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人材紹介会社のコンサルタントが語る
第17回 転職者が見逃しやすい「2つのギャップ」

キャリアデザインセンター

野村健次
2004/1/23

求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。

自己分析が甘くなりやすい

 1年のうち2月に転職活動を行う人が一番多いといわれている。冬のボーナスをもらった後、年明けに転職活動を始めることが多いからである。1月に企業研究を始めると、実際の転職活動は2月ごろになる。それに2月に転職活動を行って順調に転職先を見つけられれば、4月に入社できるのでタイミングもいい。

 しかし、エンジニアの皆さんの転職活動をサポートする人材コンサルタントの目から見ると、「2月に転職中の方に疑問を感じる」ことが多い。それは大きく分けて2つのギャップを感じるからだ。

<ギャップ1>
・転職活動をしている人が多いので、応募者に安心感が芽生えて自己分析が甘くなる

・その一方で、企業側が応募者を見る目は厳しくなっている!?

 上記のとおり、2月に転職のアクションを起こす人が多いので、「ついつい同族意識が生まれる」「みんなも動いているから大丈夫」などという安心感が生まれ、自己分析が甘くなりやすい。なぜ自分は転職をしようとしているのか、なぜその会社に入社したいのか、といった自己分析を怠ってしまうのだ。

採用目標を達成した企業が多い

 それに対して、企業は3月に期末決算を迎えるところが多い。そして新卒の採用活動が本格化する時期でもある。たいていの企業は毎年目標とする採用人数を決めている。そのため、採用企業側の心理は、以下の2パターンに分かれることが多い。

(1)年間の採用目標を下回っており、採用活動に焦っている
(2)年間の採用目標を達成しており、引き続いてシビアに選考している

 (1)の企業であれば、3月までに採用目標を達成しなければならず、採用スペックのハードルが多少低めになっている可能性もある。しかし、現在の景気動向を考えれば、(2)の企業が圧倒的に目立つ。「年間の採用目標を達成しており、引き続いてシビアに選考している」企業が多いのである。

 それゆえ、企業はしっかりと厳しい目で応募者の選考を行う。予定採用数をすでにクリアしているので、焦って採用する必要はないと考えているわけだ。そのような状況の中、綿密な自己分析や会社分析を怠ったまま、甘い見通しで転職活動に臨んだらどのような結果を招くかは、容易に推察できるであろう。

 昨今では企業に有利な“買い手市場”になり、採用ポイントは変化しつつある。「技術スキル」だけでなく「ヒューマンスキル」も厳しく問われるのだ。例えば、「意欲=志望動機」や「キャリアプラン=転職理由」などである。客観的に自己分析ができていなければ、技術スキルの有無についても効果的にプレゼンできなくなる。うわべだけの理論や理屈を繕っても、すぐに面接官に見破られてしまうものだ。

本当に転職すべきなのか?

 次は、なんとか上記のギャップ1を乗り越え、うまく入社できた後に生じる、もう1つのギャップについて説明しよう。

<ギャップ2>
・前職の会社の悪い点(デメリット)しか見ていなかった
・入社した会社の良い点(メリット)しか見えていなかった

 そもそも、応募者はどのような理由で転職を考えるのだろうか。それは会社や仕事への不満が原因となるケースが多い。そうした理由を持つのはもっともなことだ。しかし、転職した後のキャリアをうまく築いていくには、自分自身を客観的に評価、分析することが必要になる。転職を思い立ったキッカケが不満であったならば、一度冷静に自分自身のスキルや志望動機などを分析し、「ホントに転職したほうがいいのか」を再考しておくといいだろう。

 いつの間にか、いまの会社や仕事のデメリットだけに目を奪われてしまうケースは多々ある。転職すれば「天国が待っている……」という気持ちになり、失敗する人もいる。転職を前提に自己分析している状態といえるだろう。これがギャップ2の状態である。

現職の長所と転職先の短所に目を向ける

 そのギャップに気付かずに転職した場合、「転職時の期待度の高さ」と「転職後の現実」との間で大きなギャップが生まれ、意気消沈する人もいる。こうした経験をした人は、転職についてマイナスのイメージを持ってしまうかもしれない。

 それを避けるには、もう一度いまの会社や仕事の良い点(メリット)を探ってみてはどうだろうか。その一方で、転職したい会社があれば、そのデメリット(悪い点)を丁寧に調べてほしい。特に初めて転職する人は、「転職先を選ぶことに集中」するあまり、自分の会社の良さに気付いていないことが多いからである。

 転職にはこのようなギャップがあるので、「自己分析をしっかり行っている」と思う人も、転職シーズンのこの時期こそ、慢心せずにじっくりと「転職すべきどうか」を再検討していただきたい。


筆者プロフィール
野村健次(のむら・けんじ) ●大学卒業後、大手住宅メーカーにて個人向け営業、大手化学製品メーカーで法人営業を経験。その後、(株)キャリアデザインセンターへ転職。人材紹介事業部にて営業とキャリアカウンセリングを担当。ソフトウエア・IT系ベンダなどを中心としたIT業界を得意とする。企業と求職者双方の満足が得られる転職が重要と考え、日々@ITジョブエージェントを通じて転職支援を行っている。




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