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スキルやキャリアのため転職を考えているエンジニアに
特集:ITエンジニアのための転職基礎講座

千葉康介
株式会社セキュアシンク
2001/5/22

Part 2 転職支援サービスを理解しよう

 十分な人脈や優れた技術、さらにコミュニケーション力やプレゼンテーション力に自信がある“実力派”ITエンジニアは、自分でいい転職先を見つけるのに、それほど苦労しない。実際、多くの転職者の転職のきっかけは、知人やなどの口コミによるものが意外と多い注1

注1 日本労働研究機構の2000年12月7日の発表によれば、就職する際の経路は、知人・友人の割合が18.4%で最も高く、学校の就職担当部門の紹介が14.7%、一般の就職情報誌が13.5%と続く。ほかの調査の中には、この知人・友人の割合がもっと高いものが多い。

 しかし、実力派のITエンジニアほど毎日ハードな生活を送っているはず。そのような場合、各種の転職支援サービスを活用するのが合理的だ。そこで、ここでは代表的な転職支援サービスを解説しよう。

ハローワーク
 厚生労働省のハローワーク(公共職業安定所)は、最も基本的な転職支援サービスだろう。人材紹介や人材派遣が自由化される前は、雑誌などを除くと、ほぼ唯一の転職支援サービスだった。現在では民間の転職支援サービスが充実しているため、以前よりは存在感が薄れた。それでも転職を考えるのであれば、一度は足を運んでもいいだろう。

人材紹介
 人材紹介とは、人材紹介会社が企業から必要な人材のスペックを聞き、それに見合った人材を企業に紹介するサービスのこと(図1)。

図1 人材紹介の仕組み


 転職する側から見ると、自分のキャリアを紹介会社に開示(登録)することで、自分に合った転職先を紹介してくれる。紹介会社の担当者(転職コンサルタント)は、転職希望者のエージェントとして、企業側と雇用条件の交渉など、転職活動を支援してくれる存在だ。

 企業が紹介会社から人材の紹介を受けて採用を決めた場合、採用した人材の初年度年収相当額の30%前後を紹介会社に支払う(成功報酬モデル)が一般的だ。そのため、転職希望者に料金はかからない。

 人材紹介は、正式には「有料職業紹介事業」といい、法律(職業安定法)で定められている事業で、厚生労働大臣の許可が必要である。適法に許可を受けたものかどうかは、「xx-xx-ユ-xxxx」(xは数字)などの「許可番号」で確認できる。 この事業は、「人」の仲介を行うため、やや厳格な政府の規制下に置かれている。

 なお、紹介会社の業務形態として、登録型、スカウト(ヘッドハンティング)型、再就職支援型などに分類することがある。 一般に転職希望者が利用するのは、「登録型」の紹介会社だろう。

 スカウト型は、企業側からの依頼により、特定の人や特定のポストにふさわしい人(転職を自ら希望していない人)に積極的にアプローチ・説得し、その企業に人材紹介を行う業者のことを指す。再就職支援型も企業側からの依頼により、その企業の従業員(リストラ対象者など)に対して転職するよう説得し、退職後の就職先をあっせん(斡旋)する業者のことをいう。

人材派遣
 企業の受付係やファイリング、データエントリ、プログラミング、最近ではマイラインの営業など、さまざまな領域で取り入れられているのが、この人材派遣だ。近年需要が急拡大しつつあり、首都圏では100万人以上が企業などに派遣されているという(日経ネット2001年4月7日「人材派遣、首都圏で100万人突破」)。

 人材派遣は、派遣会社と労働者が雇用契約を結び、人材の需要がある企業に派遣する。通常、企業は派遣社員に与える仕事の内容に応じて派遣会社と協議のうえ、時給を設定して派遣会社に時給相当額を支払う。派遣会社はその時給から諸経費を差し引いた額を時給として派遣社員に支払う(図2)。ただし、基本的に派遣社員側には費用はかからないが、研修費などの名目で費用が発生する場合がある。

図2 人材派遣の仕組み

 例えば、PCを使った軽い事務作業では、派遣会社に支払う時給は2000円前後、派遣社員に支払われる時給はそのうちの1500円前後になる。ITエキスパートであれば、この2〜3倍くらいの料金が設定されることが多い表1

職種
時給
パソコン・オペレータ 1900〜2800円
システム・サポート 2500〜3000円
プログラマー 3000〜3500円
上級プログラマー 3500〜5000円
プロジェクト・マネージャ 5000円以上
表1 日本経済新聞2001年4月30日朝刊より抜粋。首都圏の派遣会社の1時間あたりの請求金額(単位:円)

 人材派遣は、正式には「労働者派遣事業」といい、さらに労働者の雇用形態に従って、「一般労働者派遣事業」「特定労働者派遣事業」とに細分化される(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律−労働者派遣法)。両者とも厚生労働省の管轄する事業で、前者は大臣の許可、後者は大臣への届け出が必要な事業である。

