Tech総研
2010/4/9
技術志向のSEには、「ものづくりにかかわっていたい。出世には興味がない」というイメージがある。実際のところ、SEは出世に興味がないのか、Tech総研のアンケート調査から探る。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載) |
理不尽な決定、現場のトラブル時に 心底思う「出世したい!」 |
SEって「出世に興味がなく、できるだけ現場で仕事をしていたい」というイメージがありませんか? 実際、マネジメントで気苦労が多い管理職より、顧客に近いところで働きたいというSEが多いのではないかと思います。でも、日々の仕事の中で、理不尽な要求や炎上するプロジェクトに対して「こうした方が絶対いいのに」と思うことも多々あるのではないでしょうか。
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「SEって、出世には興味ないよね?」公開時に行った緊急アンケートの結果は、「出世に興味がある」が44%。半数近くの人が「出世したい」という結果になりました。その主な理由は「上司や顧客の理不尽な要求に対して意見がいえない」「業務改善や新たな提案をしても受け入れられない」というもの。逆に「出世には興味がない」と回答した理由は、上司の多忙さや役職手当の安さに絶望している人、現状に不満がない人がほとんどでした。
図1 実は「出世」に興味がある? |
● どんなときに「出世したい」と思う?
- 間違ったやり方を直したいとき
権限がないため意見を聞いてくれないことが多すぎるから - リーダーが意思決定をせずに納期だけが近づいてくるとき
意思決定できる立場になりたい - 思いどおりの人員構成をしたいとき
仕事の作業メンバーを決定するときに、思ったとおりの人員構成にならないから - 部署間の調整をスムーズにしたいとき
部署間の調整が必要なときに、上長の許可を得ることが大変で、その労力の無意味さを感じることが多いから - 顧客からの無理難題を受けたとき
無理な納期や予算などの要求をそのまま受けて、炎上プロジェクトになるのを回避したい
● 出世に興味がないのはなぜ?
- 上司が「1日中ミーティングで忙殺されている。定時を過ぎてようやく自分の仕事ができる」といっていたので
- 管理職に支払われる「みなし時間外勤務手当」の金額より、いまの等級で支払われる時間外手当の金額の方が多くなってしまうときがある(例:プチデスマ(繁忙期)のときなど)
- 現状の権限で十分満足しているから
- 現在勤務している会社では、役職についちゃうと収入に見合わない責任と業務が……
「もし僕に権限があったら」 こんなことができるのに |
会社の中で働いていると、「なんでそうなるんだよ」とか、「そこはこうやるべきじゃないのかよ」と思うことがあると思います。そういうときはつい短絡的に「上はバカだ」と切って捨てそうになります。しかし、よくよく考えてみれば、それが判断できるだけの情報を持っていないことが多いのではないでしょうか。さらにいえば、もし情報を得ることができて、「やっぱりそこはこうするべきだ」と思ったとしても、今度はそれを実行するに足る権限がない。
エンジニアの「出世したい」理由のほとんどは、現状の課題を解決したり、新たな試みをしたいという建設的な思いによるものです。出世には興味がなくても、「権限は欲しい」と回答した人は77%。では、「もし権限があったら」どんなことをしたいと思っているのでしょうか。
図2 仕事で権限が欲しいと思う? |
● 「もし僕に権限があったら」やりたいことは?
- 特定の人だけが残業している状況があるので、打破しなければいけない。上の人間は「もっと仕事しろ」といってくるが、深夜まで残業してるのに……
- 運用の許可なく、プログラム(システム)は載せさせません!
- 部署間横断プロジェクトができたらいいのに。いまのシステムはかなり縦割りに作ってあって、全体最適ができてないシステムが多いと感じます(個別にポータルをたてたり、類似機能が多かったり)
- 「売れる製品」がどうしたらできるかを念頭に置いて仕事をする
- 無駄をそぎ落とし、本当に顧客が必要としている機能を提供できる(はず)
- 研修費用がなくても業務知識の勉強会、研修を開催したい
- シニアと若手をセットで売る。若手には仕事を果たすだけでなく、シニアの仕事の進め方に注目させる。タスク完了後、発表会を開かせ、どうやったら今後の肥やしになるかを考えさせる
- デスマーチにならない人員構成をする
- グループ会社との仕事を優先させるのをやめる。あえて外部も利用することでグループ会社の自覚を促し、会社としての底力を上げる
- 必要な人員を、適切な場所に配置して、最適な環境で仕事をする
- ピラミッド型組織ではなく、フラットな組織にする。課長、係長などではなく、DBマネージャ、UIデザイナーなど、業務内容で仕事を分担する
- 顧客との折衝(責任分断点・納期など)、場合によっては撤退の判断、社内システムの近代化(PCサーバレベルの購入の決済権)
- 汚いソース、ドキュメントをそのまま更新せず、長期的に見て書き換えた方がよい場合には、新しく書き換える
今回の調査では、出世したいかとただ聞かれて「ハイ」とうなずけなくても、潜在的に権限が欲しいと思っている人は多いことが明らかになったと思います。「どんな状況でも同じですが、権限がないとどうにもならないことが多々ある。後に続く人たちの道を作っていこうと思わないと何も変わらない」という回答もありました。前向きに「出世」を考えている人は決して異質ではないようです。
この記事は、Tech総研/リクルートの2010年2月5日公開の記事を 再編集して掲載しています |
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