SAPコンサルタント インタビュー
日立情報システムズ
ERP事業部 第二システム部 技師 池澤悠介

SAPエンジニアだからできた、私のスキルアップ

岩崎史絵
トレッフェ
2008/12/25


ITエンジニアの人気職種として「プロジェクトマネージャ」「コンサルタント」が常に挙がるように、厳しいといわれる転職市場でも、これらの職種は依然として、引く手あまたの状態だ。そのスキル/キャリアアップのため、有用な手段の1つが、SAP ERPの専門技術者になることだ。今回は、第一線で活躍するSAPエンジニアの実例を基に、今後の技術トレンドを踏まえたスキル/キャリアアップの可能性について考えてみよう。

   SAPエンジニアならではの2つのメリット

 「SAP ERPの仕事に携われば、本当にキャリア/スキルアップができるのか」――連載記事「10年後も飛躍し続けるためのスキル」「10年後も通用するキャリアパス」を読んだ方の中には、こんな疑問を抱いた方も多いのではないだろうか。

 この問いに対し、現役のSAPコンサルタントはどのように答えるのか。日立情報システムズ ERP事業部 第二システム部の技師であり、SAP認定アプリケーションコンサルタントの資格を持つ池澤悠介氏(2008年度の最優秀SAP NetWeaver マイスター)は「SAP ERPの仕事で有利な点は2つあります。1つは、顧客企業と接する時間や機会が多いこと。もう1つは、スクラッチ開発に比べ、開発期間が短期で済むため、数多くのプロジェクトを経験できる点です」と説明する。

 顧客と直接折衝する期間が多いため、折衝能力はもちろん、要件定義や分析など実践的なスキルを磨くことができる。そして開発期間が短いため、同じ年数でもスキルアップの機会に多く恵まれるわけだ。例えば、スクラッチ開発で基幹システムを構築するのならば、少なく見積もっても1〜2年はかかる。池澤氏が担当するSAP BW(分析システム)やSAP CRMならば、平均して半年程度で回していくという。「多数の企業に関わることで、さまざまな業務パターンも覚えられます。これらの点が、SAPエンジニアで得られる最大のメリットではないでしょうか」(池澤氏)

   SAP案件には、顧客と向き合うチャンスがある

 池澤氏がSAP製品に携わるようになったのは、新卒入社後、現在のERP事業部に配属されたことがきっかけだ。「とはいっても、最初に担当したのは、メインフレームの運用・開発や、EDI/EAIまわりの開発でした。当時はまだ、SAP ERPを手がけて間もなかったので、案件数もそれほど多くはなかったのです。ただ、同期入社組がほとんどSAP関連のチームに配属されていたので、自分もそのチームに行きたいと希望はしていました」(池澤氏)。

日立情報システムズ ERP事業部 第二システム部 技師 池澤悠介氏

 そんな願いが通じたのか、入社2年後の2001年、ある製造業社へのSAP BW導入プロジェクトに参画することになった。EDI/EAIの経験を買われ、データ抽出の連携部分や、ABAP開発も担当。クライアントが製造業だったので、ABAPを使って既存のCADシステムへ連携するという開発も経験した。また、この時に同じプロジェクトにいたSAPコンサルタントの仕事を間近で見て、「卓越した技術力、顧客折衝能力を生かし、生き生きと仕事をしていることに感銘を受け、大きな目標になりました」(池澤氏)という。メインフレーム系の仕事においても、尊敬していた技術者がいなかったわけではないが、社内で黙々と作業しているのに比べ、顧客と共にプロジェクトを進めていく“外の世界”に開眼したそうだ。

 ここでいう“外の世界”、つまり「顧客と折衝してプロジェクトを進めていける」ITエンジニアへの需要は、依然として高い。池澤氏の場合、その世界へ踏み出す第一歩が、SAPだったわけだ。

   SAPエンジニアならではの提案テクニックとは?