 両者の違いは、一般派遣は派遣会社が労働者を登録しておき、派遣需要があるごとにその都度雇用契約を結んで派遣するものだ(登録型とも呼ぶ)。特定派遣は派遣会社が労働者を正社員や契約社員として直接雇用し、客先に派遺するもの(常用型とも呼ぶ)。

 派遣というと、通常は前者のことを指す場合が多いが、ITエンジニアの派遣においては、後者の形態も多く採用されている。これらの違いで大きいのは、常用型のほうがある程度長期的な雇用が保証されるという点だ。

 人材紹介と同様、適法な許可・届け出がなされているかどうかは、許可(届け出)番号で確認できる。なお、人材派遣においては、賃金や雇用・社会保険などで多種多様なトラブルが発生することがあるようだ。派遣で働こうとする人は、事前確認しておくことをお勧めする。

新しい制度の紹介予定派遣
 最近になって事実上解禁された人材紹介と人材派遣を組み合わせたような新しい制度である「紹介予定派遣」が話題となっている。

 これは、その名のとおり「人材紹介を予定した人材派遣」という意味で、「テンプ・トゥ・パーム(Temp to Permanent)」と呼ばれている。

 具体的には、1年程度の派遣契約をし、その期間満了後、派遣先が直接雇用を検討するもの。企業としては、ある程度の試用期間を確保できるため、労働者の質を確認できるなど、高い利用価値がある。また、雇用される側も派遣期間中に社内環境が理解でき、正社員として働くのが良いのか悪いのかを判断できる点もメリットがある。今後、大手企業の一般職や新卒者の技術職採用を中心に、この制度が利用されると予想される。

 ただし、この制度は雇用者側に有利な制度であり、労働者の人権を侵害する恐れがあるとして、多くの人権擁護論者などが批判しているという事実がある。逆に経済界からは、常用するまでに1年間では短いという批判もある。

Webサイト
 Webの求人サイトは、現在最も活況を呈している転職支援サービスだろう。単純な求人サイト(求人情報を検索して応募するもの)、それにメール配信などを追加した求人サイト、人材派遣のサイト、匿名または顕名で自分の履歴書を求人サイトに登録しておき、それを企業の人事担当者または人材紹介会社が検索するサイトなど、多種多様のサービスがあり、さらに複数のサービスを手がけているところが多い。また、求人情報などの分野を特化したサイトも多く、IT関連に強いといわれているサイトも多数存在する(表2)。

主なWebサイト
概要
アイティット エンジニア派遣の大手が運営(旧社名:パソナソフト)
i-work.jp 人材紹介会社インテリジェンスの運営するエンジニア専門の転職サイト
インプレスキャリア IT出版社のインプレスが運営するキャリア・スキルアップサイト
エクスぺリエンス インテリジェンスのグループ会社で、エンジニア専門の人材紹介会社
Enginner.jp インテリジェンスが運営するエンジニア専門の派遣情報サイト
etech ITに特化したパソナテックが運営する派遣情報サイト
スキルビジョン 独自で開発したスキルチェックを採用している転職サービス
Tech.B-ing リクルート発行の『Tech.B-ing』のWeb版
日経BPエキスパート 日経BPが運営する転職サイト。希望条件に合った求人情報をメール配信するサービスがある
リーディング・エッジ 先端テクノロジー案件を多数抱えるエンジニア派遣サイト
Layer8 Jobs.com ダイジョブドットコムが運営するIT・ソフトウェア開発者のための転職サイト
表2 ITエンジニアに強い代表的な転職サイトの一部

求人雑誌・新聞
 書店やコンビニ、駅の売店などで販売されている求人雑誌を目にしたり、手にしたことのある人は多いだろう。その意味で、まだまだなじみ深い(社会的認知度も高い)転職情報源だろう。求人誌には、職種・業種横断的なものから、ターゲットを絞った専門求人雑誌など、さまざまな雑誌が発行されている。新聞も日曜版などに数多くの「求人広告」が掲載されている。エンジニア向けとしては、『Tech.B-ing』(リクルート)や『エンジニアtype』(キャリアデザインセンター)が有名だ。

 求人雑誌・新聞は、基本的に人材を募集している企業(求人企業)が出す広告なので、求人企業への応募は自分で直接行う。最近は人材紹介会社の広告が掲載されることがあるため、人材紹介会社を探す場合の情報源として活用することもできる。

 なお、Webサイトや紙メディアで人材紹介や人材派遣サービスを直接行うには、それぞれ別々に厚生労働大臣の許可・届け出が必要である。サービスを利用する際には、Webサイトや紙メディアで許可(届け出)番号をきちんと確認しておこう。

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転職支援サービス活用法

Index
ITエキスパートのための転職基礎講座
  Part 1 転職は目的を実現するための手段
Part 2 転職支援サービスを理解しよう
  Part 3 転職支援サービス活用法


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