パン |
現金売上 |
||
002 |
2007/4/25 |
8300 給料 |
25,000 |
1111 現金 |
25,000 |
給与支払 |
||||
003 |
2007/5/20 |
1111 現金 |
100,000 |
8300 売上 |
B社 |
100,000 |
菓子パン |
現金売上 |
||
004 |
2007/5/25 |
8300 給料 |
25,000 |
1111 現金 |
25,000 |
給与支払 |
||||
005 |
2007/6/20 |
1111 現金 |
150,000 |
8300 売上 |
A社 |
150,000 |
食パン |
現金売上 |
||
006 |
2007/6/25 |
8300 給料 |
50,000 |
1111 現金 |
50,000 |
給与支払 |
表2 イナバ君が作成した仕訳帳イメージ |
なかなか上出来! このように、仕訳帳には取引を発生順に記帳していくのだけれど、仕訳帳だけでは「現金だけの“ある時点での残高”や、一定期間の“借方発生額・貸方発生額”を見たい」といったニーズにはすぐには対応できないでしょ? そこで、総勘定元帳の登場よ。
仕訳帳から総勘定元帳に転記しよう |
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