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人材紹介会社のコンサルタントが語る
第15回 年齢制限に引っかかる人、引っかからない人

リーディング・エッジ社

加藤千尋
2003/11/19

求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。

20代と30代では求められるスキルが違う

 弊社の紹介で仕事をしているエンジニアや、応募に来られる方を面接する際、「どんな仕事をやってみたいのですか?」と真っ先に質問します。

 そのとき、多い回答は「Web系のシステム開発をしたい」とか「Javaを使った開発の仕事を経験したい」というものです。その回答自体を誤りというつもりはありません。エンジニアですから、最新の技術動向を追いかけたくなるのは当然だと思います。

 ただ問題なのは、「どんなWebシステムの開発をしたいのか」「Javaでどんな開発に取り組みたいのか」を尋ねると、ほとんどの方が答えに窮することです。

 (多少景気が上向いてきたとはいえ)現在の経済状況では、正社員の求人の場合もそうですが、弊社で取り扱うような「派遣エンジニア」への求人の場合も、残念ながら年齢制限が厳しくなっています。

 では、ある程度経験を重ねた30代、40代のエンジニアは、どうすれば仕事を探すことができるのでしょうか。ここで理解してほしいのは、応募者の年齢によって求人企業の採用ニーズが異なることです。20代、30代、そして40代など年齢ごとに、企業が求めるスキルを見極めておく必要があります。

40代エンジニアの求職事情で見えてくること

 それでは40代のエンジニアの求職事例を紹介しましょう。40代になるまで異なるキャリアを経てきた2人のエンジニアが登場します。企業は「40代のエンジニアにどんなスキルや経験を求めているのか」を見ることができます。

 宮島研二氏(仮名・43歳)は、新卒で受託開発が中心のIT企業へ就職。最初はプログラマの仕事にかかわり、経験を重ねるごとに少しずつ上流工程のキャリアを積みました。SE、プロジェクトリーダー、そしてプロジェクトマネージャへと順調にキャリアアップしていったのです。

 しかし、そのIT企業は小・中規模の開発案件が中心であったために仕事への魅力や将来への不安を感じ、ほかの仕事に興味を持ち始めたというのです。その時点で、宮島氏の年齢は40歳。もっと大規模な開発現場を経験したいという希望があり、弊社へ登録に来ました。

年齢がハンデにならなかった理由とは

 現在までに宮島氏は、大手企業内で3つのプロジェクトに参加しています。最初に就職したIT企業では、プログラマとしてスタートし、アセンブラ、C、VB、Javaなどの開発言語を扱いました。次にエンドユーザーと開発会社との調整や要件定義のような上流工程の仕事、さらにそれまで未経験だった運用設計の仕事も経験しています。

 SEやプロジェクトリーダーといっても、小規模な案件の場合、開発やテストのメンバーに組み込まれることもありますが、最近は実際にプログラム開発にかかわる仕事が少なくなったと聞いています。40歳のエンジニアに求められる仕事内容は、徐々に変化してきたといえるでしょう。

 宮島氏は特定の分野についての業務知識を持っていたわけではありません。しかし、基幹業務の知識を持っていたことに加え、客先へ提案を行う「プレゼンテーション力」や「プロジェクトマネジメント力」など、技術力以外のスキルを身につけていました。

 また、自分の仕事の幅を広げるために、資格取得の勉強をしていたことが、職探しの際にも有利になりました。そのため、いざ仕事を探すときも40歳という年齢が大きなハンデにならなかったのです。

プログラマ経験しかなかったことで職探しが難航

 一方、芳川潤氏(仮名・42歳)は、異業種からの転職組で、20代半ばに受託開発が中心のIT企業に転職しました。その会社は受託開発といっても、孫請けや曾孫請けの案件が中心。上流工程の仕事はほとんどなく、その会社で30代半ばまで約10年間働きましたが、プログラマの経験しかありませんでした。

 芳川氏は設計書すらほとんど書いたことがなく、当然のように業務知識はゼロ。しかも、人と接するのが苦手でしたのでコミュニケーションスキルやプロジェクトマネジメント力などのヒューマンスキルもほとんどありませんでした。

 何度か将来のキャリアプランについて話したのですが、具体的にどんな仕事をしたいのか、どんなスキルを持つ技術者になりたいのか、というビジョンすら持っていなかったのです。

 それでも、経済状態の良いときであれば、30代後半のプログラマであっても、受入先は見つかったことでしょう。しかし、いまの雇用状況を考えれば職探しにはかなりの困難を伴います。実際彼は40歳を超えたいま、職探しに大変苦労しています。

業務知識やヒューマンスキルの大切さ

 私は仕事柄、多くのエンジニアと接する機会があります。将来のキャリアビジョンなどについても話し合います。20代半ばならば、学びたい言語にこだわりたい気持ちも分かります。しかし、5年後、10年後のキャリアを考えた場合、自分の目標をどこに置くのかによって、仕事への意識の持ち方を変える必要があると思います。

 同じプログラマとして働いていても、担当する案件の業務内容に深い興味を持つかどうかで、おそらく業務知識や設計手法の習得にも差がつくのではないでしょうか。

 技術は進化します。特に最近は、新しい技術へ進化するスピードが速まっています。目先の最新技術だけにとらわれるのではなく、業務知識やヒューマンスキルの重要性を認識していただきたいと思います。

 今後、開発現場は日本国内にとどまることなく、ますますインドや中国などアジア諸国に広がっていくことでしょう。そんな時代で生き残るにはどんなスキルやキャリアが求められるのか。グローバルな視点を忘れずに、今後のキャリアを考えてほしいと思います。


筆者プロフィール
加藤 千尋(かとう ちひろ)●某電気メーカーの教育専門会社に就職し、法人向けコンピュータのインストラクターやシステムの提案業務を担当した後、技術系の人材派遣会社に就職、現在に至る。@ITジョブエージェントを通じて@IT読者への派遣案件紹介も行っている。




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