人材紹介会社のコンサルタントが語る
第16回 転職して年収が「15%アップ」した理由とは
ヒューマンリンク
小野昌成
2003/12/23
求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。 |
■人材紹介会社を有効に活用しよう
いくら優秀なエンジニアでも、自分のスキルやキャリアレベルに合う企業を探すのは、とても大変な作業を伴います。多忙なエンジニアの生活を考えれば、1人で転職活動をするには時間的にも限界があるので、人材紹介会社を上手に利用するのは有効な方法の1つです。
転職を希望する理由は個人によってさまざまです。自ら新しいキャリアの開拓を目指してチャレンジしようとする人、やむを得ず転職の道を選ばなければならない人……。人材紹介会社は、人材を求めている企業に対してそのニーズに見合う人材を紹介し、求人側と求職側双方の満足を得られるようにすることが最も重要な仕事です。
人材紹介会社のシステムにはいろいろなパターンがあります。人材を大量に募集し、企業に提案していくところもあれば、小さな規模ではあるが1人1人の求職者の要望や悩みをじっくり聞き、丁寧にコンサルティングを行いながら転職先を紹介していくところもあります。
一般的に自らのスキルや経歴に自信のある方は、自分が“商品扱い”されることを嫌い、独力で新しい職場を見つけようとする傾向があります。ここでは、そうした方々が人材紹介会社を上手に使って転職に成功した例を紹介しましょう。
■30代後半に「早期退職制度」で退職したが……
<Case1> 桑原重雄氏(仮名:39歳/4年生大学英文科卒業)
桑原氏は大学卒業後、外資系大手コンピュータ会社に就職。SEとして社内システムの設計、開発、運用管理の仕事を経て、大手都市銀行、大手コンビニエンスストアおよび自動車業界団体などの新しいシステム作りにプロジェクトマネージャ(PM)としてかかわり、上流から開発、運用管理までの経験があります。
30代後半となり、いまの会社でこのまま仕事を継続するか、いままでの経験とスキルを生かして新しい仕事にチャレンジするか迷ったようです。ちょうどそのとき、会社が早期退職制度を発表し、退職金の積み増しが行われることを機会に退職を決意しました。今年の1〜2月ごろのことです。
桑原氏は自らのスキルとキャリアに自信を持っていたので、5月末の退職日まで独力で企業の募集要項を確認し50社にレジュメを提出しました。その中には著名なシステムインテグレータ(SI企業)やコンサルティング会社も含まれていました。
しかし、5月に入っても内定が得られたものは小さなソフトハウスのPMのポジションだけでした。その状態が続いたため、さすがに転職活動に焦りを感じたようです。そして、初めてインターネット上に自らのレジュメを公開するのと同時に、人材紹介会社へ応募しました。その結果3社の人材紹介会社のインタビューを受け、その中の1社が弊社でした。
私は6月に桑原氏と面談しました。自分はすぐに転職できると思っていたのになかなか希望の転職先が決まらないことへの不安。このままでは年収が半分にダウンし、小さなソフトハウスで働かなければならない悔しさなどが伝わってきました。レジュメを提出した50社のリストを見て驚きました。その中には私の経験から見ても当然合格するであろうと思われる大手企業が多く含まれていたからです。
■レジュメの中身を改善し、年収15%アップで転職
しかし、それらの企業にレジュメを提出しても面接に進むことすらできなかったのです。そこで私は桑原氏のスキルや経験を聞きながら、レジュメの改善を始めました。次に、彼の長所を明確にするため、自己PRおよび得意分野の項目を設け、転職で必ず問われる「協調性」「学ぶ姿勢」や「企業カルチャーの変化に順応できる柔軟性」なども記述してもらいました。最後にインタビューで理解した桑原氏の全体像を提案書としてまとめました。
こうした作業によりダラダラと経歴を記述した職務経歴書から、何ができるのか、何をやりたいのか、本人の得意分野やPR点を明確にしたレジュメへと生まれ変わったのです。
次にふさわしい企業の選択ですが、すでに50社に履歴書を提出し、49社からNGをもらっているわけですから、50社以外のよい企業を探さなければなりません。これはとても困難な作業になりました。
そこで、わが社のクライアントの中から桑原氏のキャリアにふさわしい企業を4社選び出し、本人の了解のもとに7月初めより提案を始めました。それは大手ERPソフト会社、大手SI企業、コンサルティング会社2社です。すぐに3社の書類審査を通り、面接依頼が入りました。
第2次面接の後、7月下旬に2社(大手ERPソフト会社のPMポジション、および大手SI企業の社内システム部長のポジション)の内定を得ました。この間、ほかの人材紹介会社で某製造メーカーの社内システムマネージャのポジションに3次面接まで進んだようです(最終結果は残念ながらNGだったようですが)。