 これを機に、SAPエンジニアとして専門性を高めるべく、SAP BWを含めた複数の認定アプリケーションコンサルタントの資格を取得。資格については、「自分はこのレベルにいるんだぞ、という自信につながります」と池澤氏は言う。

 「自信があるから、堂々とコンサルティングできます。コンサルティングをする立場からすると、『これが正しい』という主張を曲げてはいけないんです。スクラッチ開発の場合、逆に『顧客企業の要望に合わせる』ことが第一ですが、SAPの場合は、『正しいこと』を主軸において、細かい部分はSOAを使って周辺を合わせていこう、という考え方。実際、Webサービス技術や提供されるサービスのプロセスもどんどん進化していますし、これからはゼロベースからの開発でなく、『組み合わせる』という開発手法が主流になるのではないでしょうか。その点で、SAPを使ったコンサルティングスキルや、開発の進め方を身に付けることは、大きな意味があると思います」(池澤氏)

 そんな池澤氏のコンサルティングや提案スキルはどのようなものか。

 池澤氏は現在、SAP CRM案件を中心に、開発リーダーや、小規模プロジェクトのプロジェクトマネージャとして仕事に携わることが多いという。これらの情報系システムは、会計や生産管理などの基幹系システムと比べ、業務遂行のマストアイテムというわけではない。だからこそ、「使ってみよう、という気にさせる」提案がものをいうそうだ。

 まず、インターフェイスの「楽しさ」や「使い勝手」に、徹底的にこだわる。ばくぜんと「どういうインターフェイスが好きですか」とヒアリングしても、的確な回答を得られることはないので、エンドユーザーが使っているPCのデスクトップを見せてもらったり、いくつか画面パターンを作ってデモを繰り返したり、画面カスタマイズの自由度を上げたりと、ささやかな工夫で得られるフィードバックは大きいという。

 また、SAP BWやCRMの場合、販売管理や生産管理などSAPの基幹系モジュールと一括でプロジェクトを進めることが多いため、そちらのプロジェクトと密に連携を取り、分析に必要となるデータ項目の洗い出しや、要件定義に参画することもあるそうだ。池澤氏が所属する日立情報システムズでは、中堅企業向けのSAP ERPテンプレート「BePlate」を持っており、これをベースにフィット&ギャップをチェックすることで、要件定義作業を効率化できるという。

 「顧客企業の中には、パッケージ導入に抵抗がある方もいらっしゃいますし、CRMだと、数値化しにくい“付き合い”の部分をどう扱うか、といった問題も出てきます。ただ、企業の業務のほとんどはパッケージで実装可能なものですし、メンテナンスや機能追加ということを考えた場合、パッケージ導入の方がコストや効率面でメリットがあるのは事実。あとは、業務にまつわるさまざまな情報をいかに視覚化・数値化し、シンプルにするか。その要件を引き出すために、テンプレートを使った分析やデモがあるのです。SAPというパッケージだからこそ、こうした作業も効率化できますし、より詳細な要件定義も可能になります。そうした意味で、これからの企業システム開発において、SAP ERPを含めたパッケージ製品であったり、Webサービスを使う機会はますます増えるでしょう」(池澤氏)

   来るべきSOA時代、最終的に目指す職種は?

 「SOA時代、新たに生まれる職種とスキルとは?」の中では、既存のITエンジニア職種が分化・進化し、新たな職種が生まれる可能性を示唆している。これに当てはめると、池澤氏は「現在は『コンソリデータ(アプリケーションエキスパート)』で、将来的には『エンタープライズアーキテクト』を目指しています」という。同氏の考えでは、現在のSAPエンジニアのうち、業務コンサルタントには「ディスラプティブイノベータ(破壊的イノベータ)」が多く、開発者は「コンソリデータ」か「リポジトリ管理者」に相当する人が多いそうだ。そのすべてを包含し、プロジェクトをマネジメントしていくのが「エンタープライズアーキテクト」という位置付けだ。

 一般に、プロジェクトマネージャというと、特定の業種・業務にとらわれない普遍的な職種・スキルという見方をされる。これに対しては、「特定の業種・業務知識を持っていた方が、顧客企業が求めているサービスについて経験上すぐ理解できるので、有利になるのでは」(池澤氏)ととらえている。池澤氏自身、製造業のクライアントでの経験が豊富で、ここで得た知識を生かした「エンタープライズアーキテクト」を目指しているそうだ。

 もちろん、ただ黙々と仕事を進めるだけでは、なかなか知識は身に付かない。「SOAの普及に連れ、プログラマにも『既存のサービスを流用する』スキルが必要になるはず」と考えている池澤氏は、SAP製品のほか、他社パッケージや製品、技術動向にも目を配り、社内外の勉強会やセミナーにも参加するなど、知識の吸収に積極的だ。「手持ちの部品が少ないと、提案できる幅もせまくなります。例えばSAPに関しては、自分の担当分野以外のモジュールやソリューションでもいいし、実装技術の知識を広げるなど、いろいろな方法があるでしょう。まず踏み出す一歩として、SAP ERPに触れてみるのは有意義だと思います」(池澤氏)

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

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これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。

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