第12回 希望をかなえるために努力を続ける
千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/2/16
いま、現場で求められているキャリアやスキルは、どんなものだろうか。本連載では、さまざまなITエンジニアに自身の体験談を聞いていく。その体験談の中から、読者のヒントになるようなキャリアやスキルが見つかることを願っている。 |
できるならば、自分がやりたいと思っている仕事をしたい。それは誰もが抱く希望だ。しかし、自分が「やりたい」ことと会社が「やってほしい」ことが一致するとは限らない。むしろ、最初は一致しないことの方が多いかもしれない。そんな中で自分のやりたいことを実現するにはどうしたらいいのか。インターネットイニシアティブ(IIJ) ネットワークインテグレーション部 コンサルタントの引地知寛氏は、自分のやりたいことを自らの努力でつかみ取った人物だ。
■希望どおりにいかなかった新卒時代
引地氏は現在、同社で提供するさまざまなサービスを組み合わせてのシステムの導入や、プロジェクト全体の統括などをしている。
引地氏がネットワークに興味を持ち始めたのは大学時代。工学部の工業化学科と情報系の学部ではなかったが、所属した研究室内でネットワーク構築を盛んに行っていたことがきっかけだ。
ネットワーク技術の面白さに目覚めた引地氏は、それまで漠然と考えていた工業化学系の業界に加え、通信系の業界も将来、活躍する場として考え始めた。1998年、大手通信会社に入社を決めた。
その通信会社では、音声回線やネットワークの配線をメインに仕事を行っていたという。ネットワークの仕事に携わりたいという引地氏の希望には必ずしも沿っていなかった。しかし、引地氏はそこであきらめずに、自分が希望するネットワークの仕事をするためにはどうしたらいいのか考えていた。「当時勤めていた会社は3年くらいの周期で部署異動があるので、その3年間のうちに自分がやりたいと願っていることを周りの人にアピールしようと考えていました」
引地氏は、自分の業務をこなしながら、CCNAなどのネットワークの資格を取得したり、ネットワーク構築をしている現場に足を運んだりしてスキルを吸収していった。また、人事担当者に自分の希望を伝え続けることも忘れなかった。
そして、待ちに待っていた部署異動の日がやってきた。そこで引地氏を待っていたのは、またも自分の希望から外れた仕事内容だった。「事業企画や若手社員の人材育成担当の仕事をすることになりました。人材育成の担当をしていると、自分がこの先どんな仕事を社内でしていくのか、大体分かるようになってきます」。このままでは、自分の希望がかなわないと判断した引地氏は、部署異動の3カ月後に転職を決めた。
■転職でようやく希望の仕事に
インターネットイニシアティブ ネットワークインテグレーション部 コンサルタント 引地知寛氏 |
IIJに転職することに決めたのは次のような理由からだ。「自己のテクニカルスキルを向上させるために数社を選び、そのうちの1社がIIJでした。転職活動の最中にいろんな会社に応募しましたが、IIJはアクションがものすごく早かったのです。例えば、社員に会わせてほしいというとすぐに会わせてもらえたり、面接後、家に帰ってメールを見るころにはもう結果がでていたりするなど、対応の早さに共感しました。社員の話を聞くことができたこともありますが、仕事のしやすさや社内の風通しのよさを感じましたね」
こうした仕事のしやすさやスピード感についての印象は、転職してからも変わらなかったという。
転職してから4年間半は専用線を用いたインターネット接続サービスの構築や運用、障害対応を含めた保守を行った。「この間にいまの自分の機軸となるスキル、例えばレイヤー3の知識などをしっかりと学ばせてもらいました。構築から保守までを一貫してできる部署だったので、いろいろな経験もさせてもらいました」
また提案や機器の設置、交換などで頻繁に客先に出向く機会があったので、顧客からじかに声を聞き、フィードバックできることも大きかったという。
「時にはお客さまにおしかりを受けることもありましたが、『お客さまに高品質のサービスを提供する』という意識が部署全体にあり、つらさよりは充実感の方が大きかったと思います」
■顧客の一番近くにいる面白さ
引地氏は2005年10月から、現在のネットワークインテグレーション部でプロジェクトを統括するプロジェクトマネージャ(PM)部隊の一員として、IIJのコアメンバーだけでおおむね4〜5人、多いときには20名ほどのメンバーで仕事をしている。IIJが提供するサービスを組み合わせたシステムから、サービスで補えない個別構築部分まで、顧客のシステム全体を管理する。
引地氏はこの仕事の面白さを次のように話す。「最終的に導入するシステムは同じでも、それを作るまでの過程はPMごとにそれぞれ違います。お客さまに一番近い場所で仕事をしているので、お客さまの本音を聞くことができます。そこで得た情報をいかに会社にフィードバックできるかという部分に面白さがあります」
■プロジェクトマネージャとして成長したい
そんな引地氏の今後の目標とは何だろうか。「いま所属している部署には優秀なPMがたくさんいます。まずはその人たちに追い付くことです。そして多数のコアメンバーで構成された大規模プロジェクトを自分で統括できるようになりたい」と話す。
そのためにスキルを向上させたいという意欲も強い。「自分自身、PMとして足りない部分はたくさんあると思っています。テクニカルスキルでは現在のネットワークのスキルをセキュリティやサーバなどの領域まで広げたいですね。そうすることで各担当者とより深い話ができるようになります。ヒューマンスキルももっと身に付けるなど、PMとしてゼネラリスト的にスキルを習得したいと考えています」
引地氏はPMの仕事を「泥臭い仕事」だという。確かにPMといえば聞こえはいいかもしれないが、顧客との折衝やプロジェクトの管理、時には自ら現場に入って作業するなど、あらゆることをやらなくてはならない。「でも、お客さまにはそれを見せずにできるだけスムーズにプロジェクトを進めることができるようになりたいですね」
■自分が仕事をする動機を確認する
引地氏に若い世代のITエンジニアに対するアドバイスを聞いてみた。引地氏によると新入社員など若い人の中には、「やりたいことが見えない、何となく仕事をしているという人」がいるという。
「そういう若い人には節目のたびに『自分が何のために仕事をしているのか』というプライオリティ付けをしてもらいたいです」と話す。「35歳で1000万円貯金したい」「スキルアップしたい」「達成感を味わいたい」など何でもいいという。
「極端な話ですが、『暇つぶしのために会社にくる』でもいいと思っています。そういう人の場合は、失敗しない程度に仕事をすればいいですから。自分の中で目標が決まるとやりたいことが見えてきて、自分がそれに向かって何をすべきか逆算できるようになります。先々の目標を決めることは難しいかもしれませんが、いまの自分を見たり、いろんな人の話を聞いたりして考えてほしいと思います」
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