7月下旬に内定をもらった企業の条件を慎重に検討し、大手ERPソフト会社のPMポジションに決めて、8月1日付けで勤務することになりました。年収は前職の1000万円から約15%アップの1145万円になりました。
■若手人材コンサルタントの対応にガッカリ
<Case2> 寺本進氏 (仮名:29歳/コンピュータ専門学校卒業)
寺本氏は大阪で普通高校を卒業し、コンピュータ専門学校で学んだ後、大手SI会社の子会社でプログラミングおよびシステム運用管理の仕事を担当。勤続10年目に入り、将来の計画を立てるに当たり、人材紹介会社のコンサルティングサービスを受けたいと考えていました。
大阪での仕事量が減少していることから、大阪または東京での勤務を前提に東京へ出張するたびに、大手人材紹介会社2社にコンサルティングを依頼しました。そのときに寺本氏は大きな失望感を抱いたといいます。それは大手人材紹介会社を訪問したところ、インタビューは若い営業マンが行い、多くの求人案件を机に並べながら「どうぞ好きな仕事を選んでください」と語り、寺本氏が選んだ企業にレジュメを送るという簡単な対応だったからです。
このとき、外資系コンピューターメーカー1社と大手SI企業2社を選び、レジュメの送信を依頼しました。しかし結果はいずれもNG……。
こうしたことから人材紹介会社に不信感を持つようになったのです。しかし、現在の会社でこのまま仕事を継続すると希望に沿わない仕事の担当になる可能性もあり、いままでのスキルと経験を生かした転職にチャレンジしようと決めました。そこで6月から@ITジョブエージェントに登録し、コンサルティングを希望したのです。
■親身に相談に乗ってくれるコンサルタントを選ぶ
私は寺本氏のスキルや希望を拝見し、保有資格のレベルが高く、直感的に人柄さえ良ければ必ず転職できる人材と判断しました。7月に会ったとき、本人は今後の進路(システム開発系か、システムの基盤系技術者か)に悩んでいました。
私は本人のスキルと経験を整理し、本当は何をしたいのかを確認したうえで、オープン系の基盤技術者の道を推奨しました。本人もオープン系基盤技術者の仕事内容に納得し、今後はそのスキルを積みながらPMを目指すことで合意しました。
次にそのような希望に合致する企業を4社提案しました。大手SI企業2社、外資系コンサルティング会社および大手ソフト会社。いずれも東京と大阪の両方の地域で仕事ができる企業です。寺本氏は自分の進路について初めてコンサルティングを受けたと感じ、弊社に提案を任せてくれました。
あとは桑原氏のときと同様にレジュメの改善、寺本氏の長所の明確化、提案書の作成作業などを経て、7月下旬より提案活動を始めました。8月に2社(外資系コンサルティング会社および大手SI企業)の書類審査を通り、面接が決まりました
8月下旬には上記2社の内定を獲得。諸条件を検討のうえ、外資系コンサルティング会社を選択し10月からの就業となりました。年収は前職の残業代を含む570万円から約10%アップの年俸624万円+インセンティブボーナスとなったのです。
この事例から学べることは、人材紹介会社に相談する場合、会社の規模や名前よりも、親身に相談に乗ってくれるコンサルタントにめぐり会えるかどうかが重要だということです。このため、@ITのようなネット媒体を利用し、スカウトしてくるコンサルタントの対応を慎重に見極めながら求職者にとって良いコンサルタントを選択していくことが大変重要です。
■人材紹介会社を使う3つのメリット
このように自らのスキルや経歴に自信があっても、独力で転職を決めるのは難しいということです。下記に人材紹介会社を使うメリットを説明します。
●求人企業の希望、そして求められる人材条件に合う履歴書および職務経歴書の書き方があること。
●求職者のスキルおよび経歴や要望を確認したうえで、それにふさわしい求人企業を選ぶ必要があること。
●コンサルタントが本人とのインタビューを通じて求職者の人格、要望、意欲などを確認し提案書を作成するので、求人企業にとっては一種の面接と書類審査が終了しているような意味があること。
これから転職してキャリアアップを目指すならば、上記の点を踏まえ、できるだけ早く人材紹介会社に相談することをお勧めます。私たち人材コンサルタントは皆様のスキルや希望などを拝見し、スカウトメールを送信しています。皆さんが良いコンサルタントとめぐり会い、転職活動に成功されることを祈っています。
筆者プロフィール |
小野昌成(おの・まさなり) ●青山学院大学卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。金融機関やネットワークの営業部長、アウトソースビジネスの立ち上げ、その後SAPジャパン社に移りディレクター、TOPCALLジャパン社長を経て、ヒューマンリンク社IT部門の責任者として人材紹介事業に従事。企業からは質の良い人材を提供してくれる、技術者からはレベルの高い企業を紹介してくれると高い評価を得ている。企業と求職者双方の満足が得られる転職が重要と考える。 |
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