Tech総研
2007/4/26
年収に関するアンケートはよく見るが、今回はサンプルのけたが違う。2万人だ。エンジニアとほかの職種では年収はどう違うのか。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載) |
隣の芝生は青く見えるか |
「隣の芝生は青く見える」というが、自分の現在の環境に不満があると、厳密に比較したわけではないのに、どうしてもほかの環境がよく見えてしまうもの。仕事においてもそうだ。「あの会社の方が給料いいみたいだ」「うちの業界全体がダメ。ほかの業界に移った方がいいみたい」……。
こうした比較は人間の本性のようなもので、やめることは容易ではない。たとえ、世間から見ればうらやむような環境にいる人でも、常に上や横を見ては、「ウチはだめだなあ」と嘆息をもらすものである。もちろん、ほかとの差異を意識することは、その差異が厳然とした事実であるならば意味がある。最初は単なる「うらやましい」という嫉妬の感情だったものでも、方向をポジティブに転じることができさえすれば、自分の環境を改善する努力の源になるからだ。つまり、差異があるからこそ、人は向上できるということもいえるのである。
というわけで、今回は職種間の年収比較である。データとしてTech総研が行った、約2万人のビジネスパーソンへのアンケート調査結果を使用する。技術系だけでなく、販売・サービス、営業などの文系職種も含んだデータだ。調査対象者には年収金額の実数ではなく、「400万〜500万円未満」というような形の年収幅を尋ねている。そのため平均年収は出てこないが、年収の分布をグラフで見れば、おおよその年収構造が見えてくるはずだ。
サービス・販売職に比べたら技術系は天国? |
30代前半層(30〜34歳)のビジネスパーソンのデータから、「ソフトウェア・ネットワーク系」「ハードウェア系」「クリエイティブ系」「サービス・販売系」「営業・事務・企画系」の5職種を取り出して年収分布を見たのが図1である。「ソフトウェア系」にはシステム開発、ネットワーク設計、運用・監視、研究・特許・テクニカルマーケティングなどが含まれ、「ハードウェア系」には回路・システム設計、半導体設計、制御設計、セールスエンジニアなどが含まれる。また、ここでいうクリエイティブ系とは、主にグラフィック・デザイン、映像カメラマン、音楽ミキシングなどの職種だが、フリーランサーではなく企業との雇用関係を結んでいる人たちのことだ。
図1 営業・販売と比較! 30代前半の年収帯 |
「ソフトウェア系」では、最も多い年収層は「400万〜500万円未満」(26%)だが、「ハードウェア系」ではこれが「500万〜600万円未満」(27%)となる。ところがほかの3つの職種では最大分布が「300万〜400万円未満」以下になっている。技術系の2つの職種よりもピークが左、つまり低額の方に位置しているのだ。驚くのは、「サービス・販売系」の職種で最も多いのが年収「200万円未満」層という事実だ。年収200万円未満というと平均月収が16万7000円未満ということ。この職種のサンプルには、アルバイト、パートタイム労働者が2割強含まれていることも要因と考えられる。
この5つの職種の年収分布グラフを見る限り、技術系職種はほかの職種に比べると、相対的に分布がより高額の方、右へシフトしていることが分かる。営業・事務職よりも右だ。「ウチは給料が安いなあ」と思っていても、世の中のほかの職種に比べるとまだ恵まれている、ということはいえるのかもしれない。
ソフトウェア系は建築系より高いが、素材、ハードウェア系より低い |
さて、それでは同じ技術系職種の間ではどんな違いがあるだろうか。同じく30代前半層について見たのが図2である。調査サンプルから「ソフトウェア・ネットワーク系」「ハードウェア系」「素材・食品・メディカル系」「建築・土木系」を抜き出して比べた。ソフトウェアとハードウェアは前と同じデータである。
図2 30代前半の年収帯をエンジニア職種間で比較 |
分布のおおよその傾向を見ると、「素材・食品・メディカル系」(この場合は職種というよりも、これらの業界に属するエンジニアという意味が強い)は「ハードウェア系」よりもやや右シフト、「建築・土木系」は「ソフトウェア系」よりも明らかに左シフトしていることが見て取れよう。先にも述べたように、これをもって素材業界のエンジニアの年収が、ソフトウェアやハードウェア系エンジニアよりも高いと断言することはできない。ただ、「年収の高い人の割合が多い分布構造になっている」ということはいえる。
ここであらためて気になるのが、ソフトウェア技術者とハードウェア技術者の違いだ。この2職種を比較すると、全体にハードウェア系の方がソフトウェア系より年収分布は右シフトしている。いまや、ソフトウェア・IT技術者が必ずしも機械設計などのハードウェア技術者よりも年収が高いとはいえなくなっているのである。このことは、最近の転職者初任給の調査におけるハードウェア優位の実態にも裏付けられる。昨今の景気回復を支えた自動車、エレクトロニクス関連業種の好調ぶりの一端がここにも反映されている。
今回のインデックス |
最新データで見る「エンジニアのキャリア事情」(43) (1ページ) |
最新データで見る「エンジニアのキャリア事情」(43) (2ページ) |
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