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第43回 IT系は本当に給料が安い? 2万人の年収比較!

Tech総研
2007/4/26

  コンサルタントはやっぱり高収入層が多い

 このことをより詳細に見たのが図3だ。ここではソフトウェア系から3職種、ハードウェア系から2職種を任意にピックアップし、計5職種の年収分布を比較している。年代層は前と同様に30代前半層である。

図3 開発、運用、コンサルタント、機械設計、制御設計の30代前半年収比較

 ここからいえることは、年収分布状況では「運用・監視・テクニカルサポート・保守」に分類されるエンジニアが最も左寄り(年収の低い人の割合が多い)であるということ。「システム開発(Web・オープン系)」「機械・機構設計、金型設計」の2つの差異はほとんど見られないということ。いくぶんデータ分布にばらつきはあるものの、「500万〜600万円未満」層が最も多いのは「制御設計」(33%)であること。「コンサルタント・アナリスト・プリセールス」などのコンサルタント系エンジニアは年収1000万円以上の人が4%いるなど、おしなべて高年収に分布していること──などである。

  Web系職種を年代別に見ると……

 同じ職種でも、年代によって年収差が出てくるのは当然のことだろう。それを図示したのが図4である。システム開発のうち「Web・オープン系」のエンジニアを例に取っている。

図4 Web・オープン系職種の年代別年収帯比較

 予想どおり、きれいに年代別にずれた分布図が現れた。若い層ではグラフのピーク値がグラフの左に偏り、年齢が高くなるに従ってそれが右方向へ推移しているのが分かる。若い層は年収の幅の広がりは小さく、だいたいの人が200万〜400万円の年収幅に集中するが、年齢が高くなるにつれて400万円から700万円ぐらいにかけての層に分布が広がる。40代前半になると年収1000万円台という人も一定数現れるが、それ以前には少ない。

 こうした年代別の年収分布グラフを山の形に例えれば、急峻に切り立つ岩山と、富士山のようなコニーデ型の山の2つの形態があり、その形状が大きく変わるのが30代後半からということになるだろうか。

 しかしながら、すべての職種がこのような分布をしているわけではない。図5の「営業・事務・企画系」の年齢別年収分布図はWeb系エンジニアとはかなり様相が異なっている。年齢が高くなってもグラフの山の頂点がほとんど右にシフトしておらず、全体に低年収に偏る傾向がある。

図5 営業・事務・企画系職種の年代別年収帯比較

 むろん、調査段階でのサンプルの偏りも考慮しなくてはならない。今回の場合、Web・オープン系が約2200人、営業・事務系が約3000人とサンプル数そのものはデータ比較のうえで問題となるものではないが、もしかすると企業規模などに偏りがあるかもしれないからだ。実際に世の中には歩合給を含めれば年収1000万円を軽く超える営業職の人は大勢いる。また大手企業の営業・事務系だけを取り上げれば、グラフの形はWeb系に近づくと思われる。

 ただ、そうした可能性を考えても、明らかに営業・事務系の職種よりも技術系の職種の方が、年収分布としてはバランスの取れたグラフになっているということはいえる。

 ソフトウェア・IT系職種は労働時間や労働密度が高く、最近は「きつい職種」の代表とまでいわれるようになった。同じ技術系でもコンサルタントやハードウェア系に比べると必ずしも待遇が抜きん出ているとはいえない。しかしながら、広く目を世の中全体に向ければ、技術系一般の年収面での優位性は明らかであり、さらに経験を積むことによって年収を上げる可能性もまだまだあるということなのだ。


☆周囲と将来を見渡すヒントになれば

 2005年実施の国勢調査の抽出速報集計「結果の概要」を見ると、職業小分類で「情報処理技術者」を選んだ人は85万人である。これが国内のエンジニア数と考えていいだろう。なお情報処理技術者の就業者数推移を見ると、1970年代はほぼ横ばいだが1980年ごろから伸び始める。おそらくホストコンピュータの普及によるものだろう。1990年に入り不景気もあってか一時は勢いが衰えるが、1990年代後半にまた勢いを増す。パソコンやインターネットが普及し需要が高まったためだろう。

 このように、システムの開発や保守などを行うエンジニアは1980年代から着々と増えてきている。1980年代から始めた人なら20年前後、1990年代から始めた人なら10年前後のキャリアを持っていることになる。かつてエンジニアは「30(〜35)歳で定年」といわれたが、40代でも確かなスキルと実績を持つ頼もしい先輩エンジニアがいるということだ。

 「でも年収は低いのでは?」というイメージもある。果たして本当だろうか。エンジニアは年収より仕事の充実度を重視する傾向があるとはいえ、2万人分の職種や年代別の年収分布を分析した今回のレポートは参考になるのではないだろうか。

 これを見て「エンジニアでよかった」と思えるだろうか、それとも別の職種や業種への転向を考えてしまうだろうか。将来の戦略に生かしてもらいたい。

(加山恵美)


この記事は、Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載しています


 

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