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必要とされるキャリアとスキルを追う!

第1回 不足する営業センスを追い求める

下玉利尚明
2006/1/25

いま、現場で求められているキャリアやスキルは、どんなものだろうか。本連載では、さまざまなITエンジニアに自身の体験談を聞いていく。その体験談の中から、読者のヒントになるようなキャリアやスキルが見つかることを願っている。

コンサルタントになったITエンジニア

 ベリタスソフトウェアでアプリケーションパフォーマンス管理(APM)ソリューションの導入コンサルティングをしている大友淳一氏。その正確な肩書きは「シニアコンサルタント」である。

ベリタスソフトウェア 技術本部 テクノロジーSE1部 APMソリューショングループ シニアコンサルタント 大友淳一氏

 APMとは、さまざまなアプリケーションがそのパフォーマンスを確実に、しかも最大限に発揮できるように、システム全体を測定し、分析・改善していく取り組みのことである。単体のアプリケーションのみならず、関連するサーバやネットワークなどをトータルに管理しなければならない。ITシステムを構成する要素は、サーバ、ネットワーク、データベース、クライアントのパソコンなどさまざまだ。

 それだけに、APMソリューションの導入コンサルタントには、ITシステムを構成するさまざまな技術に関する深い知識や経験はもちろん、顧客との折衝能力、コミュニケーションスキルなども求められる。

 大友氏は現在の自らの仕事について「さまざまな企業の『ITシステムの悩み』を分析して、浮き彫りになった問題点をAPMの導入で『いかに解決できるのか』を提示し、プロダクトの売り上げへと結び付けていく仕事」(大友氏)と語る。

 大友氏は、いかにして顧客との交渉能力やコミュニケーションスキル、またそうした経験を身に付けたのだろうか。インタビューを通じて感じたことから考えるに、(大友氏自身の)「着実なスキルアップ、そしてキャリアに直結した的確な転職」にその理由があったといえそうだ。

 大友氏は、常に多忙な業務の中に身を置きながらも「自分自身のITエンジニアとしてのポジション」、そして「自分のキャリアのためにいま、何をすべきか」をロジカルに冷静に分析し実践してきた。このことは、自分自身のスキルアップやキャリアに悩む多くのITエンジニアの参考になるだろう。大友氏が歩んできた道を振り返ってみよう。

IT業界に就職するきっかけとは?

 いまでこそ、APMの導入コンサルタントとして活躍している大友氏であるが、学生時代の専攻は「化学」であった。正確には工学部の「物質生物工学」。「物質と物質との混ざり方を専門に研究していました。その際にUNIXでシミュレーションしながら論文を制作するなど、コンピュータには触れていました。C言語でUNIXのプログラムを書いたりもしていましたね。ただし、どれも専攻分野の研究で利用するためで、プログラムをしっかりと基礎から学ぶということはしませんでした」(大友氏)

 卒業が近づき、将来の進路を決断する時期に大友氏に最初の転機が訪れた。「留年してしまったのです(笑)」(大友氏)。当時は不況のまっただ中で、しかも就職氷河期だったという。「留年したことで自分の専門分野を生かせる企業への就職は非常に厳しくなってしまった。

 ただ、この留年は就職について真剣に考えるいい機会になりました。自分自身を見つめ直してみると、UNIXやプログラムに触れていた関係で『実はIT関連の職業に進みたい』ということが明確になってきたのです」(大友氏)

 不況期とはいえ、IT産業はまだまだ黎明期。多くのIT関連企業では、情報工学や情報処理など大学や専門学校で専門的な知識を身に付けた人ばかりでなく、文系・理系を問わず幅広い分野から人材を募集していたころだ。大友氏は大手物流企業の関連会社であるシステムインテグレータ(SIer)に就職し、ITエンジニアとしての第一歩を踏み出したのだ。

 学生時代に独学でUNIXやプログラムを学んできた大友氏は、このSIerで「ITエンジニアとしての基礎を徹底的に仕込まれた」という。

 「業務の内容は大きく分けるとCOBOLでのシステム構築と、オープン系でのシステム構築でした。私が担当したのはオープン系です。PowerBuilderという開発ツールで会計システムを構築する業務で、プログラマとしてキャリアをスタートしました」(大友氏)

先輩に教えを乞わずに徹底的に苦しむと、それが力に

 大友氏はこのSIerで、実に多くのことを「初めて学んだ」。プログラミングの基礎、オブジェクト指向、会計の基礎知識などである。いわば、このSIerでITエンジニアとしての土台をつくり上げていったのである。「具体的な仕事は先輩のITエンジニアから仕様書を受け取ってコーディングしていくという作業です。ただ当時はプログラミングの基礎知識もおぼつかない。先輩のやることを『見よう見まね』で追いかけていって、必死に食らいついていく……。そんな感じで仕事をしていましたね」(大友氏)

 当時の大友氏の仕事ぶりを象徴するようなユニークなエピソードがある。それは、「分からないことがあっても自分で徹底的に、納得できるまで調べるまでは、先輩エンジニアに『教えを乞わない』ようにしていた」というものだ。

 「負けん気が意外に強いのです。先輩ができることなら、絶対に自分の力でやってやるってね(笑)。徹夜で調べ物もしたし、終電で家に帰ってからもずっとパソコンに向ってプログラムを作るなど、とにかくあれこれと勉強していました。いま思えばよくあんな体力があったなと……。どっぷりと『駆け出しプログラマ』の世界に浸っていました」(大友氏)

 そんな厳しい経験を積んできた大友氏だけに、いまの若手のITエンジニアへのアドバイスはなかなか厳しい。「専門書を読んだり、マニュアルを徹底的に調べたりすれば分かるようなことでも、すぐに『これってどうするんでしたっけ?』と聞いてくる人がいます。それでは自分の本当の力にはならないのです。徹底的に苦しんでつかみ取った知識やスキルだからこそ『自分のもの』にできるのです」(大友氏)。この言葉が耳に痛いITエンジニアも多いのではないだろうか。

   

今回のインデックス
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