CMM以上に注目したい
新しいソフトウェア開発プロセス改善PPA
堀田勝美(NTTソフトウェア
ISO/IEC TR 15504 PPA Lead Assessor)
林章浩(NTTソフトウェア
ISO/IEC TR 15504 PPA Lead Assessor)
2002/4/12
4 PPAの適用事例 |
■PPAによるプロセスアセスメント事例
それでは、PPAによるプロセスアセスメントの事例を使って、PPAに期待できる効果を確認しよう。PPAアセスメントには5ステージある。開始、準備、評価、分析と報告、完了である。第2ステージの準備の部分でアセスメント適用範囲を選定し、第3ステージの評価を実施して、第4ステージの分析と報告で本プロジェクトのプロセス改善領域の識別を実施した(図12)。
図12 アセスメントの5ステージ(段階) |
(1)アセスメント適用範囲の選定
この事例では、開発プロジェクトの推進に当たり、自社組織のニーズおよびビジネスゴールを考慮に入れ、プロジェクト推進のリスク分析などを狙いとしてアセスメントを行った。選択したプロセスは、リスク管理、プロジェクト管理、要求事項管理、戦略管理の4つ。プロセス能力は、本プロジェクトで必要十分と想定されるレベル3までを選定した。
(2)アセスメントの実施
アセスメントは、PPAリードアセッサが、主にインタビューと文書レビューによって実施された。PPAでは少なくとも2名以上のアセッサでアセスメントを実施し、プロジェクトに提示されるアセスメント結果は、アセッサチーム内で合意したものである。アセスメントを実施して得られた結果(プロファイル)を図13に示す。
図13 プロファイルの事例 |
(3)プロファイル分析による改善プロセスの識別
PPAアセスメントのプロファイルは、図のように可能な限りビジュアルに提示することにより、プロセスの弱みを識別しやすいように工夫する。
本アセスメントでは、図示したプロファイルからレベル2のQC(品質制御)に共通した弱みがあることに気付く。また、要求事項管理プロセスのPM(プロセス管理)が弱いことが分かるだろう。これがプロセス共通にQCが弱いことの原因になっていると考えることができる。また、レベル2に弱みが多いにもかかわらず、レベル3の結果が良い。それから、対象プロジェクトはしっかりした組織標準があるにもかかわらず、それをテーラリングして十分に使いこなせていないことがうかがえる。
これは簡単な事例であるが、PPAではアセスメント対象となったプロジェクトの強み・弱み、それに組織的なプロセスの強み弱みを客観的に分析することができる。
■ソフトウェアプロセスからビジネスプロセスへ
ソフトウェアプロセスを改善する際に重要なことは、ソフトウェアの開発という枠の中だけではなく、より広範囲なビジネス環境の中で改善活動が行われるという認識である。今後の方向としてはソフトウェアプロセスからシステムプロセスへ、さらにビジネスプロセスへと視野を広げることである。現在その位置付けにあるのがPPAである。
例えば、現在のような競争環境下での戦略では、何よりも時間(スピード)が重要な要素となる。特に持続力のある競争優位を作ることが大切となるが、そのために企業活動の役割を明確に浮かび上がらせるコンセプトとしては、バリュー・チェーンが考えられる。これはソフトウェア組織においても例外ではない。バリュー・チェーンは、一般に5つの主活動と4つの支援活動に分類されるが、このプロセスはソフトウェア開発組織の枠を超えた経営層(ビジネスマネジメント)の領域である。これまでに、CMMのような成熟度モデルでは、この領域のプロセス管理能力を扱うことはできなかった。PPAであれば、バリュー・チェーンの大部分のプロセスをその対象にできる。ソフトウェアプロセスを超えてビジネスプロセスの管理にも役立てることができる。
またISO/IEC TR 15504系のモデルでは、必要なプロセスが不足する場合にはほかのプロセスモデルを使用することも可能である。例えば、経営品質の分野であればマルコム・ボルドリッジ国家品質賞や経営品質賞をプロセスとして使用することもできる。
PPAのコンセプトは会社経営上の管理支援ツールとして、今後大いに発展する素地を有している。
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Index | |
新しいソフトウェア開発プロセス改善PPA | |
1 SPAが注目される理由 | |
2 ソフトウェア開発のプロセス管理とは | |
3 PPAとは──CMMと何が違うのか── | |
4 PPAの適用事例 |
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